第4話 私の最高の親友たち

 アミーコとは家が近所のために、一緒に帰る。

 家に帰ると、私には小さな親友が待ってる。

 これで寂しさを紛らわしていた。

 

「ただいま」


 挨拶しても、誰もいない。


「パパも、ママもお仕事で泊まり込みなんだ・・・」


 私の家には、誰もいないことが多い。

 パパとママが一緒にいても喧嘩ばかりだから、それなら離婚すればいいのに、と思うことも何度もあった。


 冷蔵庫の中を見ると、にんじんばかりで野菜や肉も魚もない。


「アミーコにおつかいとか、お願いしようかな?」


 私は買い物とかは、誰ががいないとできない。

 何をどのように買うとか、レジのお支払いとかがよくわからないからだ。


 ママには「家で勉強しなさい」と口を酸っぱくして言われるも、私にはあまり勉強の内容が理解できない。


 日常的なサポートすらも、アミーコの力が必要だったりする。

 クラスの女子たちは、私を変わり者扱いをし、敵対視までしてくる。

 自分でも、どうしてそうなったかのかよくわからない。

 最初は仲良くしてくれた友達も学年が上がるとともに、私を変人として見るようになり、友達が減っていった。

 そんな中、アミーコだけは友達を続けてくれた。

 

「私の何がいけないんだろう・・・?」


 私は昔から、空気を読むことが苦手だった。

 担任の先生から「知的障害」を疑われることもあったけれど、ママが断じて先生の意見を受け入れなかった。


 ママもよくわからないけど、私も知的障害というものは聞いたことあっても、よく知らない。

 というか、説明されても理解できない。


 そこから、私の背伸びしなくちゃいけない日々が続き、精神を病み、空想の世界だけが唯一の楽しみとなってしまった。


「うー・・・、勉強とか頑張るのやだな」


 私は数学とか苦手で、中1の問題すらも解くことができない。

 そのために、いちごのキラキラのラメが入ったイラスト入りのドリルで算数をやっていた。

 小学生の算数は、繰り返しやっていくことで、だんだんとできるようになってきた。


 だから、私の勉強する上での楽しみは、算数の問題を解くことになった。


 ちなみに理科も得意で、高校生の理科はわからなくても、中学生の理科はできる。

 中学生の理科も、いちごのイラストが入った参考書でないと、やる気が出ない。


 部屋はよごれている。

 私は、お片付けとかできないし、どのようにやるのか想像もつかない。

 だから、アミーコにやってもらうしかない。


 そこで、足元に誰かとぶつかった。

 ゴキブリかもしれないと、おそるおそる下を見ると白いちごのような白いうさぎにいちご色の赤い瞳を持った、私の親友。

 フレーズだ。


「フレーズ、いつからそこにいたの?

ただいま」


 フレーズは、フランス語で「いちご」という意味でつけた名前だ。

 いちご大好きな私は、何でもいちごにちなんでつけたくなるし、例え話もいちごからだ。

 嫌いな言葉は「脳内お花畑」と「豆腐メンタル」のために「脳内いちご畑」と「いちごメンタル」に変換する。


「もしかして、お腹すいたの?」


 フレーズは喋らないけれど、こちらの言っていることは理解しているし、表情も豊かで何を言いたいか予想しやすい。


「お腹すいた」

 そんなふうに、フレーズが返事をしている気がした。


「にんじんあるけど、そればかりじゃ飽きちゃうだろうし、体によくないよね?」


 買い物に行こう。

 だけど、さすがにフレーズは連れていけない。


 もう1人の親友を連れてくるか。

 彼女の名前は、エアトベーレ。

 赤いいちごの頭巾を深くかぶり、いちご色の瞳を持ち、ピンクのいちごをイメージさせるうさぎのぬいぐるみで、エアトベーレと言う。

 私は、買い物の際に彼女を連れて行ってる。


 だけど、ピンポンというチャイムの音とともに玄関を開けた。

 そこには、アミーコとアミーコの1歳年上である兄のシェンベイ先輩がいた。


「ひさしぶり、タルギちゃん」


「シェンベイ先輩に、アミーコ。

急にどうしたの?」


「実は、同棲していいって言われたんだ」


 シェンベイ先輩が、質問に答えた。


「同棲?」


「タルギちゃんとアミーコが同棲するかどうかの話を実はお互いの親で話していたけど、タルギちゃんは何も聞いてない?」


「聞いてないです・・・」


 そんな話は、一切聞いてない。

 だから、急に言われても戸惑うばかりだった。 


「そうか、たしかタルギちゃんは親とあまりお話とかしないんだよね?」


「しないです、全然しないです」


 ママやパパと最後に会話したのは、いつぐらいだろうか?

 帰って来ても「おかえり」や「ただいま」すらもない。

 他の家庭ではそれが当たり前のようにあるために、私も嫌気がさしてくる。

 なぜ「ママは、私を産んだんだろう?」という疑問しかわかない。


 部屋が汚れていても、ママからは「片付けなさい!」とか「家にいて、何をしていたの!?」と一方的に怒られるだけ。


「担任の先生や児童相談所も、ネグレストを疑ってるみたいだけど、すぐに動けないみたいだな」


 突然、アミーコが話しだした。


「アミーコ、それは言わない約束じゃないか?」


「約束?

それを守ったとしても、タルギのためにならない」


 私がネグレスト?

 そんなことは、考えたこともなかった。

 確かに、担任の先生は何度か家庭訪問してたような、してないような。

 そのたびに、部屋が片付けられなくて、汚れたまま家に入れることになった。

 そこの記憶は、曖昧となっていた。


「冷蔵庫の中とか、担任の先生に見せたんだな?」


「多分」


「これが、虐待として疑われる要因にもなった」


「冷蔵庫の中が?」


「炊飯器とかあるか?」


「ない。

ママが必要ないって」


 他の家庭には、炊飯器や電車レンジやトーストがあるみたいだけど、私の家には必要最小限の物しかない。

 フライパンやお鍋はあるけど、塩やお砂糖もお醤油もない。

 だから、味つけなんてよくわからない。

 ママ曰く「教育費が高くて、家具とかにお金をかけられない」とのこと。


「よくわからないけど、私は虐待されてるの?」


 不安でしか感じない。

 そんな私は、空想の世界で「幸せな世界」を創り出したくなる。

 優しいママがいて、ひどいことしかしないパパは姿を消して、私の理想しか存在しない世界を。


 だけど、それは空想であって、現実のものにならないと実感した今は、精神が崩壊寸前まできていた。


「わかってるさ。

タルギが辛いってこと。

だから、タルギが帰っていい場所を作りたいんだ。

そのために、同居したい・・・」


「うん・・・」


 私は、涙が出た。

 誰もわかってくれないなんてない。

 運命の王子様は、目の前にいる。

 私だけの運命の王子様は、幼なじみのアミーコなんだ。


「私、アミーコのために可愛くなる」


「いいって」


 アミーコが、顔を真っ赤にした。


 その日以来は、私はピンクに髪を染めた。

 アミーコやシェンベイ先輩とそのご両親の同居も決まった。

 地味な私だけど、これからも可愛くなる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私立フラゴラ学園〜私だけの運命の王子様〜 野うさぎ @kadoyomihon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る