第2話 恐怖の始まり
桜と絵美は、手を繋ぎながら例の神社へと歩を進めていた。
道中は、二人で歌などを唄いながら楽しく過ごす。笑顔の絶えない絵美ちゃんの様子は、不安にさせたくないと思っていた桜にとっても嬉しい時間だった。
ゆっくりと流れていく景色は、田園風景の緑から木々のそれへと変わっていく。目的地が近づいてきた証拠だ。
「この道を登っていくと、神社があるんだよ」
桜が指さした先には、森の中へと続いていく細い山道がある。
山道に入る前に、桜は空を見上げて太陽の位置を確認した。
やはり桜の計算通りに日はまだ高く昇っていて、日暮れまでにはまだまだ時間がある。この道に入ってしまうと木々に覆われてしまって太陽の姿は見えなくなってしまうので、念の為に確認したのだ。
この道に入ってから神社までは、確か五分も歩くと着いた
薄暗い山道に足を踏み入れる時はさすがに絵美ちゃんの顔も不安で曇ったが、細い山道を二人で手を繋いでゆっくりと歩いている内にその不安も無くなってきたみたいで、また絵美ちゃんの顔には笑顔が戻りつつある。
子供にとって森の中は、普段は目にすることのない珍しいものが一杯で正に宝の山なのだ。
二人で時々寄り道をしながらも歩いていくと、直ぐに前方に赤い
「あっ!みてみて絵美ちゃん!神社が見えてきたよ!」
桜が笑顔を向けると、絵美ちゃんの顔がパッと明るくなった。
「ほんとうだ!かみさまのおうち、みえてきたね!」
今までは桜が手を引く感じだったのだが、鳥居の姿が見えた途端に絵美ちゃんの足取りが明らかに元気になった。桜の手を引きながら、駆けるような速足だ。
「ととっ……! ふふっ、ちょっと慌てないでよ絵美ちゃん。神様は逃げたりしないから、大丈夫だよ。それより、急いだりして転んで怪我でもしたら大変なんだからね」
そんなことを言いながら、桜は絵美ちゃんの急ぎ足を落ち着かせるのに一苦労だった。そしてあれよあれよという間に赤い鳥居の前までやって来た二人は、ついにその鳥居を見上げている。
「―――絵美ちゃん、ついに此処まで来たね。神様にお参りする準備はいいかな?やり方を教えるから、私の真似してみるといいよ」
「………うん。おねえちゃんとおなじように、わたしやってみる」
絵美ちゃんは緊張しているのか、さっきまでの笑顔が消えていた。きっとお母さんの病気を治したい気持ちが大きくて、心に余裕が無くなっているんだろう。
そんな風に考えた桜は、絵美ちゃんの目線まで顔を落とすと瞳をじっと見つめてニコッと笑ってみせた。
「絵美ちゃん―――ママは、きっと元気になるよ。だって、絵美ちゃんがこんなに頑張ったんだもん。きっと神様に絵美ちゃんの気持ちが届くよ。だから一緒に、神様にお願いしようね」
その言葉が届いたのか、それとも桜の笑顔につられたのか、絵美ちゃんもニッコリ笑顔を返してくれた。それから二人は、しっかりと手を繋いでこの神社の神様に深々と頭を下げたのだった。
・
・
・
・
・
・
お参りは、滞りなく済んだ。
桜が晴れ晴れとした気持ちで神社に一礼すると、隣りにいる絵美ちゃんもペコリとお辞儀をしている。その姿が可愛くって、桜は思わず微笑んでしまった。そんな桜の様子が不思議だったのか、当人の絵美ちゃんはキョトンとした顔を桜に向けている。
「それじゃあ―――お参りも済んだし、お家に帰ろっか」
「うん、おねえちゃんありがとう!これでママ、げんきになるもんね!」
「うん、きっとそうなるよ!」
そして二人が帰路に着こうと登ってきた山道を下り始めた時に、ソイツと出会ったのだ。その姿を道の向こうに認めた時の恐ろしさを、桜は今でも忘れることは出来ない。
その大型の猟犬は地面をクンクンと嗅ぎながら、桜達にゆっくりと近付いて来ていた。そして
三十メートル以上離れた空間を、六つの緊張した視線が交差する。
どちらが最初に動いのか桜は覚えてはいないが、恐らく最初に動いたのはアイツの方だったと思う。大きく一つ吠えた後、ソイツは桜達に向かって駆け寄ってきたのだ。
その姿を見た瞬間に―――桜は絵美ちゃんの手を握って今お参りしてきたばかりの神社の
赤い鳥居を通り抜けて建物の中に駆け込んだ時、ソイツはもう直ぐ後ろまで来ていた。扉を閉める瞬間に目の前で目の当たりにしたソイツの目は血走っていて、犬歯を
慌ててピシャリッ!と引き戸を閉めて鍵を掛けたが、薄い木製の扉とスライド式の簡易な鍵はあまりに頼りなかった。
閉められた扉が大きく揺れてガリガリと嫌な音を立てる。この薄い扉の向こうでアイツに爪を立てられているんだと思うと、桜は心からゾッとした。
「………ッ!! ハァ!ハァ!ハァ!ハァ! な、何なの……アイツ! え、絵美ちゃん!だ、大丈夫!?」
桜にしっかりと抱きついて離さない絵美ちゃんに慌てて顔を向けると、絵美ちゃんは恐怖で固まっていた。扉の向こうをじっと見つめてピクリとも動こうとしない。
「え、絵美ちゃん!怪我とかしてない!?」
声を掛けながら肩を揺すると、ようやく絵美ちゃんはハッとした様に桜の顔に目を向けた。そしてその表情がみるみる泣き顔に変わっていく。
「よしよし………怖かったね。痛いところは無い?」
泣き続ける絵美ちゃんをギュッと抱きしめると、桜は背中を優しくさすった。腕の中でウンウンと頷いている様子から、怪我などはしていない様だ。
……よかった。と、思ったのも束の間、扉の向こうのソイツが大声で吠え始めた。
その
桜は、恐ろしさで気が狂いそうだった。しかし―――きっと小さい絵美ちゃんは、もっと恐ろしいに違い。
それに必死に耐えようと、二人はギュッとお互いを抱きしめ合った。ガタガタと震えることしか出来はしなかったが、桜が何とか自分を保っていられたのは絵美ちゃんを守らなければいけないという使命感があったからだと思う。
―――嵐のような
もしかしたらそれ程長くはない時間だったのかもしれないが、桜にとってのその時間は途方も無く長く感じられた。桜の心身を
虚ろな目で室内を見回すと、障子ごしに差し込んでいる光が
………ああ、夕焼け。
ぼんやりとそんなことを考えながら、
………何だか、世界が血の色に染まったみたい。
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、桜の小さな胸の中にゾワゾワとした不安が押し寄せてくる。
―――暗く、なっちゃう。
―――もうすぐそこまで、夜が来ているんだ。
☆あとがき☆
こんにちわ!🌞、こんばんわ🌙!
今日もこの物語のページを開いて下さり、本当に本当にありがとうございます!
☆と💗を頂きました!
応援ありがとうございます!(*_ _)ペコリ
さて―――
桜と絵美ちゃんに大変なことが起こってしまいました………!
二人の運命やいかに!?(≧◇≦)💦
と、いうことで―――(笑)
☆と💗そして――作品とわたくし虹うた🌈のフォローで、どうか二人の応援をよろしくお願いしま~す!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます