第3話 はじめてのぼうけん
祝福の教会までの道のりは一本道で迷う事はなく、途中で現れるモンスターも可愛らしい角が生えた兎のホーンラビットばかりで、むしろ木剣で叩くことに良心が痛んでしまう。
ユキトは多少慣れたがアルルは今もちょっと躊躇いながら木剣を振り下ろしている。
「こんな可愛い魔物とか卑怯だよ」
「それは同意するけど、ホーンラビットの素材を生産職のプレイヤーに持ち込めば安くて良い装備を作って貰えるらしいから、頑張って狩ろう」
本当なら、真っ直ぐ進んで早々と祝福を受けて職を得たいが、なぜだか職業を得てからの帰り道になるとホーンラビットは襲って来ないで逃げるんだそうだ。
つまり無職と言う弱い存在は襲うが戦闘職を得た者は襲わないというだけで、効率良く兎狩りが出来るのは今だけで、ユウはアルルに出会わなかったらホーンラビットの素材を対価として誰かに声を掛けて護衛してもらおうと思っていたし、その方法があると攻略サイトに普通に載っている。
攻略サイトでは一人あたり必要な素材の数も書いてあるため、それを頼りにしてアルルと一緒に木剣を振り下ろし続けながら森に入り、そしてやっと二人分手に入れてから祝福の教会へと向かう。
物欲センサーと言う言葉は昔からあるが、まさにそんな感じで最後の兎の皮一枚がドロップされなくて時間が掛かってしまったのだ。
その辺はゲームあるあるで有名だろう。
「わぁ!」
「確かに感嘆な声しか出ないな」
祝福の教会の扉を開けて入ると、ステンドグラスから射し込む光と作り込まれた天井画を見ればアルルと同じように感嘆な声しか出なかったが、遅れてやってきた別パーティーの少年プレイヤーはそんな美しい光景に目もくれずに真っ直ぐ奥で立っているNPCに話し掛けに行き、彼を護衛していたプレイヤーはお役御免と言わんばかりにそそくさと教会から出ていってしまった。
「アルルは成りたい職業とか決まってるの?」
「魔法使いかな。ユキトはあるの?」
「ああ、俺は
「そうなんだ」
奥にいるそれぞれの職業の格好をしているNPCに話し掛けると、弓使いになりますか? と言う選択肢がウィンドウで現れYESを選択すると淡い光に包まれ、いつの間にか旅人の服から見習い狩人の服に着替えさせられ装備していた木剣が見習いの弓に変化しており、アイテムボックスを開いて確認すると旅人の服と木剣はアイテム欄から消え、その場所に見習い装備が置かれていたのだ。
ユキト・スノウ・スターミヤ
性別 男
職業 弓使い
スキルポイント10
スキルポイントの消費量はスキルによって違う。そして習得できるスキルには発生条件が存在しているため、同じ職業同士でも互いに持っていないものを習得していたりする。
スキルポイントが10だと最低二つ多くて三つくらい習得できるだろう、習得するスキルは既に決まっている。
弓を扱うために弓術にスキルポイントを5消費し、弓が使えない時用に短剣術にポイントを3消費して習得して2ポイントを残して決定させた。
始まりの町の周りをソロで遊ぶにはこれで充分だろう。
「ユキト。お待たせ」
「んじゃあ、戻ろう」
アルルと歩きながら、今まで見て見ぬ振りしていたファミリーネームの非表示の仕方などを教えながら親切な親父の所へと戻るが、前情報通りに帰り道に見かけるホーンラビットはユキト達を見ると一目散に逃げてしまい呆気なく親切な親父の所へ戻って、見習い冒険者の証を手に入れる事ができた。
「アルル。俺ちょっと持ち込みで装備作ってくれる生産プレイヤーさんを探しに行くつもりだけどどうする?」
「そこまでお世話になるつもり無いよ。次からはちゃんと調べてから行動する事にするよ」
「オッケー。じゃあ、パーティーを解散するね」
パーティーを解散して直ぐにアルルからフレンド申請が送られて直ぐに承諾した。
「宜しくなアルル」
「ええ。此方こそ宜しく。今日は助かったよ。ありがとう。また縁があったら遊びましょ」
生産プレイヤーが集まる露店や店が並ぶ場所へと行くが、どの店にするべきか目移りしてキョロキョロしてしまう。
「ねぇ。君、何を探してるのかな?」
「え? あ、俺ですか?」
「そう。君だよ君」
「えっと、持ち込みの素材で装備を安く作ってくれそうな人を探してるんですけど知りませんか?」
「素材によるかな。難しい装備なら専門の職人プレイヤーに頼んだほうが良いけど、簡単な初心者用の装備一式なら過程で大半の職人プレイヤーなら作れるはずだよ?」
「えっと兎の皮とかで、いちおうサイトに載っていた一人分の数は揃えてます」
「兎なら、問題なく私でも作れるよ」
そう言って話し掛けてきた女性プレイヤーはニカッと笑った。
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