第10話 これ どうぞ
伝説のメイドクエストを終えるとレナの方にラナこと奈々からメールが届いていたらしく、慌てて待ち合わせの場所へと向かうと頬を膨らませているラナが噴水の所で待っていたのだ。
何処から出したのか噴水の淵に石を積み上げながら待っていたらしく、十段に積まれた石が三つもあり、それを見たレナとユキトの顔が青ざめていた。
昔から奈々は待ち合わせで約束の時間が過ぎると何かしら物を重ねだすのだ。
その数の多さが奈々がそこで待っていた時間と不機嫌の度合いを表している。
「約束の時間を一時間も過ぎるなんて酷いよ、しかもユキ君も一緒なんて……」
「ごめんって、明日パフェ奢るから許して!」
普段から仲の良い双子だから機嫌の取り方は熟知しているらしいが、今回は何かが足りなかったのか、まだご機嫌斜めの様子で此方をチラッと見ていた。
FLFで生まれた不和はFLFで解消するのが一番だ。
FLFを始めたばかりのユキトが今の
「ラナ、これやるから機嫌を直してくれよ」
「本当にあげていいの?」
「ああ、特に必要ないし」
サブ職業は釣り士と料理人それと木工士を上げているが、どれも今の所はレシピを必要としていない。
「ユキ君、本当に貰って良いの?」
「何が出ても何も言わないって」
「じゃあ、開けるね」
そう言ってラナが伝説のメイドのレシピを開封すると七色に光ってレシピ本へと変化し何が出たのか気になってレナとユキトは横から覗き込んだ。
「これって……」
「わぁ、本当に出るんだ! やったじゃないのラナ」
「どれどれ……うわぁ、当たりの当たりじゃねぇか。B+で開けたから0.1%の確率だってさ」
ラナが引いたレシピは伝説のメイドレシピの料理枠の中で最上位に位置する伝説のメイドのケーキのレシピだった。
攻略サイトによるとこのケーキには、バットステータスの解除の他にデスペナの解除そして物理攻撃力、
その実装された当初のFLFではプレイヤーキルした際に相手からアイテムをドロップさせて奪う事が出来ていたが、八年前のFLFケーキ革命により、決闘以外ではアイテムを奪うシステムを廃止となり、その影響でプレイヤーが所属するアルタ王国、デネー帝国、ベーガ共和国による国土を賭けた大型のレイドによる対人戦の仕様まで変更する事となってしまった。
プレイヤーをキルしてドロップする仕様は当初のFLFの国家間のレイド戦が売りで、ドロップシステムがそのシステムの元でもあったため、国家間のレイド戦の仕様変更で多くのプレイヤーを失ったとか、そして運営が方針を大きく変更して絶え間なくクエストなど追加していった結果、名実ともにフリー・ライフ・ファンタジーとなってヒット作品にして今でも愛され続けるフルダイブゲームに成功させた、まさに【伝説のケーキ】であると攻略サイトの備考欄に書いてあった。
「あちゃあ、裁縫かぁ。錬金系が良かったんだけどね。私からも、これあげる」
「それ私に押し付けてなぁい?」
レナも報酬を開けてみたが、欲しかったレシピではなくCランクの裁縫のレシピでクッキングミトンだったため、裁縫しているラナに渡した。
クッキングミトンは戦闘では使えないがシチューやグラタンなど煮込んだりオーブンを使う系の料理でミトンを使う事により料理の火加減や焼き加減による判定に補正がかかるため、料理スキルを持っているプレイヤーに需要はある。
それは料理スキルを上げようとクッキーを焼いたユキトだから、その有難みは身をもって知っている。クッキングミトンを買ってクッキーを焼いたら、あまり分かってなくても失敗をしなくなったのだから料理するなら持っていて損がない装備の一つだ。
「ゆ、ユキ君これ……」
「ん? 良いよ。そんなに気にするなら今度一緒に遊ぼうな」
「う、うん。ありがとう」
レナとラナは明日出かける予定があるため早めに寝るためにログアウトしてしまい残されたユキトは攻略サイトを開きながら簡単なクエストを幾つかやってから眠りについた。
翌朝携帯に奈々からメールが届いていて、今度の土曜に映画を見に行かいかと言う誘いだった。
ギルド結成クエストに行くのはその翌週となる、たっちゃん達は何時でも行けそうだが、始めたばかりのユキトにはまだ装備とスキルが大きく足りていない。
そしてギルド結成クエストに参加するには最低条件として冒険者組合から一定数の信頼を得た証として【ギルド結成の証の短剣】が贈られ、それを持った者のみが受けれるクエストになる。
その信頼を得る方法は単純に冒険者組合のクエストを受けて成し遂げれば良いのだが、クエストの難易度で信頼度が変わってくるため、パーティーを組んで難しいクエストを受けるか、ソロで簡単なクエストを受けるかはランダムで現れるクエスト欄に毎回悩まされていた。
今、冒険者組合から受注しているクエストはソロではちょっと厳しいクエストだがパーティを組んで挑むには旨味が少ないクエストになっているため、準備してソロで挑んでいる。
そしてこのクエストをクリアすれば【ギルド結成の証の短剣】が冒険者組合から贈られる事は受注した時に冒険者組合の受付から知らされているため、力が入ってしまうものだ。
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