第二話 天童羅刹

「ちょっと、ちょっと待ってよ、ねぇなんでなんで」



すたすた歩く私を、一人の男が追いかけてくる



そして、後ろからうるさい声が聞こえてくる、本当に面倒くさい



「ねぇ俺さ、結構頑張ったんだよ、なのにさ、おかしくね?」



後ろから追いかけている男、彼は羅刹



自分を鬼と名乗り、そして、私を助けた人と自称している



かれこれ、一時間くらい逃げても逃げてもついてくる



「ついてくるな、と言いましたよね」



振り向き、男を見て、しっかりとそう言い切る



クソ面倒な粘着野郎がついてこないようにするために



「なんで、なんでよぉ、いいじゃん、別に、命の恩人じゃん」



「はい、あなたは命の恩人です、ありがとうございました」



「では、またどこかで」



私はそう言って、できる限りここから離れるために歩き始める



「いや、いやいや、ちょっとくらい話聞いてよ」



本当にこの男は、毎回毎回、面倒くさい



人の気持ちというものを理解できていないのだろうか



そういえば、彼は鬼か



『鬼』妖魔の一種、かなり強く人型だが、人ではない姿をしている



ちらっと羅刹の方を見る、だが、まったくもって『鬼』ではない



ただの人、顔が整っていて、すらっとしているが



ただの人、妖魔には見えない



「聞く理由がありません、感謝の言葉は述べました」



「では、さようなら」



そう言って、また去る、どうせまた同じような言葉を吐きながら



ついてくるのだろうなと考え、対策を考えるが何も思いつかない



「ちょっと、はぁわかった、じゃあ理由をつけよう」



おっと、攻め方を変えたみたいだ



なるほど、ゴリ押しで決めるつもりはないと



だが、まぁ私が足を止める理由はない



「君が欲しい情報をあげよう、それでどうだ?」



それを聞いて、私の足が止まる



確かに、今の私に足りないのは情報だ



閉鎖的空間で育てられた私には圧倒的に情報が足りない



「どんなことでも?教えてくれるんですか?」



「いいよ、何でも教える、何でも知ってるからね」



何でも知ってるから、何でも教えれるという理論は理解できないが



まぁ教えてくれるのなら、得だ



コイツがついてこなければ、すぐ飲むのだが



「嫌そうだね、なんでそんな嫌がるの?」



「プライドなんて捨てなよ、元々ないんだからさw」



頭の中でカチンと言う音と共に、稲妻が流れる



何かが壊れたような感覚を味わい、割れる



自分が短気だという事は理解している、だが



私が嫌な事は私の力で全て潰す



それを決めたからには、今の発言、見逃すことはできない



「わかりました、なら無理矢理吐かせることにします」



「異能開放 忌鬼怪逃(キキカイトウ)」



そう言って、私は異能を開放した



黒い渦に飲み込まれるような感覚を味わい



怒りがさらに増したような気が下



「おっと、そう来たか」



羅刹が呆気に取られたような表情でこちらを見ている



それが瞳に映った、そして闘いが始まった

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『男女不平等世界で成り上がり』~平穏なソローライフの為の楽園を目指して~ 孤宵 @musubime_koyoi

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