第325話 皆でキャンプ×皆でワイワイ=楽しい日々 3

「そんな事より私達2人のお友達を紹介されて下さい。特に私の方はお兄ちゃんにきちんと挨拶をしたいそうなので聴いてあげて下さいね?」


優香さんの言葉にツッコミを入れようとしたが直ぐに優香さんは後ろを振り向き、まず男子の方を一歩前に出す。正直ツッコミたい気持ちはかなりあるが今は抑えるべきだろう。そして、その男子は坊主のように髪の毛はないが日焼けをしていていかにもコワモテなイメージ…


「あっら、やっぱり有名人だけあってイイ男♪一目見ただけで惚れちゃいそうよワ・タ・シ♡」


…とは裏腹にメチャクチャ甲高い声でオネェ系の口調で腰をくねらせるという行為に度肝を抜かれた。


「ワタシの名前はジュリアン…


「本名は菅野 正雄ですよ。ジュリアンではないですね」


…んもう、幽鬼ちゃんったらその名前は禁止よき・ん・し♪…取り敢えず自己紹介を続けるわね、ワタシは優香ちゃんと幽鬼ちゃんとは小学校からの付き合いだけれどもいい子達なのもし知っているし、それにいくら心を読まれたってそれを受け入れるのが漢女オトメの器ってもんよ?

後、ワタシはこの場にいる4人が通っている中学校の生徒会長を勤めているわ。今後ともよろしくね⭐︎」


「…ヤベェ、キナコより濃いオカマが実在したのかよ…」


「ですよ…」


俺ともち丸は余りの衝撃に絶句する。まさかのコワモテフェイスからのオカマキャラ、正直初めてのタイプの人間だから接し方に困ってしまう。


「…取り敢えず渉の代わりに質問いいか?何でそんな性格してるの?」


そんな様子を見た叶が俺の代わりに正雄…ジュリアン?…まあ、正雄でいいか。正雄くんにそう聞いてくれる。


「あら、案外普通の質問にアタシ少しだけビックリしたわ。でもいいわ、答えてあ・げ・る♡

その理由は簡単、ワタシは赤ん坊の頃にゴミ袋に入れられてゴミ捨て場に捨てられていたの、それを発見したのが今の家族のママ。ママはオカマクラブを経営していて、そんなママがゴミを捨てる時にワタシを見つけてくれて、警察に連絡した後に色々と手続きとかをしてからワタシを引き取って育ててくれたの。そして他にもお店で働いている沢山のオネエ様達と毎日一緒に暮らしていた、そんな日々だったら自然とこうなったのよ♪」


「…重くてツッコミが入れずらいな」


腰を蛇のようにくねらせながら笑顔で想像以上に重い話をしだした正雄に叶は困惑した顔を浮かべる。


「ま、別にワタシの事はこれでお終い☆

今は早苗ちゃんの話をしましょ?…早苗ちゃん?…んもう、この子ったらまた緊張して…大丈夫よ、ワタシ人を見る目はママ譲りなのよ?だから渉さんがネットや噂話とかの情報や闘技放送の時みたいに危ない人とかじゃなくて優しい人なのは分かるわ。だから緊張せずに頑張りなさいな♪」 


「はい…」


そんな俺達を見ながららも正雄は未だ優香さん達の後ろにいる女性をキャッキャ言いながら手を掴んで俺達の前に連れてくる。腰まで伸びた茶色の髪を三つ編みにしているが前髪が目を隠している、しかし丸メガネをかけている為目の位置はわかる。幼い顔立ちをしているが中学生の割にはスタイルがいい。しかし多分文化系の人なのだろう、武器を使いモンスターと戦う為の筋肉がある様には見えない。


「あの…剣城 早苗です。はじめまして」


「あ、はい。はじめまして」


彼女が挨拶をしてくれたので俺も挨拶を返すと彼女は俺をじっと見るだけで黙ってしまう。


「…あの、何かありましたか?」


「…すっすみません、ようやく渉さん本人に会えた事に少し感動してました」


「は…はぁ…」


「…」


会話が続かない、だが目線だけはしっかりと俺に向けて離さない。そんな状態が数十秒続くと優香さんが前に出て早苗の肩を叩く。


「お兄ちゃん、この子もジュリアンと同じ私達の幼馴染なんです。それに今日は特にお兄ちゃんに会いたがっていたんですよ?お兄ちゃんに「お父さんを助けてくれてありがとう」って言うためにね」


「…はい?」


俺は優香さんの言葉に頭を傾ける。俺が早苗さんのお父さんを助けた?…正直そんな女性の父親を助けたのであれば記憶に残るはずなのだが…そんな事を考えていると早苗さんが話しかけてきた。


「あの…お父さんの…お父さんの論文を証明していただきありがとうございました!」


「…あ!もしかして大吾さんに特殊ダンジョンが消失する可能性を教えたのってもしかして!?」


「はい、私のお父さんです。渉さんが歌舞伎座の特殊ダンジョンを制覇していただいたお陰で論文が正しいと証明され、お父さんは学会にまた戻れただけではなくその論文を見たギルド本部から正式にギルド専属の研究者として雇っていただき、前の職場よりも給料が上がりました。それに禁層のモンスターの解析や記録層の調査など毎日忙しそうですが楽しそうに働いています。だから、渉さんにはお父さんの研究者としての人生と収入が無くなりこのままでは一家離散の危機だった私達家族まで救っていただきました。本当にありがとうございます」


俺がある事に気がつくと早苗さんはそれを肯定するように頭を下げたので俺は気づいた事が正しいと確信した。俺が大吾さんから受けた依頼は歌舞伎座を取り戻したい大吾さんがある研究者から聞いた論文を信じて出していた依頼だ。だから早苗さんのお父さんがもし大吾さんが研究者なのではとかんがえたのだが、どうやら正解だったようだ。


「あ…いや…俺はただ普通に大吾さんの依頼を受けて、その場の判断でダンジョンの制覇しただけだから、そこまで畏まらなくても…」


「いえ、渉さんには感謝しかありません。だから、もし宜しければ…」


俺が慌てて早苗さんに返事を返すが、早苗さんはゆっくりと顔をあげる。しかし俺を見る目線が先程までとは違う、何かを覚悟したような目線になっていた。














「もし、宜しければ私の全てを使ってくらしゃい!貴方の為なら体さえ惜しくありゃません!!」


俺はその言葉を聞くと同時に首、腹、右足のふとももに激痛が走り、気を失いかける。最後に見たのは黒い笑顔で俺の首に打ち込まれた鎖を引っ張るレイちゃんと怒り顔の夏美、そして目に光りが亡くなった桜だった。

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