第342話

「…え?…ね、姉様?それ初耳なんですが?」


「だろうな、その時は赤城が小学校の夏休みを使って道場の師範と一緒に嵐山で2週間くらい修行していた時だしな。実はその時に前々から親父から危険だから入るなって言われたから興味本心でダーリンを拉致って突撃したんだよ。流石に後で鍵を破壊して入っていたのがバレてダーリンもろとも怒られたがな」


「ごめんね、赤城ちゃん。僕も拉致られた時は焦ったけれど、その頃はモンスター相手に関節を決める為に沢山のモンスターの全身骨格を学んでいた最中だったから、つい途中からダンジョン巡りを楽しんじゃったんだ♪」


ハハハと笑う獅子さんと申し訳ない顔をしつつ謝る御宅さんを見て頭を抑えて下を向く赤城さんと遠い目で天井を見上げる一二三。

俺だって正直興味本心で6回も特殊ダンジョンに突撃して生きて生還したなんて聞いたら間違いなく一二三や赤城さんみたいな感じのリアクションをとるだろう。何だこの夫婦、やっぱり群馬県は魔境か異世界なんじゃないのか?


「ま、そんな事は今はどうでもいい。今はオレ達の実体験を聞くのが最優先だぜ?」


だが、獅子さんはそんな事お構いなしに話を続けようとしたので俺は急いでスマホを取り出して録音をしようとする。そして同じ事を考えていたのか俺のスマホを獅子さんの前に置いたと同時に夏美と桜のスマホも録音状態で獅子さんの前に置かれる。

獅子さんはそれを見てまた笑顔になるが、すぐに真剣な顔になり、御宅さんの補足も加えて6つのダンジョンの浅層の説明をしてくれた。



⚪︎『金閣寺と銀閣寺』


重力が逆転し、空に向かって落ちるダンジョン。下手したら空に向かって落ちつづけて宇宙に放り出されてしまう。しかし所々に浮遊する島があり、その島をうまく足場すれば助かる。そして、その島の中で一番最後にある島にはポータルがあり、そこまで計算しつつ上に落ちなければならない。。なお、出てくるモンスターは殆どが自爆するモンスターか突進してくるモンスターらしい。




⚪︎『伏見稲荷大社』


全面鏡張りの大迷宮になっているダンジョン。普通に進んだらそのまま一生出られないが、大量にある鏡の中からマジックミラーを探してその鏡を破壊して道を作るとそのまま攻略できる。なお、モンスターは出てこないが一回でもマジックミラー以外の鏡を破壊した場合は強制的に最初からになる。迷宮の出口にそれぞれのポータルと宝箱があるそうだ。そして、モンスターは出ないが迷宮自体が屋内の設定ゆえに時間の感覚もズレるらしい。



⚪︎『二条城』


大量の竹の柱が刺さっている湖のダンジョン。湖に刺さっている竹の柱上しか足場が無く、出てくるモンスターもまたその竹の柱を使い移動する為にほぼ空中戦になる。出てくるモンスターはモモンガみたいな猿や巨大な蚊、湖からはピラニアみたいな魚のモンスターにすごい水圧の水を打ち出してくるテッポウウオみたいな魚のモンスターがいたそうだ。



⚪︎『貴船神社』


大量の屋形船が一定方向に進んでいる大河のようなダンジョン。大量の屋形船の中からポータルを見つけないと最終的には大瀑布に落とされて死亡する。モンスターは出ないが屋形船を飛び移って探すのが面倒だったらしい。



⚪︎『醍醐寺』


大量の鎧武者の格好をした二足歩行のカエルとトカゲが荒野で合戦をしているダンジョン。双方の陣営の総大将が首から下げている勾玉を手に入れ、その後に北の端にある神社まで逃げた後に神社の灯籠にある2つの窪みに勾玉をはめるとポータルがある神社の扉が開く仕様。なお、鉄砲などの火薬を使う武器は無いが和弓やクロスボウ、投石器などの遠距離武器はあるので注意らしい。




「いやエグ!?よく初見で生きてましたね貴方達!」


俺はまだ5つしか聞いていないのに思わずそう叫んでしまう。聞いた限りだと5つのダンジョンが全て初見殺し性能が高すぎる。特に金閣寺と銀閣寺は酷い、一歩間違えれば即死なのに自爆や突進してくるモンスターまでいるのは殺意しかない。


「はは、オレは普段は自負するレベルの猪突猛進だが戦闘時の感と観察力だけは高いからな。初見殺し程度では死なんさ」


「僕もそんな感じだね…でも、今から言う最後の6つ目のダンジョン…清水寺の舞台ダンジョンだけは別だよ。あれだけはどうしても僕達では解決できないダンジョンだからね…」


俺の言葉に笑顔で反応してくれる獅子さんと御宅さんだが、御宅さんが次に言った言葉を気に2人の顔が渋くなる。それと同時にいい匂いが近づいてきて、離れの襖が開き人数分の竜田揚げとお吸い物を店員が持ってきた。その後に流れるように綺麗に全員の前に注文の品を並べるとそのままお辞儀をして外に出て行った。

その後に獅子さんがお吸い物の手にとり、少し飲んだ後にゆっくりと話し出す。


「清水寺の舞台ダンジョン…あれは一言で例えるなら『異常』しかないな」


「異常…ですか?」


獅子さんの言葉に叶が反応する。


「ああ、異常だ。何せ帰還用ポータルと次の階層に行くためのポータルの場所は入ってからすぐに視界内に入る位置にある。

だが、オレとダーリンの全力の攻撃でもびくともしない鉄格子のせいで次の階層に行くポータルには絶対に入れない。

後、何故かんだよ」



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