第二話 予想を上回る担当さん(色んな意味で)


 2023年3月27日


『鳩藍様の作品『DUO』がこの度、『推しメン』コンテストに受賞内定しております。おめでとうございます!』


 角川ビーンズ文庫の担当さんから、受賞内定のお知らせがメールで届く。文章から、大変丁寧、かつ元気な方との印象を受けた。


 正直、どんな編集者さんが担当になるか心臓吐きそうなほど不安でしょうがなかったので、程よく砕けつつもきちんとした文体のメールに、大変安堵したのを覚えている。


 受賞の可否を問われたので、当然受賞を選択。2日後の3月29日に、『カクヨム』にて『DUO』が書籍化検討作品に選ばれたと発表される。

 一度電話で打ち合わせをするとのことだったので、お互いの都合の合う日時を調整して一旦やり取りを終えた。


 そして4月4日。約束の時間より10分ほど遅れて担当さんから電話がかかって来る。


『こちらでお約束したにも関わらず、お電話の時間が遅れてしまって大変申し訳ございません』


 ――あ、この担当さん。信用できる方だ。


 電話口での自己紹介と挨拶を終えた後の第一声がこれだったことで、私から担当さんへの好感度は爆上がりした。


 というのも私、誠意のない謝罪をされるのがメチャクチャ嫌いなのである。


 具体的には『何に怒ってるか分からないけど、とりあえず謝れば許してくれるでしょ』な考えが透けて見える謝罪。

(※ただし相手に迷惑をかけた事実を知ってパニックになり「ごめんなさい」を連呼するしか出来なくなった場合を除く)


 自分に非があったことを認めて真摯に謝れる方は、客観的に物事を判断し、他人の気持ちに向き合える誠実な方だと思っているので、この担当さんと巡り会えたことは本っ当に幸運だった。


 さらに言えばこの時点で、私も実はやらかしていた。


「いえ、こちらこそ――メールでお名前を間違えてしまって、申し訳ございません」


 そう。メールを返信する際、最初の一行目に先方の会社名とお名前を書くのだが、ここで私は担当さんの下の名前の漢字を間違えたまま送るという、失礼of失礼をブチかましていたのだ。


 このやらかしに震えていた私に対して、担当さんの反応は予想斜め上を行った。


『あ、本当だ――なんか私の知らない新たな一面を発見していただいたみたいで、嬉しいですね! ありがとうございます!』

「ほわあぁあああ……!!!」


 私の非を責めるどころか、一切の負い目を感じさせずに感謝の言葉を返すという神対応。あまりのホスピタリティに私は天に召されかけた。


 この担当さんとなら間違いなく良い作品が作れる……そう確信していた私に、一体どうして思い至れるだろうか。



 ――担当さんが、とんでもねえドジっ子属性持ちだったということに。




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