第11話 あかし
冒険者組合から受けた依頼は何て事ないゴブリンの討伐クエストだ。
駆け出しの弓使いがソロで討伐クエストを成功させるには、と言う動画やサイトを幾つも見て来て何度も実践して自分なり術を身に着けたからこそ落ち着いて今戦ってられる。
最初は短剣で戦ってたけど、お金も少しずつ貯められる様になり矢を購入したり木工士のスキルで矢を自分で作れる様になってから、やっと弓使いらしくなったものだ。
改めて弓の利点を整理すると、玄人向けの武器だと何度も痛感させられる。
魔法使いだと攻撃力は高いが魔法を撃つ前に魔力による光で見つかってしまったり放つのに時間が掛かってしまうが、弓の場合は魔法の様な派手さはないが発覚されることは少なく、条件を揃えて弱点部位にピンポイントに当てる事が出来れば気付かれる事なく相手を倒すことが可能になる。
「ぐぎ!?」
「よし、順調順調っと」
そう、この頭を射抜かれたゴブリン達の様に一矢で倒す事ができる。敵が強ければ強いほど要求される命中精度の他に弓と矢の性能や威力が求められ、それを用意できるのが弓使いの上級プレイヤーなると言うことだろう。
初心者でも入手しやすい武器でも魔物のゴブリンなら特別な準備もなく弱点部位となる頭部と心臓を射抜けば一矢で倒せるため、弓使い初心者に勧められ慣れたら動きが素早くなる魔獣系の魔物の討伐にと段階を踏むのが良いと推奨されている。
ゴブリンを討伐しても素材になる物はない。討伐して貰えるのはクエストを完了した時に冒険者組合から渡される僅かばかりのお金だけで大した稼ぎならないため、多くのプレイヤーは最初は素直に従ってゴブリンから入るが直ぐに飽きて素材が手に入る魔獣の討伐やダンジョンに潜ったりしている。
弱点部位に当てれば簡単に倒せると言う理由だけでゴブリンが勧められている訳でない、動きは初心者に開放されているエリアのゴブリンの行動速度は遅過ぎることも速過ぎる事もない。そして弓使いにとって選ばれている理由は外した後の次射への対応を含めて推奨されている。
弱点部位を外してしまい真っ直ぐ突っ込んでくるゴブリンを目の前にしてもユキトは冷静に腰部に装備してある矢筒の手を回して矢を番えてギリギリまで引き付けて頭部を射抜いた。
「これで依頼終了っと」
最初と比べたら上手くなったものだ。初めて弓だけで倒そうとした時は中々当たらなかったり、当たっても一矢で倒せなくて逃げながらを矢を番えて何度も撃っていたが今も外しはするが、慌てて逃げながら撃つと言う事はしなくなり、動きをみて落ちついて足を止め放つ事が出来るようになった。
冒険者組合に達成報告すると僅かばかりの報酬と【ギルド結成の証の短剣】を受け取った。
このギルド結成の証の短剣はギルドの結成、またはギルドに所属する際に、その短剣がギルドハウスなどの鍵になるため必要となるのだ。
これで
今は三月の三週目で、みんなでクエストに行くのは最後の四週目となる。
初心者だからこそ、それまでに念入りに準備する必要がある。
神官がいるとは言え、何度も被弾したりしてMPを使わせるわけにもいかないため、多めにポーションを買ったり、少しでも生き延びたりできる様に装備を新調したり、装備などでお世話になっている生産職のニャビーからのアドバイスもあり、様々なアイテムを買って金欠になる度に冒険者組合に行っては依頼を受け続けた。
「奈々ごめん。寝坊した」
「昨日も遅くまでFLFにインしてたんでしょ?」
「まぁね。みんなの足を引っ張りたくないって最初は思ってたんだけど、やればやる程おもしろいね」
「ふふ、ゆき君らしいね」
土曜は奈々と映画に行く約束していたのだが待ち合わせの時間に遅れてしまったが、機嫌がそこまで悪くないのか物を積み上げる癖はなく機嫌がよさそうだった。
上映している映画の中で背伸びをせずに年相応の魔法学園を舞台にしたファンタジー映画を見て、そのあとファミレスで映画の感想を話しながら昼食を摂り、奈々の買い物の付き人となって夕暮れ時まで一緒に過ごした。
その日の夜、たっちゃん達に三月の最後の週のどの日にギルド結成クエストに行くのか決めるためにメールを送った。
全員空いてる日は二十八日の木曜日と三十一日の日曜日となり、クエストは木曜日に、三十一日がリアルで打ち上げとなった。
FLFを始めてから初めて幼馴染四人で受ける最初のクエストがギルド結成クエストである事に胸を躍らせてまだかまだかと待ち焦がれた。
ギルド結成のクエストは難しくはないが時間が掛かるため、片手間でやるには難しい。そのため、どのギルドでも結成の初期メンバーにリアルで繋がってる人が多かったりする。中にはソロでギルドを立ち上げた強者がいるとかいないとか……。
各自で情報を集めながらメールや通話で相談してどう攻略するか話し合い、いよいよ明日、待ちに待ったギルド結成クエストに挑戦する。
今日は明日の為に早めに寝て明日に備えた。
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