第9話 譲治 真の素揚げ

お父様の葬儀が終わり、喪も明けたので、下町に行くことにした。

護衛はいつもの陽介、行き先は失礼な女の所だ。夏には匂いの少ない油になると言っていたから確認しよう。


「こんにちは」

「あ、お嬢さん久しぶり」


こいつ、わかってて言ってるか?

訂正するのもめんどくさいのでそのまま聞いてみることにした。


「真の蓮根の素揚げは?」

「お、楽しみにしてくれたんだね。どうぞ、一袋60銭」

「また値上げ?」

「まーまーそのくらいの価値はあるよ!」


美味しい。前回の気になる匂いもなく、純粋に蓮根の味と、サクサク感だけでできている。


「そーそ、前の油、余った分と、廃油を石鹸にしたんだけど、売れるかな?」

「匂いは?」

「これ。」

「マシだね。」

「だよねー、獣脂石鹸と比べたら天国だよ。」


前食べた素揚げの匂いと比べたのだが、、まぁいいや。試しに買ってみよう。


「いくら?」

「500銭」

「陽介、よろしく。」

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