第三の神威 聖女様VS火炎放射器女

聖女プリン・アラモードと宗麟は一階に向かう。先ほどのハンマー男爵を消滅させた事が化け物達に堪えたのか、全く姿を見せなくなった。先ほど、渡したお菓子を食べ終えたので聖女プリン・アラモードはそのゴミを宗麟に渡す。それを嫌がるわけでもなく受け取ると、小さく畳んでポケットに宗麟は入れた。保健室に行けば何か他の怪異や化け物がいるのかと宝物とやらがある保健室にたどり着いた。

 

「ここだな」

「あー、そやな。ここが保健室やわ。あれ? 鍵かかっとる。ははーん。ここまでたどり着いたはええけど、次は鍵探しクエストさせようっちゅー魂胆やな! 脱出ゲーム的な要素も入れてきたわけか、どうする? 鍵探しに付き合うか?」

「おいおい、ソーリン。こんな扉、ぶっ壊しゃいいだろうがぁ! クソ神共! さっさと私に力注げやぁコラぁ! クソ化け物のクソお遊びに付き合ってやってんだ。そんな鍵探しなんて面倒な事まで付き合う必要はねーだろ? セイクリッド・ナックルぅ! オラァ!」

 

 粉々に扉が壊れるのだろうかと思った宗麟だったが、これは驚いた。聖女プリン・アラモードの魔法というか物理というか、とりあえず攻撃を保健室の扉は防いで見せた。今までの怪異よりも宗麟の学校の保健室の扉のタフネスの高さに驚いた……というわけではなく、おそらく

 

「何らかの結界とか何やろな? これ、鍵探さなあかんやつかな」

「おい! ソーリン、笑わせんなよ? 私がこんなクソ扉壊せないわけねーだろうがぁ! クソが、もっとよこせ! クソ神共。こいこいこいこい! よしきた! 私の手を煩わせやがってクソが! セイクリッド神殺拳」

 

 それはそれはグラマラスな聖女プリン・アラモードが中腰で構え、法衣がはだける。胸の谷間が、太ももが露わになり、男たちの視線を釘付けにした事だろう。だが、今それを見ているのはオカルト研究部の宗麟しかおらず。宗麟は聖女プリン・アラモードの艶かしい身体ではなく、彼女から繰り出される異世界の力の方にしか興味がなかった。

 

「くらえ! 抹殺のライトロード・ロザリオぉ!」

 

 一瞬、保健室の扉は聖女プリン・アラモードの、神々の力が乗った超暴力を受けるように障壁的な、結界的な何かが見えた気がしたが、ズゴンと聖女プリン・アラモードはそんなのお構いなしに力で撃ち抜いた。明らかに物理法則に逆らった耐久力を誇った保健室の扉はくの字型にへし折れる。そしてその扉を蹴り飛ばして中に入る聖女プリン・アラモード。

 

「おい! 宝物ってのはこれか? あったぜ」

「何があったんや? なんやなんかの生き物の手か?」

 

 毛深そうな大きな腕。血が滴り、生暖かい。それを宗麟は掴むと、あたりを見渡して何か入れる物を探すが……

 

「何も入れもんないな。こんな物持って歩いたら服汚れるな……あっ、菓子の袋があったな。これでええか」

 

 と先ほどまで聖女プリン・アラモードがコーンチョコを食べていたお菓子の袋に何かの手、今回のデスゲームの宝物を雑に入れて教室に戻る二人。その途中で、防火服を着た何者から廊下の向こうからやってくる。手には火炎放射器。これは面白い事になった。

 

「聖女サマ、あれって化け物か?」

「あ? 見てわかんねーか? さっきのクソと対して変わんねークソだが、随分殺したみてーだな。なんだあの格好。甲冑か?」

 

 防火服を知らない聖女プリン・アラモード。手に持つ火炎放射器が何であるかを宗麟は説明する。

 

「あれは高圧ガスで可燃性の液体を放射する。クソやべぇ武器だな。気をつけろよ聖女サマ。あれは聖女サマの魔法に匹敵するかもしんねー」

 

 実際、制圧武器としては最強を誇るがあまりにも非人道的すぎて使用は基本的に許されていないそんな物を持っているあの化け物は生前どんな奴だったんだと宗麟は興味を持つ。が、今のは宗麟の失言だった。

 

「私に匹敵するぅ? おいおい、ソーリン。くだらねぇ事言うなよ。私を燃やす事ができるわけねーだろう。試してやろうか?」

「おい、あかんて! ほんまにヤバいもんやから!」

 

 火炎放射器の炎をその身に受けようかと聖女プリン・アラモードは言う。そんな事したらただでは済まない。というか普通の人間なら死んでしまう。止めようとした宗麟を無視して、ゆっくりと聖女プリン・アラモードは火炎放射器を持つ化け物に向かって歩く。

 

「炎か、私も炎は好きだ。クソ共が燃えて消し炭になる様を見るのはここがすっきりとするからなぁ? お前もそういう口か?」

 

 火炎放射器の銃口の前に聖女プリン・アラモードは立った。もちろん放たれる全てを焼き尽くす人工の炎。それをその身に受けた聖女プリン・アラモードは、「ほぉおお、よく燃える火だな? だが、私の炎に比べれば対した事ねーな? クソが」宗麟は驚いた。聖女プリン・アラモードは火炎放射で焼かれるよりも早く衣類まで綺麗に元通りになる。最上級回復魔法なのか、再生魔法なのかがオートで展開しているんだろう。おそらくはこのデスゲームにおけるハンマー男爵と並ぶ二大脅威。そんな火炎放射を持つ化け物が放つ火炎放射の炎の中を真っ直ぐに歩き、聖女プリン・アラモードは、魔法を放った。

 

「死ねよ! セイクリッド・デスフレア!」

 

 聖女が使うには凶悪すぎる名前の炎は火炎放射器を持った化け物を焼く。苦しむ火炎放射を持つ化け物。炎の中から聖女プリン・アラモードはドヤ顔で化け物の防火服。顔の部分を破いた。そこには男……ではなく醜くい化け物の顔をしているが、生前の名残か、化粧の後や装飾品が見て取れた。一体、この女は何が目的で火炎放射器なんて物を持ち出したのか? 機会があれば聞いてみたいと思ったが、それはもう叶わない。

 

「私相手に火遊びなんて20億年はぇんだよ?」


 目から、鼻から、耳から炎が吹き出す。聖女プリン・アラモードに抗った化け物の末路。聖職者でありながら、慈悲=消滅させる事としか思っていない。何故あの化け物が生まれたかの背景も予想しかできなくなってしまったが、聖女プリン・アラモードに助けを懇願していた火炎放射の化け物は「汚い手で私に触るな」と蹴り飛ばされ、跡形もなく消滅させられた。

 そんな光景にやはり宗麟は顔がニヤけてしまう。

 

「ほんとすげぇな聖女サマ。正直、過小評価だったわ。悪ぃ、悪ぃ。並の銃火器じゃ聖女サマの相手にはならねぇって事が確定したな」

「当然だろソーリン、私があんなクソに負けるわけねーだろーが」

 

 傲慢で、神ではなく自分への絶対的な信仰を持って邪悪を滅ぼす聖女プリン・アラモード。そんな彼女と並んで歩く事ができる宗麟。聖女プリン・アラモードは肩をドンと宗麟にぶつけると、

 

「おい宗麟、忘れてねーよな? これが終わったら飯だぞ飯」

「おう、覚えとるわ! 今回は想像以上にええもん見せてもらってるからな。ほんま何でも食わせたるって」

「んな事言って金はあんのかよ? 金は?」

 

  聖女プリン・アラモードでも宗麟がまだ働いている年齢じゃないという事までは聞いていた。そんな宗麟がどこから金を出すのか? それに宗麟は聖女プリン・アラモードのような悪ガキの表情を見せた。

  

「ほれ、見てみ! 聖女サマとこの変な空間きてから全部スマホに収めとる。録画も消えてへんしな? これネットに流してガッポガッポや! 聖女サマの見てくれもええし、動画のサムネは際どいポーズの聖女サマで決まりや」

 

 言っている事は全然分からないが、何かしらお金を稼ぐ方法を宗麟は持っているらしい。自分のお腹が満たされるのであればその過程は何でも構わない。そして宗麟ができるというのであればできるのだろう。

 

「さて、あと一匹やな? あのクソ人形ぶち壊して、みんな生きかえらして、さっさとこのクソみたいな偽学校からおさらばしよか?」

「あぁ、そんで飯だ! ソーリンの世界のいいところなんて食いもんが美味いくらいしか取り柄がねーからな。あんなクソ人形に簡単にぶち殺される程度の奴しかいねーし。私が本気で殺し合いできるような奴はいなさそうだ」

 

 日本の取り柄、女の子が可愛いくらいはあるなと思ったが、目の前の聖女プリン・アラモードの美少女具合と比べたら巷で千年に一度の美少女とか言われているアイドルですら劣るなと宗麟は少しウケる。

 そして二人は最初の教室に戻ってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る