第12話
【前書き】
閑話なのでちょっと短めです。なので明日昼にも上げるかも。
--side日向--
――ピンポーン
「はーい」
何故人はインターホンが鳴ると返事をしてしまうのだろうか。外まで聞こえているわけでもないのに。そんなことを考えながら慌てて玄関へと向かう。時計を見れば約束の時間ピッタリだ。
感心しながらドアを開け、私は新しく友達となった二人を自宅へと迎え入れた。
「こんにちは日向ちゃん!!」
「お招き頂きありがとうございます」
元気に挨拶してくれたのが光ちゃん、礼儀正しい挨拶をしてくれたのが亜咲ちゃんだ。
入学式を終えて一か月と少ししか経っていないこの時期に、しかも二人も同時に転校してくるのは何か事情があっての事だと思ったが、話してみると非常に話しやすく、少し人見知りだと思っている私が仲良くなれるまでに時間を必要としなかったのが印象的だった。
どうやら光ちゃんと亜咲ちゃんの二人は元々知り合いだったようで、基本的にクラスでも一緒に居る事が多い。ただ休み時間は大体どちらか、あるいは両方が居なくなる事が多いのが気にはなっている。クラスに馴染めてないのかなと少し心配だ。
「いらっしゃい、光ちゃん、亜咲ちゃん。来てくれてありがとう」
私も二人に挨拶を返し、家の中へと招く。
「あら、二人がヒナのお友達ね。私は母親の七海要よ。よろしくね」
「おー、お母さんすっごい美人だ!!」
光ちゃんが目を丸くして要お母さんを見ていた。
「ありがとう。ほら三人とも、そんなところで立ってないで早く入りなさい」
「はーい、お邪魔しまーす!!」
「お邪魔します」
要お母さんに先導されるようにリビングへと向かう。
「さてと、じゃあ三人でごゆっくり……と言いたいところだけど、今日はどこかに行く予定とかあるの?」
ソファに腰を下ろした早々に要お母さんから今日の予定を聞かれる。
「特に予定はないけど、少しお話してお昼頃にはこの辺りを案内しようかなって」
事情通のクラスメイトが言っていたが、亜咲ちゃんは私の通う九条学園理事長の娘という事なので、もしかしたらこの辺りにも詳しいかもしれない。一方で光ちゃんの家は数駅離れたところにあるため、学園が提供している寮に住んでいるらしい。
だから今日は光ちゃんのためにも学園周辺を散策しようと思っていた。
「あらそうなのね。もし良ければ、私もみんなを連れて行きたいところがあったのだけれど」
「連れて行きたいところ?」
「ヒナはよく知っているところ、だけどね?」
幼い頃からずっとこの町で暮らしているので、よく知っていると言っても過言ではない。
けれど特別連れて行くようなところとなると、あまり心当たりはなかった。良くて商店街辺りだろうか?
「どうする? 別に無理矢理ってわけじゃないから三人で遊びに行くならそれでも良いけど」
「面白そうだから行ってみたいです!!」
「私は光さんが良いのであればお供します」
どうやら光ちゃんと亜咲ちゃんは乗り気らしい。私もこの二人が反対しないのであれば、要お母さんの提案に乗る事はやぶさかではない。
「ヒナもそれで良い?」
「うん、私は二人が良いなら良いよ」
そう言った私を見て要お母さんはニヤリとしたのが印象的だった。あれ? お母さん、何か悪い事考えてる?
「そう、じゃあ二人とも来たばかりだし、少し休憩してから行きましょうか。そこでお昼も食べれば良いし、私は準備してくるわね」
そう言って要お母さんは少し大きめの鞄を用意し、食材を鞄に詰めたりしていた。
あれ? お昼を食べるって外食って意味じゃないの?
色々と疑問が浮かぶが、せっかく来てくれた二人を放置するわけにもいかないため、お母さんから意識を外し、二人と学園での事を話す。
一時間もしない内に要母さんの準備が出来たようで、私達はコップに残ったオレンジジュースを飲み干し、外に出る準備をする。
「要お母さん、どこに行くの?」
「ふふ、内緒よ」
意味ありげに含み笑いをした要お母さんは、指の先で鍵の着いたキーチェーンをくるくると回していた。あれその鍵って……
見覚えのある鍵を回す要お母さんを見て、どこに行くのか察する事が出来た。
でも何故? という思いが強く、要お母さんに理由を聞いてみようと思ったが、先ほど内緒と言われてしまったし、恐らく答えてはくれないだろう。
「さ、それじゃ行きましょうか」
要お母さんの声を皮切りに、私達はソファから腰を上げた。
――そしてその後訪れた先で、私は思いがけない再会をする事になる。
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