第5話 せいさんを たのしめるひと?
デスペナを受けて体が重く感じるなかで、ユキトは生産に挑戦してみることにした。
生産に挑戦するのは簡単だ。FLFにおいてスキルポイントではなく経験値によるスキルレベルが上がるシステムになっている。
サブ職業を得る方法は簡単で、就きたい職業の店に行き臨時徒弟として雇って貰って、初級のスキルとレシピを貰って見習いとしてサブ職業が得られる。
そこでユキトは一旦ログアウトして昼食済ませてから、お勧めサブ職業を順に試して見ることにした。
「え? 少々ってどんくらい? 打ち粉ってどういう意味?」
料理に挑戦するが、そこまでの予備知識がないため色々と悪戦苦闘して何とか一品だけクッキー作りに成功して料理スキルの入門編として見習い料理人としてサブ職業を得ることが出来た。
そしてメインである戦闘職と違ってサブ職業は好きなタイミングで自由に変更することができる。
ただ、クッキー以外は何度挑戦してもレシピは貰えなかった。攻略サイトで調べてみると普段から料理または料理の手伝いをしていれば出来るレベルとしか載っていなかった。
料理は一旦諦めて、できそうな物として釣りを選んだ。
釣りならタッツーと一緒に川に行って何度もやった経験があるため、簡単に池で釣り糸を垂らす所までできたが、そこからが長かった。
単純に釣れない。その一言に尽きる。
リアルより時間の流れが早いため、それが余計に苦痛になっていた。
釣りスキルのレベルが高ければある程度の場所なら面白いように釣れるらしいが、ゲームで何もしないのは何か落ち着かなかった。
細工師の徒弟になるが細かい作業が元々苦手だったため習得する事が出来なかった。
始まりの町で手に入るサブ職業は色々と試したが、釣りと料理と矢が作れると言う理由で木工士で落ち着いた。
やっと釣れた魚をレシピなしで焼いたり素揚げにして、何度も失敗しながら何回か成功すると『焼き魚』『魚の素揚げ』のレシピを手に入れ、釣りと料理のレベルを少しずつ上げた。木工レベルを上げるには木材が必要になる。
お金で買う余裕がないため町の外で伐採するしか方法がなくデスペナで戦えないため木工士のレベ上げは諦めた。
18時になってそろそろ夕飯の時間が近いと設定していたアラームが鳴り、ログアウトする。食後にログインしても1時間ちょっとしたら連続10時間とみなされ強制ログアウトになってしまうため、今日はここまでとなる。
夕食後にFLFの動画や攻略サイトを見ようとした時に、携帯が鳴り出し着信履歴を見ると『たっちゃん』と出ており直ぐに取った。
「よぉ、ユキト最近どうよ?」
「ああ、うん。午前中にゴブリンにやられて死に戻ってデスペナ中だよ」
「マジか!? 職業何選んだんだ?」
「弓使いのソロで短剣で戦ってたんだけど、熱中しすぎて気が付いたら魔の時間帯になってゴブリンに囲まれて袋にされて、最後の最後に満身創痍のなか町に帰ろうとしたら後ろからぶすりと刺されちゃった」
「弓使いの短剣ソロってあの動画か?」
「どのあの動画か知らないけど、多分その動画を真似したよ」
有名トッププレイヤーがサブ垢を使ってほぼ初期装備の状態で色々と遊んでいる動画の一つで『弓使い短剣ソロでゴブリンをひたすら狩ってみた!』を真似したのだ。
もちろんプレイヤースキルは足りないし、ほぼ初期装備と言うだけで、極一部物理攻撃力を上げるアクセサリーなど初期生産型の中で良いものを選んで充分な準備をしてから可能なことで、それを昨日今日始めた初心者が出来るわけがない。
はっきり言って奇跡に近い。カウンターとはいえ一撃で倒せたのは購入した短剣が良かっただけのこと。
つまり、あの時声を掛けてくれた露店を経営していた職人プレイヤーさんの腕があって成し得たと言っても過言ではない。
「無謀な事してんな」
「で、そんな事が聞きたくて電話してきたの?」
「いや。明日遊びに行こうぜ」
「明日? 急だな、せめて三日前に誘ってくれよ」
「何か予定でもあった?」
「別に何もないよ。FLFをやろうかなって思ってただけ」
「やっぱりそうなるよな。でもリアルで体動かしておかないと大変なことになるからな」
「大変なこと? ああ、ニュースとかで取り上げられてるあれか」
フルダイブ系のゲームが世界にもたらした問題とは、仮想空間に長い間連続ログインしていると現実世界で上手く体が動かせなくなってしまうと言うことだった。
VRMMOで遊んでいて強靭な肉体となって自由に体を動かせるため、現実世界でもこれ位なら大丈夫だろうと錯覚して少し高めの場所から飛び降りて骨折したり、ちょっとガードレールやフェンスを飛び越えようとして負傷する者達で社会問題になり、最終的には仮想空間に居過ぎて現実世界では上手く歩けなくなってしまいよく転ぶ人なんてのも表れてしまったのだ。
それが『フルダイブ事件』と呼ばれ二十年ほど前に騒がれ、廃止まで追い込まれたが、五年間の空白の期間を得て対象年齢十五歳以上として再び世に表れた。
連続ログイン時間、連日ログイン日数、ハードの無起動時間などが管理され、その管理は十五歳以上、十八歳以上と決められており、それを破りそうになると警告音がなり、あまりにも熱中し過ぎて警告が多いとリアルのポストに黄色い紙の通知と赤紙の通知が届けられ、赤紙が届けられた者はメディカルカウンセラーに強制的に通う事になってしまう。
たっちゃんは、十五歳以上で18歳未満で許されたセーフティーラインである連続ログイン日数ギリギリの3日目になる前に注意を促して誘ってくれたのだ。
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