第349話
〜〜 4月30日 放課後 秋葉原 喫茶『月の兎』〜〜
「…」モグモグモグモグ…
「す、凄い。次々と来る来る料理がものの10秒で消えるように無くなっていく!?」
「ま、初めて見た人は驚くよな…お、新作の和風おろしポン酢ハンバーグもうま!?」
俺達は現在、いつもの場所と化している喫茶『月の兎』にて全員が軽食…いや一二三だけはガチ喰いをしている。
装備と不知火の件があったあの日、俺達〈狩友〉と赤城さんがコラボして京都にある清水寺の舞台ダンジョンを制覇すると発表した。
俺達〈狩友〉の新しいダンジョン攻略、しかもコラボで赤城さんと一緒に特殊ダンジョンを制覇する。しかも今回は考察ありアドバイスありの一部視聴者参加型と来たもんだ、こんな特大なネタのお陰様でネットニュース所か普通に地上波で報道される騒ぎになり、現在京都はダンジョンができる前の京都の様に盛り上がりを取り戻した。
そして今年のゴールデンウィークは5月3日から土日を加えて一週間、すでに京都にはギルドの協力を経て特設会場を設置。後は当日になり俺達がダンジョンに入るだけになった。
そして現在、俺達は最終調整をした新装備が入ったアタッシュケースの受け渡しと最後の話し合いの為に今この喫茶店に来ているわけだ。
「一二三、食いながらでいい。話を聞いてくれるか?」
「…」コクコク
鉄板ナポリタンを食べている一二三にそう言うとただ頷くだけだが、俺は一二三が最終調整の為にカロリーの貯蓄をしているのを知っているのでそのまま軽食を食べる皆を見つつ飲むヨーグルトを手にとる。
「取り敢えず、赤城さん。例のアレは大丈夫だった?」
「…あ、はい。大丈夫です、これを見てください」
そして赤城さんにそう言って飲むヨーグルトを飲むと赤城さんはストロベリーパフェを食べる手を止めて、自分のスマホを取り出し俺達に見せるように画面をこちらに向けた。そのスマホの画面には一枚の写真を表示しており、それはどうやら手紙らしくこう書かれていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1.当主側の代表者は赤城様と叶様、純血派側の代表者は
2.そちらが挑むダンジョンは我々一族の悲願の中から『清水寺の舞台ダンジョン』、我々が挑むダンジョンは『弁慶岩ダンジョン』とする。
3.お互いがダンジョンに挑むのは5月3日、午後1時より開始とする。
4.この儀が終了した場合、これ以降純血派は叶様の一族には金輪際迷惑をかけない事とする。
以上の4つを厳守とし、我々桐城家一族はこの場にて双案血議の儀をとり行う事とする。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…なるほど、確かに。これで後には引けないな叶?」
「元より逃げるつもりは無いよ、だがこれでより気合いが入るってもんだ」
赤城さんのスマホの画面を見て俺と叶はそう話す。スマホの画面に映っているのは赤城さんの家の儀式、その最終的な取り決めをまとめた用紙の写真だ。これにより叶はもう後には引けない、進んでダンジョンを制覇する以外は選択肢がなくなったという事を示す証拠だ。
それを全員が見たので次は俺からの報告を言う。
「取り敢えず俺からの報告を全員聞いてくれ。まず今回のダンジョンの攻略なんだが…俺は機械鳥を使えなくなった。
そのり理由なんだが、実は今回のダンジョンの様子を3台のドローンが追尾して配信と撮影し続ける事になったから機械鳥を使用する際に邪魔になるからだ…まあ、元々夏美とギルドを交えて話し合ったから、機械鳥は自衛隊とダンジョン内で作業するギルドの職員の装備の一つにする為に、技術提供扱いで夏美以外の機械鳥は全部自衛隊とギルドに預ける事になっていたからちょうど良かったがな」
俺はそう言って皆に見える様に3枚の紙を机に置く。
この紙はそれぞれギルドの研究機関、ダンジョン関連の学会、日本全国で見れる超有名テレビ局数社との依頼に関する契約書のコピーだ。
元々機械鳥は夏美が前回のスタンピードの際に余りを各部隊に貸し出した結果、その汎用性を改めて証明した。故に自衛隊とギルドの職員の装備の一つとして技術提供をする事を機体の製作者の俺と中のプログラムをほぼ1人で作った夏美が話し合いの結果、幾らかの技術料とかの複数の条件を提示しそれに同意。機械鳥は夏美以外の全てが5月1日にギルドに預ける事になった。
だが、今回はそれが思わぬ方向に話が進んだ。
何と特殊ダンジョンを2回も制覇し、更に通信ができる特殊ダンジョンに行くという事で俺に特殊ダンジョンの撮影と配信をギルド、学会、複数のテレビ局から依頼されたのだ。勿論俺は配信者みたいな振る舞いはせずにありのまま、全力で制覇を目指すという契約を結んでいるから3つのドローンが常に俺を撮影する事以外何も問題はない。
「だから全員俺達を撮影するドローンが増えてしまうが、俺的にも未来の後輩達の為に俺の武器みたいな危険な奴以外での情報提供は大歓迎だからな。
今は俺達がいきているから良くても、後続が育たないとスタンピードとかに対処できない。その為の行動だ、了承してくれ」
俺がそう言うと全員が頷く、どうやら納得してくれたようだ。そして俺が紙を回収してから座り直すと、次に椅子から立ち上がったのは一二三だった。
「皆、私は今日まで秘密にしていた事を今言いたい」
口の周りがナポリタンのケチャップで汚れていたのだが、真顔でそう話す一二三を見て真面目な話だと俺は思い、聞く体制を整える。
「…実は、今私は何故か『龍人化』のスキルを使っても龍人化できない状態なの。だから今回のダンジョンに関しては龍人化無しで挑まなくちゃいけなくなってしまった、本当にごめんなさい」
一二三の話を聞いた瞬間、俺は急いで姉さんに電話するのだった。正直、大事件である
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