第344話

「やっぱりか…」


「やば、その方法を忘れてた。確かにその方法なら私が頭に余分なカロリーを割く必要無いじゃん…普段の配信でも取り入れようかな?」


「つまり一部だけでも視聴者が攻略に参加できる特殊ダンジョンの制覇配信…あらやだ。大量の特ネタしかないからいつも以上の人が見るのは確定、当日の同接数が予想できない…夏美、正直サーバーとか耐えれると思う?私は耐えられないに1票ね」


「ミリア、アタシも同意見。〈狩友〉のネームバリューと実績、更に渉の言った方法は最低でも一週間前に事前告知は必須だし…まだ渡辺さん案件かな?」


俺の言葉に叶、一二三、ミリアさん、夏美が反応する。


「ハハハ、正解だ。当時のオレ達は2人しかいなかった、だから情報と考察できる人が不足していた。

だが、お前達〈狩友〉のメンバーの殆どは配信者だし赤城も配信者だ。配信ができる環境と一工夫で安全圏から考察などをしてくれる人を何百何千何万人と集められる、オレ達には絶対に真似できないお前達の強みだな。だからオレ達夫婦は清水寺のダンジョンを推すのさ、謎さえ解決すれば即次の階層にいける仕様だし、何より儀式には援軍に関しては許可されているし人数の規定もない。援軍を邪魔しようにも何万人規模が日本どけろか世界中に散らばって援護している状況だから妨害はほぼ不可能、大元の配信する為のサーバーを破壊しようにも場所の特定はほぼ不可能で純血派達は手を出せない。完全に積みなんだよ」


「サーバーに負荷を与えて落としたり、偽の情報をコメントで流したりとかは考えれるけれど…そこはギルドとかに任せればいいか。何より特殊ダンジョンの配信なんてD&Vにとっても最高の稼ぎ時だよ。絶対に邪魔されたく無いと思うから本気で対策をする筈だよね」


「…全く、姉様は普段は猪突猛進なのに戦う事に関してはメチャクチャ頭が回るんですから…」


それを見た獅子さんがそう言って最後の竜田揚げを食べる。その姿を見て桜は更に自分の考えを口にして、赤城さんは呆れているのかため息を吐くとお吸い物をまた飲み始めた。


(完全に頭から抜けていた。普通のダンジョンなら謎解きなんて無い、ただダンジョン内にあるポータルを見つけるだけでいい。だが特殊ダンジョンは違う、普通のダンジョンとは根本的に仕様が違うから謎解きは必須。

だから配信できる仕様なら配信してダンジョンの外で見ている視聴者に謎解きを頼むのも一つの手だ…くそ、こんな簡単な事が思いつないなんて…悔しいな)


俺はこの場の全体を見つつそう考えながらお吸い物を飲み終える。

ハッキリ言って完全に盲点だった、だがこれが使えれば確かに謎を一緒に解いてくれる人が沢山増える、しかも実際に戦うのは俺達だから視聴者は安全な場所から俺達とは違う目線で物事を見れるから俺達が気づけなかった事に気づきやすい。改めて考えてもかなりいい作戦だ。


「なら、攻略するのは清水寺の舞台ダンジョンだな…だが、いつダンジョンに挑む?」


俺はお吸い物を飲み終わり、お椀を机に置いてからそう呟く。確かにダンジョンは決まった、だがダンジョンを制覇するには申請がいる。今から書いて提出しても今月はもう無理だろう。だが、余り時間をかけすぎるのも純血派の怒りをかうだけだ。するとそんな呟きを聞いた御宅さんが俺に向かってこう言ってくれた。


「なら、5月のゴールデンウィークなんてどうだい?今年は上手く土日と被るから一週間はあるよ?」


「…いいっすね。ゴールデンウィークなら休みの人も多い、最高ですよ」


御宅さんの言葉に、俺は口角を上げて反応する。確かにゴールデンウィークなら学生である自分達が合法的にダンジョンに挑める期間だし、何よりゴールデンウィークならいつも配信を見ない人も見てくれるかもしれない。更に攻略を手伝ってくれる人が増えると考えたら最高の提案だ。

そんな事を考えていると離れの襖が開き、数人の店員さんが次々と俺達の前に1人用の鍋と鱧のお寿司の定食を並べていく。


「ま、せっかくの料理が来たんだ。話は食べてからでも問題ないだろう?」


「大丈夫、今日は僕達夫婦の奢りだから遠慮なく食べてね」


店員さんが鍋の下の固形燃料に火をつけて、離れから出たのを確認した獅子さん夫婦がそう言って先に寿司を食べ始めたので俺達も改めて料理を食べる。ようやくやる事が決まってきたんだ、後は話を詰めるだけ。だから今はこの鱧料理を堪能する事にしよう。


「あ、一二三ちゃん。実は弟の『鉄ノてつのしん』が君に会いたがってたよ?」


「私は会いたくない。幼馴染だけど未だに私はお腹が空いていたとはいえ騙されて泥団子を食わされた事を恨んでいるから」


訂正、めっちゃ気になる事を一二三と御宅さんが話しだした。



〜〜 その夜 某ホテルにて 〜〜



「渉さんに桜さん、お時間を頂きありがとうございます」


「いえ、別に…」


「…」


鱧料理を堪能し、赤城さん達と別れた俺達は全員で予約していたホテルに一部屋ずつ別れてチェックインをした。明日の朝一の新幹線で名古屋まで行き、お昼の15時には東京に戻る予定で寝る準備をしていたのだが、その夜に俺と桜に用があると赤城さんがとある男性を連れてホテルのフロントに来た。

赤城さんはそのまま俺達と同い年くらいの男性を俺達に合わせると叶に用があると言って叶のいる部屋に連絡をとり、そのままエレベーターに乗って言った。

その為俺と桜は取り敢えずその男性を俺が借りた部屋まで連れて行き、現在三人で対面する型で向かい合っている。


「まず、自己紹介をさせて下さい」


そして、男性が名前を教えてくれた。


「自分は『阪部 松則』と言います。桐条家の桐条家流槍術の門下生の1人です。










そして、室谷製薬社長の『室谷 琢磨』の愛人の子供でもあります」

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