第352話

〜〜 5月3日 京都 清水寺門前駐車場 トラックノ荷台に展開された拠点内 AM11時30分 〜〜


本日は晴天、曇りなし。午前中に特設会場で俺達+赤城さんとのトークイベントを何とかこなした後に清水寺の近くまで移動、事前に用意してもらっていたトラックの荷台に拠点を展開してその中で最終準備に取り掛かっていた。


「…」


「ダンナ、いつにも増して険しい顔をしているですよ…よっぽどあの刀が間に合わなかったのが気に入らない様子ですよ」


「だな、湖の水を3分の1も『消滅』させる威力なのに納得いってねぇみたいだな」


「あらあら、確か『持続時間が短いし威力も低い、やはり中古の寄せ集めだと数が足らなかったか…せめて後15秒は長く威力も湖の半分を消滅させるのが最低ラインだ。また中古品を爆買いしないと…』とか言っていたから間違いなわね♪」


俺は『渡り鳥の正装』一式を着て背中に短距離パイルバンカー+近距離砲撃を内蔵した『炭坑夫の鎮魂歌』、サバイバルナイフ型双魔変異装置の完成系『破国』と弾丸の様に爆発する苦無である『花散』と複数の仕掛けを内蔵する絡繰武器の苦無『陸月』を複数装備していて中庭にてもち丸達と他のメンバー全員を待っていた。

だが、俺の心境は穏やかではない。何故なら叶に渡す筈の刀が未完成のまま今日を迎えてしまったからだ。


(結局叶の切り札となる武器は完成せず、更には俺の追加武器でさえ完成しなかったから代用品で炭坑夫の鎮魂歌を装備する始末…くそ、やはり鎮魂の外骨格をもう一式作るべきだったかな?)


俺はそう思いつつ背中に装備した炭坑夫の鎮魂歌を触る。確かにコイツは俺の前の世界では相棒だったが、今の俺だとちょい長すぎる武器のでありあまり自分の戦闘スタイルと噛み合わない武器になってしまった。前に作った拳の威力を上げる鎮魂の外骨格、あれは前回の騒動みたいに父さんに万が一の事があった場合の自衛手段として今来ている渡り鳥の正装を作り直し、予備の電池数本と一緒にプレゼントしたから新たに作らないとダメだし、チョッパーなどはデカすぎる。ならば忍者刀の鈴虫と考えたがあれは今回は赤城さんに貸し出している。とどのつまり、これしか選択肢がなかった。


「仕方がない。叶の武器を最優先、俺の武器は禁層までに仕上げられたら御の字で考えるか…ほんと、マジでエネルギーをバカ喰いするからその分反動がキツいんだよな」


「そんな戦略兵器を俺に渡そうとしているお前に今俺は驚いてるわ。『筋トレ』や『努力』のスキルを持っている人物でもキツい反動の物をそれらのスキルを持っていない俺に使わせようとしているとか普通に武器を持っている腕が吹き飛ぶだろ」


「感激、久々の帰郷で楽しいです」


俺は取り敢えずコレからのやるべき事を考えつつそう呟くと、丁度建物から出てきた叶と望月が肩車状態で出てきてその言葉に反応する。


「おっす叶に望月。相変わらず仲いいな。後取り敢えず反動云々は気にするな、元々お前の人体総変異か『双魔変異』時のみ使う前提だ。生身では使わないよ」


「いや、それはそれでどうかと思うんだが…」


俺の言葉に少し呆れている叶、そんな叶を見た望月は叶のおでこを肉球で軽くペチペチと叩きながら話す。


「激励、頑張って下さいマスター。最悪使う際は私が変異装置を挿します。尻に」


「ちょいまち、何故お尻限定?」


「できれば女体化していたら更に正確に狙えます」


「オッサンみたいにセクハラ発言するんじゃありません。というか女の子がそんな事を言うんじゃありません!」


望月の言葉に頭を左右に振って望月を怒る叶、そんな叶の動きに合わせて体を動かしてバランスを取りながら笑顔になる望月。


「いや、どれだけ懐いているんですよ望月。まだ名無しの頃は無表情で無口なイメージしかなかった君が今は別人みたいですよ」


「だな、ミステリアスな雰囲気が受けて名無しのイナリやタマモ共にかなりの人気物で告白の相談まで受けていたんだが…こりゃ名付けで隠していた本性が出てきたな、マジで気づかんかったわ」


「あらあら、私的にはこっちの方が素敵だと思うわ。だってあんなに生き生きとしているもの♪」


そんな光景をもち丸達はそれぞれの反応をしつつ見ていた…というか名無し時代の望月ってそんなに今とは真逆の性格をしていたのか…今度その辺をもち丸達に聞いてみてもいいかもしれん。実に楽しそうだ。

そんな中、次に俺達の所に来たのはまるで巫女服の様な姿に関節部にはプロテクターを装備、俺が渡した鈴虫を装備した赤城さんだった…ん?


「あの、『この子達』はどうしましょう?先程偶然会った時に何故か目線が引かれると思ったらこの子達がくっ付いて離れないんですが…」


「運命でござる!天命でござる!これほど惹かれるお方は初めてでござるよ、故にこのお方こそが我が親方様で間違いないでござるよ!!」


「然り!」


しかしそんな赤城さんの巫女服、その赤い袴にがっしりと引っ付いて離れない黒い体毛で勾玉を首に付けた友狐と茶色い体毛で右目と左目の色が違うオッドアイの友狐がいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る