学園デスゲーム……聖女様ver編

聖女様と学園デスゲームの始まり

 一覧台学園の1年3組、ホームルーム時。

そこに制服を着ていない女子が入室してくる。薄い青い髪の色、そして白を基調とした聖職者風の恰好。あるいはコスプレに身を包んだ美少女。彼女を見て、クラスの生徒達は、


「外人?」

「誰、かわいー」


 と声を上げるが、そんな彼女はクラスの生徒達を一瞥すると、目的の人物を見つけて、


「おいソーリン! 今日の昼めしもってきてねーぞオイ!」


 と、とても綺麗で透明感のある声で、やからみたいな言葉遣いで、一人の生徒を呼びつける。その生徒がまだクラスで浮いているというか、危険人物の鳴宮宗麟を呼ぶ少女。類は友を呼ぶと言うがまさにその典型的な例。名前を呼ばれた宗麟は注目の的になる事なんてどうでもいいと言う風にその美少女を前に不適に嗤う。


「聖女サマ、今日は食堂で一緒に飯食おうかと思ってな。毎回、パンだおにぎりだだと聖女サマに悪いと思っててん。今日はなんでも食わせたるから期待しとけや」


 という宗麟の言葉に聖女サマと呼ばれた少女。そう、異世界の聖女プリン・アラモードはへっと同じく嗤う。そういう事ならと教室から去ってオカルト同好会の部室に戻ろうとした時、異変がおきる。

 

 グラグラと地震? 教室内が揺れる。阿鼻叫喚、クラスメイト達の叫び声が聞こえる中、宗麟は机に掴まりながらもこれが自然の地震による揺れではないと確信していた。

 そして何にも掴まらず仁王立ちしている少女、もちろん聖女プリン・アラモード。嬉しそうに教卓を眺めている。

 宗麟も聖女プリン・アラモードが眺めている教卓を見つめていると、そこに三つの恐ろしい姿をした者達が出現する。

 

 人間サイズの女性を模した海外人形。ギョロっとした瞳、その手は大きな鋏を持っている。そしてもう一人、巨大なハンマーを持った身の丈四メートルはありそうな巨人。最後は不気味な布のような服? 袋を身に纏った何か。

 

 きゃあああああ! と教室から逃げようとするが、扉は開かない。そんな中、人形が喋り始める。

 

「はいみなさん! お静かに! お静かに!」

 

 そんな化け物の言う事を聞く生徒は誰一人おらず、椅子で窓を破壊しようと試みる生徒に向けて、

 

「静かにしない生徒はこうです! えい!」

 

 ザク! っと椅子を持っていた生徒の頭に包丁を投げて……殺害した。それに再び悲鳴。

 

「静かにしないとみんな殺しますよ!」

 

 こんな状況でも生徒達は状況を理解して静かにする。ただし、殺された生徒と特に仲が良かった生徒は、

 

「うぉおおおおお! なんなんだよお前らぁ!」

 

 机を持って殴りかかろうとしたそんな生徒をハンマーを持った巨人が一振り、グシャリと嫌な音と共に潰されて絶命。これ以上騒いでも無駄だ。こいつら化け物はいつでも自分達を殺せる。

 化け物が喋り出す事を聞いた。

 

「宝探しゲームをしましょう! この学校のどこかにこの綺麗な宝石を隠してきます! どこかの教室に置いてきますのでそれを見つけて一時間以内にこの教室に戻ってこればあなた達の勝ちです! ですがそれだけだと面白くないので、ゲームスタート5分後にハンマー男爵があなた達探しに行きます! ハンマー男爵から逃げ切る為には仲間割れすることもあるかもしれませんが! 生き延びたければどんな手を使っても頑張ってくださいねぇ! そこで転がってる死体みたいになりたくなければ! ですけど」

 

 人形の化け物はそう喋り、「じゃあゲームスタートまであと」「ちょい待ち」と声をあげる者。鳴宮宗麟である。

 手を挙げている宗麟を気に入ったのか人形は「質問をどうぞ」というので、普通に宗麟は聞いてみた。

 

「お前らは何者で、なんでこんな事するんや?」

「私たちはゲームが好きな通りすがりのろくでなしよ! そしてなんでこんな事をするか? 楽しいからに決まってるじゃない! あなた達人間が汚く、騙しあって生き延びようとする姿を見たいからよ!」

「セイクリッド・ギガ・フレアぁ!」

「は?」

 

 なんの脈絡もなく、聖女プリン・アラモードは布か袋に包まれている怪物に魔法を放った。青白い炎に包まれる。そして耳をつくような強烈な悲鳴を挙げてその怪物が焼き尽くされて消えていく。

 

「オイ! じゃあ、私も混ぜてくれよぉ! 化け物どもが汚い命乞いをしてそれで私にぶち殺されてきていくのを見るのが、三度の飯より好きなんだヨォ! 化け物共がヨォおお!」

 

 化け物達は今まで幾度となくこの狂った遊びを行ってきた。自らの結界内に人間達を集めて大量に殺害する。結界が解けた後、それは災害や、病気や、事故などで死んだ事になる。世界中で起きる大量の死人が出る事件のいくつかはこの連中の仕業でもあった。生存する者も中にはいたが、いずれも恐怖に顔を歪め、満足させてくれたのだが……

 今回は何かが違う。

 

 二人だけ、嬉しそうに化け物達を眺めている者がいる。一人は質問をしてきた男子生徒、そしてもう一人は他の生徒とは違う服を着ている……

 というか、仲間の化け物が消された。

 

 なんだこいつ? こいつはなんだ? そんな疑問が頭の中に浮かぶが、人形の化け物は、二人の生徒を殺した事。それを思い出して、

 

「うふふ、面白い。あなた達はお友達を二人も失ったのよ? これから何人お友達が死ぬのかしら? それはもしあなた達が生き残っても重く、痛く残るは! それが私達の最高の喜び!」

「オメガ・リザレクション!」

「は?」

 

 教室の生徒達、果ては化け物達は今目の前で起きた事に理解が追いつかない。刺された生徒の傷が癒、死んだハズの生徒がむくりと起き上がる。そしてきょろきょろとあたりを見渡している。もう一人のハンマーで叩き潰された生徒も綺麗に修復されて復活する。

 奇跡というには頭の整理が追いつかない状況で一人、聖女プリン・アラモードに話しかける人物。もちろんオカルト同好会の宗麟である。

 

「おいおいおいおい! マジかよー! 聖女サマ、蘇生魔法もやっぱ出禁だなー! うおー、マジもんすげぇなオイ!」

「ははははは! 私からすりゃ、人間一匹蘇らせるなんて朝飯前だっつーの! それよりそうりん、見てみろよ! このクソ化け物共の顔! 笑えるだろ? 何が、最高の喜び! だって? お前ら、ここにいる奴ら全員殺してみよろ! オイ! 私が瞬時に全員生き返らせてやっからよぉ!」

 

 神の奇跡をその身に宿した聖女のアルティメットスキル。デスゲームというハラハラドキドキを通り越し、生きるか死ぬかの状況が一変して無限コンテニュー可能なクソゲーに変わった。

 化け物達は今までこんな事はなかった。この胸が異常に大きい少女は術者、霊能力者の類。しかし、人間の命を復活させるなど聞いた事がない。

 

「貴女は……一体何? もしかして、人間達が信仰する神とかいう存在なのかしらぁ?」

 

 ギョロっとした目を動かし、不気味な動きをしているが、人間を恐怖させるハズの化け物が明らかに動揺、それは言うなれば彼女らが最も好物としている恐怖を自らがしているのだ。

 そして、トドメを出さんとしている聖女プリン・アラモードの返答。

 

「あぁ? 神ぃ? 私を神とかいうクソと一緒にしてんじゃねーよ! ヲイ! カス化け物共よぉ? 一回しか言わないから教えてやんよ! 魔王とかいうクソを勇者よりも先に抹殺する事が楽しみの全ての神々のクソ共に愛された私はジェノスザイン聖女王プリン・アラモードだ」

「うぇーい! 聖女サマかっけぇぇえ!」

 

 と宗麟がハイタッチ。何故かウマが合う宗麟とゲラゲラ現在の状態を笑ってみている。そんな宗麟が人形の化け物に問う。

 

「おい、お前らの楽しい楽しいゲーム、はよ始めようや! お前らはワシら人間殺すのが楽しみなんやろ? んで、ウチらの聖女サマは化け物殺すのが大好きなんや! ええやん、お互いの存在を賭けてゲームしようや!」

 

 ゲームマスターはいつだって化け物である自分達側だったハズなのに、大きな憎悪、怒りが人形の化け物、ハンマーを持った化け物に湧き起こる。それを聖女プリン・アラモードという威を借り調子に乗っている少年。

 

「いいわ。ゲームを始めましょう。ゲームルールを追加するわ。一時間以内にあなた達は全員生存した上で宝物を見つけられなければ全員ここからの脱出は不可能よ」

「そんなのずるいわよ!」

 

 クラスでも気の強い女子がそう言うが、「おーけ、おーけ! そらこっちが無敵モードやからお前らにもハンデやらなあかんわな? でもまぁ、聖女サマどうなん?」「あぁ? ソウリン。そんなもん決まってんだろ? 知るかクソ共」「という事や、聖女サマはオーケーやってさ」

 

 どこに聖女プリン・アラモードの了承があったんだろうとみんなは思うが、それを宗麟に指摘すると化け物だけでなく、クラスでもめちゃくちゃややこしい宗麟の逆鱗に触れかねないのでクラスメイトは何も言わない。

 

「じゃあ、いいわね? 宝探しゲーム! 難易度ナイトメアモード。クリア条件、一時間以内に宝物を見つけて、クラスメイト全員生存しなければならない!」

 

 そう言うと、人形の化け物は包丁を生徒に投げようとしたが、聖女プリン・アラモードが祈りのポーズをしている。それは何か自分達を殺すような事をしてくるのかと警戒していた化け物達に対して、「ソーリン、耳塞げ」と一言。宗麟はそれに従い耳を塞ぐ。

 

「セイクリッド・ジェノサイド・ウェーブ!」

 

 一体何をしでかしたのか? それは簡単。バタバタと倒れていく生徒達。その瞳には光がない。クラスメイト全員を聖女プリン・アラモードは宗麟以外、即死魔法にて皆殺しにした。

 

「ぜーいん、神の身元に送ってやった。どうせ、お前らこのクソ共を人質にしたり、殺したり、無駄な事してくれんだろぉ? だから先に私が殺しておいてやった。全部終わった後にこのクソ共生き返らせればいい事だしな。くくくっ! あーっはっはっは! で、こいつらになんかしようとすれば私の神の力をたっぷり注いであるから即消滅すんぜ、じゃあ楽しい楽しい化け物狩り付き宝探し始めようぜ! な? ソーリン!」

「えげつねぇ……くくく、いいねぇ! んじゃお供すんぜ聖女サマ!」

 

 ゲームマスターがいつの間にか人形の怪異から聖女プリン・アラモードに変わり、ハンマーを持った怪物、そして人形の怪物を無視して聖女プリン・アラモードと鳴宮宗麟は教室を出た。

 

「おい、ソーリン。私の食事どうすんだよ? おい!」

「まぁまぁ、そんな怒んなや! 美少女がより可愛くなるやんけ! ほれ、コーンチョコや! 授業中に食おうと思ってた俺のお菓子、全部やるからこれ食ってしばらく我慢せーや。終わったら学食祭りや」

 

 そう言ってコンビニで売ってる駄菓子を袋を開けて聖女プリン・アラモードに渡す。聖女プリン・アラモードはクンクンと匂いを嗅いで一粒チョコレートを摘むと口に放り込む。

 口元を袖で隠してもぐもぐと食べているのは粗暴な性格の中でも品が見てとれるなと宗麟は思う。そして食べ終わると、ケンカ大好きな少年みたいな顔で、

 

「なかなかうめぇじゃねぇーか! これであとポーションでもあれば最高なんだけどな!」

「そやそや! ポーションって一体どんな味するんや? マジで気になるわ。傷とかかけたら回復するんやろ?」

 

 と今から命懸けの宝探しが始まろうとしているのだが、話題はポーションに、それを聞いて聖女プリン・アラモードは、コーンチョコを食べるのをやめて、

 

「ポーションを怪我にかけるとか、んな田舎者のするなんてクソだぜ! 袋に入れて吸うのが一番キマるんだぜソーリン!」

 

 コーンチョコの袋を持ってそのポーションとやらを吸う動作を見せると宗麟は大爆笑。

 

「おいマジかよ! そんな昔のヤンキーがアンパン吸うみたいにポーション吸うんかい! ギャハハハハハハ!」

「何がおもしれーんだよ! ソーリン、お前こそおもしれー奴だなぁ! セイクリッド・ニュートロンノヴァ!」

 

 聖女プリン・アラモードと宗麟を襲おうとした魑魅魍魎の群れを世間話をしながら一瞬で強制的に成仏させた。それが魔法という未知の世界の力だなんて宗麟以外の誰も知らない状態で、

 

 スーパーベリーイージーモードのデスゲームが開始された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る