第26話 最寄り駅の混沌。
「カオスですか? カオスですよね? せっかくの土曜日の爽やかな朝に、源君はわざわざこの世の
高校の最寄り駅。
絶叫する
ちなみに愛してるとは言ってない。俺が愛してると言ったことがあるのはこの世界で、なぜか三浦
蕗は目の淵に涙を溜めていた。そんな大袈裟な。俺は蕗の頭をぽんぽんと。蕗はなぜか涙目で「しゃー!」と
「何を言ってんだ。遅かれ早かれ『こう』なるんだ。ゲロするなら早い方がいいだろ?」
「いや、ゲロひとりでしてください! こんなの私、完全にもらいゲロじゃないですか! なんなんです『土曜の朝はみんなで修羅場』って。旅番組ですか? 不仲同士集めてロケする感じですか? 見てる分にはおもしろいかもですけど、出演したくないです!」
「何言ってんだ、今日は蕗が主役だろ。それに――」
「それにってなんです? まだあるんですか?」
「いや、知らないお前が加わることで抑止力になるだろ」
「計算高ッ! でも流石です! 付いて行きます、源のアニキ!」
「だろだろ? 今日のお前はいわゆる
「わっかりました! でも、緩衝材のプチプチって、プチプチいわされるだけいわされて捨てられませんか?」
「ちゃんとリサイクルするから大丈夫だ。お前は再生可能な資源だ」
「そうですか、あーざーす。でも、はしゃいでるのうちらだけですけど、どうします? そろそろお相手しないと、誰か通報するレベルの空気ですけど。極地豪雨来そうな勢いの空気ですけど」
蕗にそう言われ、俺は仕方なく現実世界に戻って来た。
今日の目的は海野蕗のイメチェン。
元々そのアドバイザーとして
先程、蕗にも語りましたが、こんな狭い世界でバッタリなんてよくある話。
そんなめんどくさい系のイベントフラグは立つ前にへし折る主義の私ですので、ここは敢えて自ら『ダブルブッキング』を
題して『今カノ!元カノ! イメチェン対決~~勝つのはどっち⁉』だ。主役はあくまで蕗だけど。
そんな訳で土曜の爽やかな駅前に
***
「きのう。お部屋で信哉さん、かわいいって言ってくれました」
「あの、平……はっ⁉」
なに、一瞬で平さん『気』が高まった。これはアレだね、空気読めや! というヤツですね。わかりました。
「その、おはよ。
「おはようございます、土曜日にお会いできてわたくし、心からうれしく存じます」
声がいつもより1トーン高い。高いけど、目が全然笑ってない。目が全然うれしそうじゃない! しかも、小さく舌打ち。
「信哉君。これどういうことかなぁ。私てっきりふたりで会うものだと。あっ、違うわ。偶然そちらの方々と出会っただけなのか。ごめんなさい、伊勢
光を失った平さんの瞳が語る「へぇ、親しいんだ。そうなんだぁ、私の何億分の1親しいのかなぁ」と。瞳、長文語り過ぎだろ。
「こちらこそ、失礼致しました。わたくし、信哉さんと同じクラスで先日より『正式に』お付き合いさせて頂いております
「平さん。私は信哉君のそうですね、心の伴侶と申しましょうか。愛し合うふたりなのですが、家族の反対にあいまして……いうなら現在を生きる『ロミオとジュリエット』とでも申しましょうか。悲恋のうちに引き裂かれたのです。生まれ変わっても絶対に一緒になろうねと誓いあった仲。例えこの身が尽きようとも、ふたりの思いを引き離すことは叶いません。ちょっと失礼、信哉君。額の汗。あら、脂汗?」
そっと手を伸ばし遥は額の汗を拭いてくれたが、思いのほか雑。気のせいか向かい合って汗を拭いてくれてるのだけど、足を踏まれてる。両足で。芸術家は愛情表現すら斬新だ。
「信哉君。そちらの方はどなた? 随分と仲良さげに話してたけど」
えっ、私⁉ と首がねじ切れそうな勢いで蕗は俺を見る。
俺はアレだ、もうこの段階では生唾飲むくらいしか出来なくなっていた。己のコミュ能力を過信してました。
「えっと、私はただのモブでして……源君にお情けでお友達して貰ってる、つまらないヤツです、はい」
無難でしょ? これでいいでしょ? モブワードが決め手でしょ、と蕗の瞳が語る。どいつもこいつも目で語る。
でかした。さすが蕗だ。いい感じの卑屈感で遥のマークを外した。バトルマスターも伊達じゃない!
「そうでした? きのうわたくし、小耳に挟んだのですが。海野蕗さん自ら『第三の彼女、私最強!』とどこでしたか。そうそう、テニスコートの裏で愛を叫んでいたとか、いないとか。そういえば、そこには信哉さんの元カノ北条さんもいて、海野さんの気合いに押され、半泣きだったとか。実際のところ、どうなのかしら海野さん?」
平さん、その情報収集能力どこで身に付けた。あっ、ヤバい。名指しされた蕗がフリーズした。
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