第4話  しょしんしゃが いちばんたのしいとき

 ホーンラビットの素材を持ち込んで、ホーンラビットの皮で作られたレザーパット、レザーパンツを作ってもらい、それだけで最初から持っていた所持金をほとんどど消費した。

 FLFのお金の通貨はフルで、レザーパットとレザーパンツは持ち込みであるため、一つ1000fのところを半額の500fにしてもらい2つ合わせて1000fで買わせて貰った。

 余ったホーンラビットの素材を買い取って貰いそのお金で短剣を一つ購入して取り合えずの装備を揃えた。矢には限りがありお金がかかるため最初は短剣のお世話になるだろう。

 新装備を手に入れて真っ直ぐ町の外に出て試したいが、そろそろ夕食時でログアウトしておかないと母に怒られしまうため、泣けなしのお金で宿屋に行きログアウトした。


 季節は三月、中学を卒業して今は高校の入学式まで暇であるため、暫くはゲーム漬けになるが、連続ログインは認められていない。最大で10時間。もし24時間の中で多くインしたいのなら、他のフルダイブゲームも含んでログアウトしないとならない。

 もし限界までプレイした場合は強制ログアウトさせられ、戦闘中であっても待って貰えない。その場合は1時間前から警告され、30分前、10分前、5分前と警告され、そして1分からカウントダウンが始まる。その動画は色んなプレイヤーが動画サイトにアップしている。

 夕食を終えて、FLFの公式サイトや攻略サイトを開いて調べたり、トッププレイヤー達の動画や書き込みを見て勉強した。

 ゲームだからと言ってゲームだけの知識やスキルがあれば良いと言う訳でないらしい。

 身体能力が高ければゲームにも反映されるが、運動が苦手な人には人権がないのかと騒ぐ連中がいたらしいが、それに関してシステムアシストの上手い扱い方と練習方法として動画で紹介されている。

 例にあげれば投擲スキルの上手い投げ方と練習方法で、照準マーカーがないFLFでもシステムアシストで見えない照準システムがあり、それがだいたいどの辺なのかと検証し、それをリアルではだいたいこの距離から投げる感じとして紹介されていた。

 その距離は野球のピッチャーのマウンドからキャッチャーミットに投げる位の距離だとされ、多くのプレイヤーが投擲スキルをそれなりに上手く使いこなせるようになっていた。

 料理スキルもリアルのレシピが通じるため、ゲームを通して料理を教わって覚える独身プレイヤーもいたりするし、ほぼ毎日何処かでゲームを通して料理教室など何かしらの教室が開かれていたりする。


「ゲーム内でヨガって効果あるのか……?」


 動画サイトでFLF内で行われるヨガ教室がアップされているが、動画の最後に『感覚を忘れないうちにログアウトしてもう一度やりましょう』とテロップに流れていた。

 明日受けようとしているクエストで良いのがないか探してから就寝した。

 翌日、朝食を済ませてFLFにログインし、冒険者組合に行ってゴブリンの討伐依頼を受けて東門から町を出て近くの森へと入る。見習い冒険者の証では東門と南門からの一部のエリアしか開放されていない。


「ギギ!」

「やぁ!」


 動画で予習した通り、ゴブリンの動作で一番多いジャンプして短剣で斬りつける動作に対して、横に半身になって避けてゴブリンの着地に合わせてその首に向かって短剣術スキルで溜めてライトエフェクトで輝いた短剣でゴブリンを思いっきり突くと、サイトに載っていた通り短剣術スキルでカウンター補正が加わってゴブリンを一撃で倒せた。

 それ以外では二度三度と短剣を振って上手く斬らないと倒せないため、カウンターが出来るモーション以外では被弾しながら戦う事になるため、教会と森を往復しながら戦い続けた。

 FLFには、キャラクターと職業にレベルがない。あるのはスキルレベルだけであり、それを上げるためのスキルポイントの入手方法はクエストをクリアするか、運営か第三者からギフトで貰うしかない。

 何だかんだと上手く熟せていたからゴブリン討伐の依頼を調子に乗って何度も受けていると異変が起こった。

 それについては知識では知っていた。それがこんなに早く起きるとは思ってもいなかった。

 南門の最弱エリアだから気にならなかったから油断して抜け落ちていた。

 夜が近づくと魔物が活発化すると言うことだ。


「ぐぁ!?」


 さっきまではゴブリンと一対一で戦えていたが、急に二対一になりいつの間にか囲まれ、所有していた初心者ポーションを駆使して何とか倒して町に戻ろうとしたが徘徊していたゴブリンに見つかり、それに気付かなくて背後からぶすりと刺されてしまった。

 小説などで刺された時の感覚はまるで焼かれたような痛みや血が流れ出てとあるが、これはゲームであるため、そんな痛みはない。短剣が貫通しているけど、刺された箇所に強い振動が流れ、そして徐々に動けなくなりゲームらしくその場で倒れ僅かな静寂をえてアバターが淡く光って砕け散り、始まりの町の教会へと死に戻りしてしまった。

 FLFにもデスペナはあるが、このゲームでは数値で表れないため一番分かりやすい。


「お、重い……」


 20キロほど重い何かが入ったリュックでも背負っているんじゃないかと思えるほどに重く、さらに動き難い。それをリアルで表すとこんな感じと言う動画では二リットルの水を箱買いしてロープで縛って背負った動画や、リュックに20キロの重りを入れて背負ったり、ある者は有名な亀な甲羅にして表現したりして紹介されている。

 そしてデスペナを受けた時は、デスペナが消える十時間後にインするか、大人しく過ごそうとサイトに書いてあり、何して過ごそうか迷っていた。

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