花束を投げた

@fantomusameru

花束を投げた

バサっ

暗い東京の夜、俺は花束を投げた。ねずみは俺を笑っている。いくつもある路地裏の端っこで薄汚い服を着た俺は、声を出さずにも咆哮をしている。誰かに対してじゃない。ただのイラつきだ。殺された花の名はキンセンカ。月にも照らされないお前は美しい。その濃くも目を魅了する黄色は美しいんだ。あの女は確かに可愛かった、だが俺が酷すぎる。まずこうやって人からもらったものを粗末にするからな。改めて、ごめんな。勝手に悲嘆を持たされて殺された花。それとあの女。中身のない反省を抱え、俺は駅へ向かう。


 「飛び込めよ!」


山手線は容赦しない。俺に轢かれて欲しいと叫んでやがる。背中が勝手に俺を線路に押し出そうとする。いつもそうだ、こうやって自分以外のせいにして、本当は自分から行っているのに、それでも嫌だから。

「何が?」

心の誰かが俺に問い詰める。

「・・・」

俺は自分が何に怖がっているのかすら分からない。それほど大きなものに脅かされているのだ。考えたくもないものなんだろう。

おい電車、おりゃどうすればいいんだよ。知ってんだろ、あんたは俺よりも生きている。機械の癖に、俺よりも大事、俺よりも強い。、、、なのにあんたはただ俺にはうるさく自殺を促さす。劣等と嫌味の中、結局電車に乗れた。家に帰ろう。

40分ほどでボロい住処に戻って、酒を飲み、布団に入った。この狭いアパートが、唯一自分を癒して、、、、くれはしない。俺という人間の、負の象徴なのだ。

こんな俺にキスをしてくれたあの女。こんな俺に意味もなく殺されたあの花。本当は俺のせいだ。すべてそうだ、ぜんぶぜんぶ。


夜の冷たい風が窓から吹き込んこんでくる。ひしひしと伝わるその冷たさはやがて布団を貫通してくるが、俺は眠る。

死にはしない、だが過去に遺言を残す。

「俺は花束を投げた」




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