第350話

『龍人化』の進化先である『真・龍人化』を持ち、元龍でもあるので何か知っているかもしれないと姉さんに連絡をしたら、今から数十分くらいで到着するという事だったのでその間に一二三の身に起きた出来事を聞いた。

どうやら岐阜の記録層で千花姉さんに龍人化の状態で瀕死の状態まで追い込んでもらったおかげで、自分の中のナニカに気がついた一二三はそのナニカを引き出す為に特訓と実戦を繰り返していた。しかし1月に入ってから何故か『龍人化』を使うと激痛がまるで間欠泉のように体の内側から湧き出て、全身を巡り完全に制御できない程の痛みに耐えられなくなり、動けない所か意識すら朦朧としてしまうらしい。そしてその痛みは龍人化している間は継続して痛みを味わうが、龍人化を解除すればすぐに痛みは消える、それに気づいたから難を逃れた。しかしそれを体験した日以降からそんな不思議な事が起きる様になってしまった。

最初に気づいた1月は10回に1回の割合で激痛が起こり、2月には5回に1回、3月には2回に1回、そして遂に一週間前からは絶対に龍人化をすると激痛が襲ってくる様になってしまった、だから今は『龍人化』のスキルが完全に使えなくなってしまったらしい。


「一応、配信上では『ダンジョンに行く為の最終調整をしたいから』という理由で龍人化しての配信は今はしていないから世間にはバレていない。それに私のこの状態を皆に言って変な気を回したくなかったし、私自身もすぐに治ると考えていた。でも、まさかこうなるとは予想外だった。今日まで隠していて本当にごめんなさい」


一二三はそう話すと口の周りについたケチャップをティッシュで拭いてから頭を下げる。

確かにこれはまずい、ただでさえ俺は機械鳥を使えないから戦闘力が下がるのにメインアタッカーの一二三が龍人化できないとなると大幅に戦力が低下してしまう。


「ヤバイな…正直これは不味すぎる。姉さんに見てもらって何かアドバイスをもらえればいいんだが…」


俺はそう言って飲むヨーグルトを飲み干す。病気?はたまた第三者からの妨害?色々な事が頭の中で巡る中、俺達は姉さんの到着を待っていた。
















「うん、コレは間違いなくだね。おめでとう一二三」


「成長痛かい!?」


数十分後、姉さんが店に到着した。すぐに俺達は一二三の様子を見る様に伝え、姉さんは一二三に軽い質問を何個かしつつ腕や肩を触ったりして何かを確かめていき、そして何かを確認すると開口一番に変な事を言い出した。思わずツッコミをいれてしまったが大丈夫だろう。


「渉、気持ちは分かるけれどここは店内だからもう少し静かに…ね?」


「渉、いくら私の弟とはいえもう少し周りを見てから声量を考えよう?」


しかし、やはり声が大きかったのか夏美と何故か姉さんに怒られてしまった、事実俺は大声でツッコミを入れてしまったので何も反論はできないのでそのまま黙るしかなかった。そのまま黙っているとアンジーさんが追加の椅子と姉さんが注文したクリームソーダを持ってきてくれたのを見た姉さんはその二つを受け取り、その場に椅子を置いて座るとクリームソーダを片手に持ち、話し始める。


「もちろん、人間の感覚での成長痛じゃないよ。龍としての成長痛…の方さ。とどのつまり一二三の中の龍の力が大人の龍になろうとしているって訳だね」


姉さんはそう言ってから手に持つクリームソーダを一口飲むと話を始めた。

龍の幼少期は力がまだ完全には制御できない存在であり、その為能力を使う際は反動で傷を負ったり能力自体が発動しなかったりとかは日常茶飯事。

だが、実は龍には人生で1回だけ角の生え替わりと同時に成長痛が発生する時期があり、その時期は姉さん曰く『第2次成長期』みたいなもんらしい。


「龍の成長痛は一気に自分の内部の筋肉や内臓が細胞レベルまで変化して龍の特殊能力を完全に使える様にする、だからその能力の反動に耐えられる様に同時に全身の筋肉が一気に変化する。

だけれど一二三の龍の力は全部スキルの中にある、だから普段の人間の時は大丈夫だけれど実際はスキルの中は成長痛の真っ只中。だから『龍人化』を使用した際に肉体が変化するから同時に現在進行形の成長痛も一二三が体験してしまうんだね」


姉さんはそう言ってアンディーさんから一緒に貰ったスプーンを使い、アイスと氷を一緒にすくって食べ始める。


「でも、悪いばかりじゃない。だって成長痛さえ終われば一二三の龍は成体になる…それはつまり一二三の『龍人化』が『真・龍人化』に進化するのと同意、つまり今の一二三は成長痛さえ耐えればもっと強い力を得られるって訳だね」


「「「!?」」」


俺達は姉さんの言葉を聞いて全員がビックリする。前に姉さんが言っていたスキルの進化、それを一二三が後一歩の所まできていたという事実に驚きを隠せなかったからだ。

だからだろう、次の姉さんの呟きを聞き逃してしまったのは。


「…それにしても、いくら元々の才能と戦闘経験、後は私の荒行事でキッカケを掴んだとはいえキッカケを手に入れた期間から成長痛までの期間が短すぎる…多分、あの銀ピカ流星バカが内部から何かしたな?…それだったら一二三の龍はになるかもしれないね?」


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