第3話 譲治 父の戦死
第三騎士隊長が戻ってきた。領主の護衛のはずだが緊急ということだろうか。お祖父様が首脳陣を集めて話を聞いている。
「ナカマロ 点灯」
従者が灯りをつけた。だいぶ薄暗くなっている。嫌な予感に眠れないでいると、深夜お祖父様の声が聞こえている。
「譲治は寝ているか?」
「部屋に籠もっていて音はしません。本を読んでいることが多いので起きているかもしれません。」
「そうか、儂が見てこよう。」
とんとん、お祖父様が階段を上がってくる。私は部屋のドアを開けた。
「起きております、お祖父様。異様な雰囲気が気になって眠れなかったのです。」
「そうか、譲治、丁度良かった。騎士隊長の報告があったのは気づいているな?」
お祖父様が普段見ないような厳しい顔で云う。
「はい。」
「譲厳が死んだ。水源の村を検分中に襲われ、喉を切られ治癒が間に合わなかったらしい。」
「···」
「暫くは儂が領主を代行するが、次の領主を譲厳の兄が狙っている。飛ぶ力がなく候補から外れているが、息子に飛空版を試させたいようだ。17歳で飛べるのであれば反対は出にくいだろう。」
お祖父様は私の無表情をどう思ったのか早口で話を進める。
「この笏を使いなさい、天馬を試してみよう。」
「笏は持っております。」
「では天馬を試してみよ。
タムラマロ 天馬
と笏を持って唱えるのだ。天馬が使えれば譲真の息子が飛空版を使えても問題ない。あいつに天馬を使える力はない。」
「どこで試しますか?」
「人に見せたくない。お前の部屋の中で試そう。」
「はい。」
私は部屋に入り、隠していた笏を取り出した。
「タムラマロ 天馬」
笏は手綱に変わり、大きな馬が現れた。
「見事だ。譲厳は練習させていたのか?その年で笏も与えているとは···」
「いえ、隠しておりました。この笏は私が作ったものです。」
昨日作って隠したが、お祖父様はいつも私の味方だ。お父様は怖かったがお祖父様なら大丈夫。
「素晴らしいぞ!」
大きな声でお祖父様が叫び、慌てて周りを見回した。
「譲治、儂は領主の決定を引き伸ばす。そして少し早いがお前が10歳になるときに元服して笏を授与し、そこで天馬を使うことで次期領主の地位を確定させよう。」
「はい。」
私は少し疲れたのかその後はよく眠れた。お祖父様は、父も、父の兄もあまり好きではないのかも···
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