第339話
「『双案血議の儀』…まさかそれを使ってまで私を他の旧家と結婚させようと?…狂ってる、どれだけの人が血を流し、命をも失いかねないと考えているんですか!?」
「全くだ。オレが家の文献を調べた結果、1854年の純血派の暴走以来だ。あれだけ犠牲者を出してもまだ懲りないらしい」
赤城さんと赤城さんのお父さんが真剣な顔になりならが怒り、周りの人達も真剣な顔をして2人を見ている。しかし俺達は何を言っているのか分からずに周りを見ていると、当主様が口を開いた。
「『双案血議の儀』、コイツは簡単に言えばお互いが代表者を指名して、お互い同意の上で決めた達成可能である条件をお互いの代表者のどちらかが先にクリアーした方の言う事を聞く、こんな感じのルールなんだよ。しかめ勝つ為にお互いが財力、武力、人脈などをフル活用して妨害あり、援軍ありの大乱戦をする。最後にこの儀をしたのが1854年、当時は純血派は鎖国主義で外国人を毛嫌いしていたがその年に日米和親条約が結ばれた事を聞いて暴走、条約により開港した港を焼き討ちする計画を立てた。そしてそれに反発した一族と揉め、双案血議の儀をして何とか純血派を負かす事に成功して鎮圧したんだ。だが、当時の文献だと死者は援軍を入れて約10045人、最後の舞台であったこの屋敷は屍と血で地獄になったらしい。それ以降は純血派の奴らはどんどん減っていて、もうこの儀すら廃れ始めていたんだが…どうやらやっこさんらはまだやる気らしい。しかも紙に書いてあるあちらからの条件についてふざけた事が書いてあった…
「はい、
俺達に双案血議の儀の説明をした後に当主様は真剣な眼差しをしながら赤城さんのお父さんにそう頼む。すると赤城さんのお父さんは更に真剣な顔になり紙を広げて中身を見るとそのまま読み上げていく。
「『我々は本家の跡取りに一番近い赤城様が何処の馬の骨ともわからない奴と婚約をするのを認めない。故に我らは双案血議の儀を此処に宣言する。
我々の要求はただ一つ、〈赤城様が我々の推薦する旧家の男性と結婚する〉事である。
そして此度の儀について我々は『どちらが先にダンジョンの制覇するか』で競いたいと考えている。しかし件の叶なる人物は仮にもダンジョンを制覇した人物である為、我々は公平性を考えて当主様より以下の条件を要求する。
1.代表者は赤城様と件の叶である。
2.そちらが挑むダンジョンは我々一族の悲願の中から選出する。
3.我々が挑むダンジョンについては我々が決める権利を貰う。
以上である。
お互いに悔いのない懸命な判断を期待する。
第25代火雷家当主件桐城家純血派
それと『死ノ
いや、正直に言えば純血派の人の名前の方が気になるが、それよりもちょいちょい気になる所がある。
そんな中、桜が口を開いた。
「あの、『我々一族の悲願』て何ですか?ダンジョンに関わる事何ですか?」
桜がそう言うと、当主様は鋭い目で俺達を見る。
「そいつは話す前にこちらから質問する必要があるな。
お嬢さん、さっきまで京都を観光していたんだろ?…あんたの目には、今の京都はどう見えていた?」
「…えっと、有名なお寺とかが凄くて、流石は観光地として有名だと思いました」
「…そうか」
当主様はそう桜と話すと今度は俺達を見る。
「私はうなぎのきんし丼が気に入った」
「アタシは人力車も悪くないと思った」
「ブレイクダンスを止められて不完全燃焼ね」
「正直あの鰻屋の店員が心配です」
その目線を感じたのか俺以外のメンバーがそれぞれ感想を言う。だが、そんな中で俺だけが内心で納得していた。さっきまでの観光と当主様のこの言葉で俺は自分の中にあった違和感が確信に変わったのだ。だからこそ、俺ははっきりとこう言う。
「今の京都は廃れかけている、それと治安が悪くなりかけていると思いました」
「「「!?」」」
「…ほう」
俺の言葉にこの場にいる全員が俺を凝視し、当主様だけは興味深そうな目線を向ける。だからこそ俺は自分の感想を言葉にする。
「今回人力車て観光をした際に周りを見ましたが、観光地にしては観光客が少なかった。それに観光客も大半が外国人の観光客で日本人はほぼ居ない。その為ゴミのポイ捨てが目立ち、道路脇にゴミが散乱していたので清掃業者が間に合ってないのだと思いました。更に東寺や三十三間堂に行った際も敷地内にも関わらず西洋甲冑を装備した男性やレイピアを装備した女性がいました。あれでは折角の京都の景観が悪くなるのは避けられません。だから外国人はともかく日本人の観光客は来ないのだと思っています。それに…」
俺はそう言って更に真剣な眼差しを当主に向ける。
「これは勝手な感想なんですが…我々は今回の観光で清水寺や金閣寺などの有名な京都の有名な観光地には行っていません。例え外国人が主な観光客であろうがやはり清水寺などは有名ですから観光をするなら観光ルートに組み込む筈です、しかし今回は観光をしなかった。つまりは何か事情があり観光する事ができないと判断したんです。それを感じていたからこそあなた方の『一族の悲願』の言葉で確信しました。間違っていますか?」
「…なるほど、いい観察眼だ。流石は〈狩友〉のリーダーだな」
俺が自分の考えを言い切ると当主様は口角を上げて赤城さんのお父さんに目配せをする。すると赤城さんのお父さんが口を開いた。
「渉さん、貴方の予想は大体当たっています。
現在、京都の観光地の9割にはダンジョンあります。ですからスタンピード対策としてモンスターを狩ってもらわないと京都が滅亡する恐れもある為仕方がなく神社などの敷地内にそういった人達がいます。
それゆえにダンジョンを危険視した教育委員会により現在京都は修学旅行の候補から外されています。勿論旅行会社もそんな危険なダンジョンがある場所を観光をさせたくないのが本音ですので、京都への観光客は激減しており、主に観光に来る人も8割が日本の古い文化を見に来た外国人が占めており、日本人は余り来なくなりました。
そして、我々京都民が1番の問題視をしているのが…現在『清水寺』、『金閣寺と銀閣寺』、『伏見稲荷大社』、『二条城』、『貴船神社』、『醍醐寺』の6つの観光地のダンジョンが特殊ダンジョンの為に国の方針で封鎖している事なんです」
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