第7話 ぱーてぃーをくんであそんでみた
昨日の夜、FLF教室で知り合ったお爺さんとお婆さんと偶然にも出会い、これも何かの縁だと言う事で、タッツーことたっちゃんにも声を掛けて、今日の14時に中央広場の噴水の前で待ち合わせする事にした。
待ち合わせの時間までまだ1時間ちょっとはある。
クエストはたっちゃんが選んでくれるため、ユキトは回復アイテムなどを購入して備えた。残った時間はホーンラビットの素材の持ち込みの時にお世話になった職人プレイヤーのニャビーさんの店に来ていた。
最初に会ったのは露店だったが、本当は店持ちの職人プレイヤーで、本人が言うにはそこそこの腕らしい。
装備できる武具や防具はジョブで決められているため、何でも装備が出来る訳でないため、ヘルプで確認しながら見ていると小楯が装備できる事を知って木の小楯を購入して装備して感覚を確かめた。
「あ。そうそう。鉱石とか生産で使えそうな物は一通り買い取るから店売りしないで持って来て欲しいな」
「それって、知り合いに声掛けて紹介した方がいい感じですか?」
「そうね。懇意にしている所がなければね」
「りょーかい。じゃあ、そろそろ時間なんで行ってきます」
ニャビーの気ままな店を出て、待ち合わせの噴水の所へ行くと集合時間5分前に三人とも来ていた。
ゲーム内の容姿と名前は伝えていたため、三人は楽しそうに話していた。
「ありゃ、俺が一番最後だったか」
「良いんじゃね? 集合時間前なんだから」
「で、クエストって何するのたっちゃん。自慢じゃないけど、俺始めたばかりだから難しいのは無理だからな」
「大丈夫大丈夫。そんな難しいクエストじゃないから、それでいてVRMMOらしく、昨日の教室で教わった事が活かせそうなクエストを選んだから!」
たっちゃんは親指を立ててニカッと笑い、リアルのたっちゃんを知っている所為か吹き出して笑ってしまった。
テッペイとサクラの老夫婦は大人の余裕か微笑ましく笑って見守っていた。
パーティーのリーダーはたっちゃん、クエストのフラグを立てるためにたっちゃんの案内で町を歩き、教会の入り口の近くで俯いて立っている老婆にたっちゃんが代表して話しかけクエストが始まった。
『旦那さんとの思い出の花を取りに行こう!』
亡くなった旦那さんとの思い出のある場所の花をお墓に供えようとしたが、年齢的に難しく最近はモンスターが棲みついていて冒険者組合に依頼しても高くなってしまうため諦めていたそうだ。
たっちゃんの案内で東門から町を出て、森エリアには入らないで北の草原エリアへと歩いていくと一本の大きな木が見え、そこへと四人が向かう。その間はゴブリンと何度か遭遇したが、スキルが使えるようになったテッペイとサクラ、それに中級プレイヤーのタンクのたっちゃんがいるため、難なく目的地に辿り着き、大きな木の周りに花が咲き誇っており、それが老婆が求めていた花で、それに触れようとした瞬間――木の上か大型のゴリラ型のモンスターが飛び降りてきて襲って来たのだ。
「俺がタゲを取る! 来い!」
たっちゃんが大盾を構え剣を掲げて挑発スキルを発動させて、注意を自分に向けさせ、たっちゃんが惹きつけている間にユキトがテッペイとサクラに指示をだす。
「テッペイさん、サクラさん、昨日教室で教わったやつやりますよ」
「ああ、あれか」
「わかりました」
マントゴリと言うゴリラ型のモンスターの攻撃を余裕を持って防ぐたっちゃん。
そしてそのマントゴリの背後に回って余裕を持って攻撃するテッペイとサクラの攻撃が確実にマントゴリのHPを削っていく。
安定したタンク役がいると攻撃力や操作がぎこちないプレイヤーでも安心して立ち回れて、FLF教室で教わった動きをしっかり実践し、ユウはある程度削られて行くたっちゃんのHPをポーションで回復しながらマントゴリをまだ慣れない弓で攻撃した。
まだ狙った所に上手く当てる事が出来ないため、マントゴリの動きが激しくなってきてテッペイとサクラも大振りモーションに巻き込まれて被弾しだし、ポーションを使って回復をサポートしていく。
半年以上先にプレイしたたっちゃんでも序盤の簡単なクエストとは言え初心者を三人引き連れて戦うのは大変だろう。
「もうそろそろ、マントゴリのHPが半分を切ります。テッペイさん、サクラさん気をつけて下さい」
「凶暴化と言うやつでしたかな?」
タンクのたっちゃんは防ぐのに集中しているため、テッペイとサクラにユキトが注意を促しながら指示を出す。
凶暴化しているボスの動きが大振りなるばかりか怯み難くなり、更に移動と攻撃速度も上がりボス戦で一番の死亡率が高くなるのが凶暴化だとあげられている。
FLF教室で教わったのは、凶暴化したボスへの立ち回りは攻撃の回数を減らし、ボスモンスターが攻撃した後に生まれる大きな隙きのみにアタッカー役が集中して確実に安全に攻撃を当てる方法だった。
その理由は指導員からしっかりと教わっており、アタッカー役の二人が安全に攻撃して確実にボスモンスターに攻撃が出来るという事は、タンク役のプレイヤーにのみに回復薬が集中できるからだと丁寧に言われている。
VRMMOを好んでプレイしている人にとっては何を今更だと思われるが、頭で理解していても実際に戦闘に入ると行けると思って欲を出した立ち回りでパーティー戦の和が乱れたりするのが多かったりする。
それは慣れ始めた若いプレイヤーが起こすことが多いが、このパーティーではタンクとヒーラー役が若者で、暴走しやすく目立って人気が高いアタッカー役を落ち着いた年長者が立ち回っているため、なんの問題なくマントゴリの討伐に成功し無事に依頼人に思い出の花を届ける事に成功してテッペイさんとサクラさんも満足してログアウトしたのを見送ってユキト達もログアウトした。
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