第6話 げーむのため りあるでもがんばってみた
連続ログイン時間ばかり気にしていて連日ログイン日数にも制限があるなんて気付かなかったユキトだが、それを見越して幼馴染のたっちゃんが電話で教えてくれて今日は二人でリアルでお出掛けとなる。
区のスポーツセンター前に12時50分に待ち合わせさせられ、着替えと室内履きを持って時間通りに行くとゲームでは金髪の長身イケメンキャラのタッツーこと
「着替えもちゃんと持ってきたか?」
「うん。言われたとおり持ってきたけど……たっちゃん、なんでスポーツセンターで待ち合わせなの?」
「それはな。FLF教室があるからだ」
「FLF教室?」
「参加費500円で十五歳以上なら誰でも参加できる教室だぜ。ささ、受付と着替えを済ませて第2体育館に行こうぜ」
受付にお金を払い更衣室で着替え済ませて第二体育館に行くと、同い年から老夫婦が既にいた。
そして少し経ったところでFLFの装備のコスプレをした人が表れ、その人が笛を吹いて視線を集める。
「みなさん。本日はFLF教室に参加してくださりありがとうございます。この教室では実際に体を動かしながら、ゲームでの動き方の参考になればと開かれた教室です。
運動神経が良ければFLFが上手いのか? 答えはYESでもありNOでもあります。
ゲームは何処まで行ってもゲームです。重要なのはシステムのアシストを上手く引き出せるのかが重要なのです。今日は近接戦闘の武器の振り方と、パーティーで戦う方法を学んで頂きたいと思っています」
スポンジでコーティングされた剣を一人一振りずつ渡され、振り下ろし、袈裟斬り、切り上げ、突きと簡単な振り方で教えられ、それを指導員の真似をして振るう。
「そうそう、溜めが重要なんです。溜める時間が不十分だったりするとシステムアシストが間に合わなくて不発動を起こします。そして、充分な溜めがあっても剣速が不十分であったり、起動がズレるだけでシステムアシストが弱まり威力が落ちてしまいます。ですので、最初は丁寧にゆっくりやって覚えましょう。慣れたら速度を上げて行きましょう」
FLFで短剣を振り回していた時は何とも思っていなかったが、スポンジでコーティングされた剣をたった30分素振りしているだけで汗が流れてしまう。
「難しいわ」
「やっぱり、若い子のゲームは無理そうだな」
「そんな事はないですよ。現実では出来なくても、こうして挑戦しているから、記憶となってそれがプレイヤースキルの経験値になり、実際にゲームでプレイしてみたら意外と簡単に出来たという話しもありますので、とりあえず今だけは諦めないで頑張りましょう」
「そうね……もう少し頑張ってみようかしら」
「そうだな」
休憩を挟んで、次はパーティー戦になるが、老夫婦と組もうと思う者がいないのか二人が遠慮ガチになって少し距離をとるが、そこに龍斗が真っ先に「一緒にやりましょう」と声を掛けた。
「こんなお爺ちゃんとお婆ちゃんでもいいのかい?」
「ぜんぜん大丈夫ですよ。なぁ? ゆきと!」
「うん。大丈夫」
指導員の支持に従ってモンスター役の予備指導員さんに向かってスポンジの剣でペチペチ叩く。
「そうです。慌てないで、ゆっくりやりましょう」
たっちゃんが最初に攻撃してタゲを取り、その背後から三人で攻撃するが、ヘイトコントロールがないとされ、一番多く叩いてしまったお婆さんの方へモンスター役の職員さんが向いて一旦動きを止めて、丁寧に説明する。
「そうなの。てっきりいっぱい攻撃すれば良いと思ってたわ」
「その辺は、難しいよな。理解してヘイトコントロールが出来る人の方が少ないからな。俺は諦めて挑発スキルばかり使ってタゲ取ってるし」
「確かに、目に見えないと判断できないね」
「こんな若い子が分かんないなら、私達では無理そうだな」
「いえ、決まったメンバーで戦うなら、コンビネーション攻撃としてやるなら擬似的に意識可でヘイトコントロールが出来ます」
予備指導員さんの指示を聞いて、ゆっくり何度も繰り返し、一人何回どの順番で攻撃するかを決めて、ヘイトコントロールの練習をするが、これはあくまで今の予備指導員のお兄さんとのやり取りでゲームで使えるかは分からないが、何となく今だけ分かった気がした。
FLF教室が終わり、着替えてトイレに行っている間に、たっちゃんは老夫婦と話しをしていて楽しそうだった。
そんな老夫婦と別れて、コンビニに寄ってアイスを食べながら談笑して途中でたっちゃんと別れて帰宅した。
シャワーを浴びて夕飯までのんびりと過ごし、今日はFLFには夕食後に少しだけログインして落ちようと決め、東門のエリアの手前で今日学んだことを試そうとゴブリンに挑もうと探していると、動きがぎこちないヒューマンの男性剣士とヒューマンの女性槍士が一匹のゴブリンを相手に苦戦しているのが見えHPも半分まで減っており、ほっとけなくて飛び出して持っていた回復薬を二人に掛けていた。
「加勢します!」
短剣でゴブリンを倒し、二人に向き合うと二人は頭を下げてお礼を言っていたのだが二人の声が何処かで聞いた事がある気がしていた。
「教室で習ったのにできませんね」
「やっぱり若い子のゲームは難しいな」
「教室? あ! もしかして今日のスポーツセンターのFLF教室に参加してたお婆さん達ですか? 俺、今日一緒にパーティー組んだツンツン頭じゃない方です。名前はユキトです」
「あ、ああ。昼間はありがとね」
「いえいえ」
教室で一緒だったお爺さんはテッペイと言う名前の剣士で、お婆さんはサクラと言う名前の槍士でプレイしているそうだ。
最初の職業選択までは孫と一緒にプレイしてジョブに就いたのだが、孫はどんどん先に進んでしまい置いてかれてしまったらしい。
年齢を重ねて体が思うように動かせなくなってしまったが、ゲームの世界なら童心に返ったかのように動かせて楽しめているそうだが、スキルとかそういうのがちょっと分からないらしく、スキルが使えなくて今日のFLF教室に通ったんだそうだが、単純にスキル習得画面でスキルを習得していなかっただけだった。
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