第13話 ぼくらのふぁんたじーⅡ

 くじ引きで暁闇ぎょうあんのリザードマンの鱗を手に入れるためにリザードマンの巣くう洞窟へと来たタッツーとユキトは暁闇のリザードマンが出現すると言われるエリアを目指している。


「おし、今だユキト」

「あいよたっちゃん」


 タッツーが盾を構えて頭を低くしてタックルを決めてリザードマンを押して壁と挟んで動きを止めた所をユキトが短剣で弱点部位を一刺しして下がり、怯んだリザードマンをタッツーが剣の一振りで倒した。


「良いね。馴染んで来てるね身の熟しかたが滑らかになってるよ」


 最初は頑張ってもリアルの延長線上でしか体が動かせなかったが、馴染んでくると身体能力が向上していく。トッププレイヤーになると目にも止まらない速さで動けるようになったり、筋力が上がって重い武器が持てるようになったりするが、その辺のバランスはプレイヤーごとに変化するらしく、その最初の変化を【第一成長期】と呼ばれている。


「これが第一成長期ってやつなのか?」

「いや、それは普通に慣れただけだね」

「なんだぁ~。俺もたっちゃんみたい格好良く決めれると思ったのにな」


 たっちゃんはタンクとして戦っていたから第一成長期はタンクに相応しい成長をしている。素早さは劣るが、重い盾を構えられる様に筋力が上がっている。こういった筋力などに数値があれば分かり易いのだが、FLFはステータスを数値化していないため、購入する時は試着で確認する仕様になっており、変な所にリアルな感じを持ってきていると昔から言われ続けている。


「検証サイトの情報によると成長期は何回もあるけど、第一成長期より初期の方がバランスが良いらしいよ?」

「え! そうなの?」

「RPGのシステムを例に出して分かり易かったよ。タンクをやってる俺だとストレングスSTRで筋力が上がるとアジリティAGIインテリジェンスINTと言った速さや魔法関係が第一成長期だと下がる仕様になっているそうだよ」

「何それ後で読んでみようかな」

「ああ、そのサイト残念な事に別の記事でFLFの運営から訴えらて閉鎖になって読めないんだよね」

「何でだよ!!」


 読めない記事の事は残念だったが、うろ覚えではあるが教えて貰って分かったのは、数値化に表したレーダーチャートで五段階評価の五角形でオール3でバランスの良い形が初期値で、第一成長期が終わるまでAIが学習してその評価値の合計である15内で綱引きしていて、それが終わった第一成長期をベースにこれからプレイヤーと共にさらに成長していく仕様になっているそうだ。


「たっちゃん見たいに正面から打ち合わないから、きっと攻撃力に影響ありそうなSTRはあまり伸びないんろうな」

「さっきSTRとかは例で言っただけだから、他に何かがあるさ、おっと! だらだら駄弁ってたら暁闇のリザードマンの出現エリアに着いたな」

「ではでは、こちらの野球のボールサイズの黒い玉はただの玉ではございません。ニャビーの気ままな店で購入したニャビーさん特性のアイテムでございます。この黒い玉をあそこのリザードマンの集団の中に投げ込みます」


 力いっぱい投げたのだが、投擲スキルを取ってないからなのか、っと言う間の抜けた音で飛んで集団の真ん中にと落ちて数秒ほど無音になってから強い閃光が黒い玉から放たれリザードマン達の視界を奪い昼間の様に明るくなった事により暁闇のリザードマンの特徴で他より鱗の色が明るめのリザードマンを容易に見付ける事ができ、タッツーが盾に隠れて目が慣れた頃合いで突撃のタイミングを見計らった。


「よし、行くぞ!」

「ぬぉぉお目が目があぁぁぁぁ」

「いや何で投げた本人が喰らってんだよ!!」


 使用上の注意は店主であるニャビーさんから言われていたが、ゲームだから手で目の当たりを覆えば大丈夫かと思ったのだが予想以上の閃光の強さで目が眩んでしま両手で目を抑えてその場で転がった。これがゲームじゃなかったらと考えたらゾッとするだろう。

 ユキトはタッツーに状態異常を回復する万能薬を振りかけて治療してもらった。


「ほらほら、目が眩んで怯んでるうちにやるぞ!」

「あい。あ~目がまだチカチカする」



 昼間の様に明るくなった洞窟で、まだ光に慣れていないリザードマンの中から的確に暁闇のリザードマンだけを討伐して、その鱗を手に入れた。

 ランタンや松明の灯りじゃリザードマンの集団から暁闇のリザードマンは見つけられない、それ以上の強い光を放つアイテムか魔法が無い限り運要素で手に入れる術しかなく、そのアイテムは完全生産限定で、使用する素材の割に効果が短くて売れにくいのであまり出回ってないためタッツーは購入を諦めていたが、ユキトが持っていたため楽々と終わって安堵したがふっとある事に気づいた。


「なぁ、この光源の効果ってどのくらいなんだ?」

「ニャビーさんが言うには自信作で三十分は持つって言ってたよ」

「って、事は……光源を頼り他の魔物が集まるって事じゃねぇか!」

「さいなら!」

「あ! おいこら!」


 奥からリザードマン以外の鳴き声が聞こえユキトは一目散に走り出し、それを慌ててタッツーが追い掛ける。


「何でお前は何時も肝心なところで締まらないんだよ」

「悪かったな締まらない男でよ」


 ユキトは昔からそうだった。サッカーをやってる時は華麗なドリブルで相手を躱してシュートを撃つだけなのにゴールから大きく外したりと締まらない男だ。


「いや、ユキトは変わらないな」

「あははは。何だよそれ」

「何でもないよ」


 何が可笑しかったのか分からないが、二人は笑いあって洞窟の外を目指して走り続けて難を逃れ、二手に分かれて素材を手に入れていたラナ達と魔女の家で合流するとちょっと不機嫌なレナが椅子に座ってむくれていた。


「どったの?」

「ユキ君それがね」


 ラナに詳細を聞いたところ、どうやら宵闇よいやみキノコと闇夜の薬草の採取は問題なかったのだが、景色や雰囲気を姉妹で楽しんでいたのだが、綺麗な花を摘んでスクショを撮ろうとしたらその花粉が魔物を呼び寄せるトラップだったり、後ろから見たモフモフした存在が可愛くて近くで見ようとしたら、獲物を釣る地中から頭を出しているミミズ系モンスターだったりとワクワクしていたレナの心をことごとく粉砕したとのことだった。


「あちゃぁ~、それは俺も嫌だな」


 と話しているうちに、タッツーが素材を代表して魔女に渡して調合した物を受け取ったところで、昼食の休憩をとることにした。

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