第345話
「室谷製薬社長の愛人の息子…ですか?」
「はい、苗字が違うのは実の息子だけれど世間体を気にした父親が親権を権利を使って認めず、金銭面の援助だけをして他人のフリをしているからだと母から聞いています」
…いや、いきなり室谷製薬とか愛人の子供とか言われても正直俺は何も感じないし、室谷製薬と言われても風邪薬とか作っている会社位しか情報を持っていない。
そんな時、何故か桜が俺の肩に擦り寄ってきた。
「さ、桜さん?どうしたの??」
俺はビックリして桜を見るが、桜は全身を少し震えさせており目も下を向いて瞳孔が動きまくっている。明らかに非常事態だ。
「…桜?」
「渉、動きにくいのは分かるけれど…ゴメン、このままでお願い」
俺が桜の行動に動揺していると松則さんが口を開いた。
「桜さん、すみません。貴方の会社に迷惑をかけ、更には貴方に自分の腹違いの兄である『室谷 一平』と無理矢理結婚させられかけたのは知っています。だから本来であれば室谷製薬の人間が貴方に会いに来るのはあり得ない行為だと理解はしています。
ですが、どうしても貴方と渉さんには話さなきゃいけない事があるんです」
松則さんの言葉を聞いてようやく俺は理解した。桜が夢を諦めかけた事件、その事件の元凶の会社がその室谷製薬であり目の前の人は桜に軽いトラウマを植え付けたあの男の父親の愛人の子供だ。正直理解するのにキチンと説明がないと分からなかったが分かってしまえば対応は決まっている。
「…何しに来た?まさかまた桜とその関係者に何かをするつもりなのか??」
「…っ」
俺は松則さんに殺気混じりの圧をかける。あの男は俺の敵だ。だからその関係者であるならばかなり警戒をしないとまた桜を傷つけかねない。少々荒い対応だが、仲間を傷つけられる事だけは絶対に避けないといけない。
だが、松則さんはビビりながらもゆっくりと口を開き、話し始める。
「…実は…まだ世の中には出回っていない情報なんですが、室谷製薬は6月をもって全ての自社ビルと製薬工場を売りに出します。つまり今年中には絶対に倒産をする方針なんですよ」
「…はい?」
松則さんは俺にそう言って下を向く。
「理由は…俺と母さんを除いた室谷の社長と会長の家族が会社の売り上げや現金化できる物は全て現金化して持ち出し、国外逃亡をしたのが原因です」
「「!?」」
その状態で言った言葉に俺と桜は驚愕する。まさか国外逃亡という言葉が出るとは予想外すぎたからだ。
「いや、何故国外逃亡?何かやばい事がばれたのか!?」
「はい、バレました。取り調べに来た警察とギルドの職員さんの話しによると渉さんが岐阜県にあるブラックマーケットを潰し、施設のデータを手に入れ、それを調べた結果出てきた違法取引の証拠によってですがね」
「…はい?…ブラックマーケットって佐々木家のやつ?…マジで」
「はい、マジです。だからキチンとお話しさせて下さい」
俺が桜の代わりに話を進めるが、そこにあの佐々木家のブラックマーケットの事を切り出されたので固まってしまう。だが、松則さんはそんな俺を見て一から事の経緯を話し出した。
室谷製薬と佐々木家のブラックマーケット、実は裏で繋がっていた。
まず室谷製薬側はブラックマーケットに製薬機械や麻酔などの薬類の販売や借金などで苦しんでいる薬師や医者を斡旋、自社のトラックによるブラックマーケットの商品の一部輸送などをしていた。
ブラックマーケット側は室谷製薬に裏の人間の斡旋や人体実験用の商品の販売、海外の裏ルートに流れた薬の在庫の優先販売などをしていた。
つまりどちらにも利があり、WinWinの関係だった。しかし去年俺が偶然とはいえブラックマーケットを破壊し佐々木の父親と息子は逮捕、元締めのマフィア達はアメリカという国自体を怒らせて壊滅寸前。だから室谷一家はブラックマーケットとの関係がバレる前にできるだけお金を集めてまだ注目されていない隙に国外に逃亡したそうだ。それにより会社には現在余りお金がないらしく、緊急で決められた社長代理の提案により全社員の未払いの給料と退職金の為に会社の残りの資産を全て売り、倒産する事にしたらしい。なお、正規のルートなどでは出国の際に記録に残るらしいので室谷一家は間違いなく裏のコネで国外逃亡をしたらしいので現在行方不明、だから国の機関が徹底的に調べた結果唯一日本に残っていた社長の愛人とその息子の松則さんに取り調べをしたらしい。
「勿論自分は何もしりません。母も薬剤師でしたが何もしりませんでした。何せ時々あの父親が一方的に憂さ晴らしに来るくらいの関係でしたから特に何も話す事も無かったんですよ。いい思い出なんて一つもありません、正直言って嫌いすぎて顔すら見たくありません。
ですが、今回の一件を聞いて取り調べを受けた際にギルドの職員から妙な事を聞かれたんです。それが気になってしまったので今回赤城お嬢様に無理を言って渉さん達に室谷製薬の現在を報告するのと合わせて話を聞く為にこうやって会う事にしたんです」
「…妙な事?」
俺がそう聞き直すと松則さんは親権な顔になる。
「はい、自分はその時ギルドの職員からこう聞かれました。
『
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