第3話〜部屋〜


 彼女の家は、とても簡素な部屋だった。一人暮らしの部屋を思い浮かべた時に出てくる通りの部屋だった。


 ある1点を除けば…。


 部屋に入る前に

「ちょっと散らかってるから5分くらい待ってて!」

 と言われて少し待たされた。


 それから家に入り

 「すぐ作るからそこでゆっくりしてて〜!」

 そう言われて小さいテーブルで今日勉強したところの復習を始めた。


 しばらくして、彼女が料理を持ってきた。

 唐揚げと麻婆豆腐だった。

 たしかにとても美味しそうだ。腕に自信があるのは嘘ではないらしい。


「どう?美味しそうでしょ!笑」

 ドヤ顔でこちらを見てくる彼女を他所に僕はいただきますをして食べ始めた。


「!?美味しいです…!」

 

 あまりの美味しさに驚いた。唐揚げは衣がサクサクでほんのりスパイスが効いていた。麻婆豆腐もピリ辛で思わずご飯をおかわりしてしまいそうになってしまった。


 店出したら売れるんじゃないかと疑うレベルで美味しかった。


「でしょ〜!美味しいって言ってくれてよかった!!笑」


「なんでこんなに美味しいんですか?」

「それはね〜、ある隠し味を入れたんだ〜!」

「そうなんですね。隠し味でこんなにも変わるんだ…。」

 そう感動しながら食べているとあっという間に完食してしまった。


「りょうまくん食べっぷり良いね〜!作ったこっちの方が嬉しくなっちゃうよ!笑」

「いえいえ、わざわざありがとうございました。ご馳走様です。」

「あ!よかったらデザートもあるんだけど食べていかない?プリン作りすぎちゃって!笑」

 ほんとだったらここで断って帰っているのだが、さっきの料理が美味しかったのもあり、プリンを食べ損なったのもあったので頂くことにした。


「ケーキは冷蔵庫に冷やしてあるから帰る時に渡すね!!」

 そう言いながら彼女はプリンを取り出した。

 プリンもまたとても美味しそうだった。


「いただきます。」

 上のカラメルと卵の境目をすくって食べた。


「!?!?!?」

「美味しい…」

 思わず声がでてしまった。ほっぺたが落ちるかと思った。


「でしょ!私の自信作なの!」

 たしかに自信作なだけはある。もしかしてパティシエか何か料理の仕事をしているのか?と気になったが、何か余計なことを聞きそうだったのでやめた。


 プリンを食べていると、ふとクローゼットが気になった。何かひものようなものが飛び出していたからだ。

 

 他は全て綺麗なのにクローゼットだけ雑にしまってあるような感じがして少し違和感を持ったが、そんなことより今は目の前のプリンに集中しようとプリンの方に視線を戻した。



「ご馳走様でした。美味しかったです。」

 それから時間もたたないうちに食べ終えてしまった。


「またまた完食してくれてお姉さん嬉しいよー!」

「いえ、今日は色々ご馳走になりありがとうございました。」

 そう言いながら立とうとした瞬間、全身の力が抜け、頭が真っ白になった……。


「………○○○○。」

 最後に彼女が何か言っていたが、何を言っているかは聞き取れなかった。


 

 目が覚めるとそこは自分のベッドの上だった。

 昨日のことは夢かと思ったが、牛乳を飲もうと開けた冷蔵庫には昨日お姉さんから貰ったケーキが入っていた。


 母に聞こうとしたがあいにく会社に行ってしまっていた。


 お姉さんのところに行って何があったが聞こうとしたが、今日から冬期講習が始まってしまい、とても寄り道できなくなってしまう。


 受験が終わってから行こう。そう思いながら僕は塾に向かった。


 受験が終わるのはかなり先になってしまったので、彼女のことを思う余裕など無くなってしまっていた。


 それから無事受験が終わり、無事に晴れて高校生へとなろうとしていた…………。

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