第15話 ぼくらのふぁんたじーⅣ
【王都近郊の教会の調査】のクエストを終えて連動して【消えた悪魔を追え!】が始まった。
このクエストを終えれば冒険者組合からギルドの立ち上げを認められるようになる。
まずは悪魔が落としていって羊皮紙について調べるため、宰相の紹介で学院にる歴史研究家の元へ訪ねることになった。
「あ!」
「トイレか?」
「まさか漏らしたんじゃないわよね?」
「漏らすか!」
「ユキ君、何か用事?」
「来たみたい!」
「「何が?」」
「第一成長期が」
「は?!」
第一成長期は諸刃の剣だ。これから幾度も訪れる成長期は間違いなく身体能力など上がってメリットばかりだが、その一番最初の第一成長期はデメリットの方が大きい。
もしユキトが今使ってる装備に筋力値が足りてなかった場合、今から装備の買いなおしが始まる事になる。戦闘に置いても今まで何気なくやっていた行動が取れなくなったりする。
「ちょちょ、どうすんのよ!」
「大丈夫だって、装備は全部軽装だから」
「いや戦闘のは大丈夫なのか?」
「さぁ、その辺はわかんねぇ」
「このタイミングなのがユキ君らしいね」
「何がらしいのか分かんないけど、何とかなるっしょ」
体が軽くて今の状態なら、跳べばトランポリンで跳んだかのように高く飛び、走れば自転車で風を切ったかのように走れる気がしているが急な変化に違和感しかなくてタッツー達の後に続きながら第一成長期について調べたがタッツーが教えてくれた閉鎖されたサイトの内容ほど詳しい記事はなく、公式サイトに戻って成長期の正式名称がフォーマット化だと知るだけだった。そこの備考欄ではキャラクターの最適化と記されているだけで、そこでタッツーの言っていたサイトの検証結果に繋がる。
それを踏まえて今のユキトの身体能力がどう変化したかを確認する必要があるため、歴史研究家からタッツーが代表して話を聞いてストーリーを進めている間に学院の庭で身体能力を確かめた。
「なんだこりゃ……」
跳べば10メートルを超え、走れば100メートル走の世界陸上の選手も驚く様な速さで走る身体能力にユキトは戸惑っていた。
「ユキ君すごい忍者みたい」
「待って待って、普通はそこまで飛べないし、第一成長期で速く走れないから、きっと何かしらの能力が犠牲になってるはずだから手遅れになる前に確かめた方が良いわ」
ラナは拍手して賞賛して、レナは冷静に考察して疑念を抱き確かめる様に促し、それに賛同して確かめると装備は皮以下の軽装のみで、刀剣類は短剣のみで弓も筋力を要求する特別な弓が装備できない事が分かった。
「これってつまり、あれだよな……?」
「そうね。完全に玄人向けね」
「ユキ君どうする?作り直す?」
「いや、こういう尖った感じ好きだから頑張ってみるよ」
不幸中の幸いとして今装備している装備が外される事はなかった。ストーリーを進めているタッツーからフラグを立て終えたとダイレクトチャットが送られ合流して逃げた悪魔を追って遺跡に来ていた。
「うっわぁ!?」
遺跡の奥を目指すがそこまでに遺跡を根城にしているゴブリンとの戦闘になるのだが、ユキトは自分の動きについて行けずに何度も壁に激突してダメージを受けていた。
「あんた馬鹿ぁ~? こんな狭い所でそんな速さで動ける分けないでしょ?」
「レナそれは言い過ぎだよぉ。ユキ君ただ力の加減がまだできないだけだよ」
「そうかなぁ~?」
ラナの言葉に訝しんでレナがユキトを見ると、ユキトは視線を合わせずにそっぽを向いた。
実際の所、レナが正解で遺跡の狭い通路の壁を蹴ってアニメや漫画に出てくる高速で動くキャラクターの様に相手を翻弄する動きに挑戦していたのだ。
「ユキトは紙装甲なんだから、俺の後ろから弓でも撃ってな……ぶふぅ」
「そうよ。魔法使いの私よりぺらっぺらの紙なんだから、私の後ろに隠れてなさい……ふふふ」
第一成長期前の初心者でも正面から打ち合っても簡単に倒せるゴブリンだが、今のユキトの装備ではその一撃で体力の八割が削られてしまうのを知ってタッツーとレナがニヤニヤしながら紙防御力を煽っていた。
「ああーもう。見てろ俺だってやればできる所を見せてやんよ」
弓から短剣に持ち替え、短剣を逆手に持ちぶれない様に左手を添えて弾丸の様に真っ直ぐゴブリンの集団を駆け抜けて一閃し、通過する時に斬ったゴブリン達が粒子となって消えた。
「「ひゅ~~、格好いい!!」」
「なるほどユキ君の今の攻撃は、速さで重さを乗せた攻撃になるんだね」
タッツーとレナが茶化し、ラナがユキトがこっそり見ていたサイトを開いて、筋力が無いキャラでも火力を出す方法と言う部分を読んでいた。
「ほら次来たからユキト砲準備しなさい!」
「ボス戦の前に使い方を叩き込む時間が欲しいけど時間がないからな、ほらユキト砲発射ー!!」
「ああーもう。お前等ぁぁぁあああ」
「ユキ君、ファイト!」
この先はボス戦になるため、その前に体の使い方を覚える時間が欲しいが、十八歳未満は休憩を挟んでも一日十時間以上ログインできないため、道中の戦闘以外で時間を割くことができなかった。
「よし、これがボス部屋だ! ラナ皆にバフを頼む」
「たしかイベントムービーとかストーリー進行とか無かったよね?」
「ないわね――もしかして!?」
「攻撃と防御の補助魔法だけで大丈夫だったよね?」
「ああ。開けるぞ」
タッツーが重厚な大扉を開けると一人分通れる隙間が空いた瞬間にユキトが突っ込み、その事にタッツーが止めようと声を掛けるが既に通った後だった。
そして扉を開け切ったタッツー達の視界に映ったのは大型のヤギの頭をして蝙蝠の翼が特徴の典型的な悪魔がプレイヤーに反応した瞬間にユキトが懐に入り込んでその胸部に短剣を突き立てる姿だった。
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