第309話
「…はい?…誰?」
「死んでいたお姉ちゃんです」
現在何故か女性が宝箱の中から出てきたと思ったらいきなり姉と名乗り始めました…いや、何でやねん。
「いや、俺には姉はいな…
「渉公認のお姉ちゃんです」
いや、だから…
「お姉ちゃんです」
おい、話を…
「あなたは私の弟です」
…」
「私お姉ちゃん、渉は弟。OK?」
俺は何とか会話をしようとするがこの自称姉はメチャクチャ圧が凄い、自分は俺の姉であるとマジで信じているのか全然引かない。
そんな感じのやり取りをしていると後ろから父さんが近づいてきた。
「き、君。いきなり私の息子の姉を名乗るなんて…何者なんだ!?」
「んっ、渉とほぼ同じ匂い…誰?」
そして父さんが女性に声をかけるとその声に反応して体ごとそちらに振り向く女性。
「私は佐藤 雄二、渉の父親だ。そして私の子供は1人、渉だけだ。なのに何故姉と名乗るんだ?」
「…なるほど、確かにあの時渉と一緒にいた父親だね。なら私のお父さんになるね♪」
だが、父さんが軽く自己紹介をするが女性は意味不明な事を言うと同時に右腕を父さんに差し出す。
「どうも、たった今生まれ変わった渉が認知してくれた正式な姉です。つまり貴方の新しい子供です、できれば認知して下さい。お父さん」
「…私の娘よ!」
「まさかの即落ち2コマみたいな展開になった!?」
その後何故か父さんと女性は固い握手をして父さんは泣き始める展開になり思わずツッコミを入れてしまう。
いや、普通におかしい。家族LOVEな父さんが姉と名乗る女性を認めた…精神攻撃の可能性すらありえる。
「…はっ!?な、何だこの本能で私の子供であると理解させられる感覚は!?」
「いや、間違ってないと思う。生き返り…転生?…まあ、どっちでも良いか。けれどその際に渉の血が付いた服と吹き飛ばした左足、私の前の体の一部を使って作られたのがこの体だから渉の遺伝子が私の中にあるし渉の血がキチンと私にも流れている。
だからお父さんの娘で間違いない、間違ってないから安心してお父さん?」
「情報量過多すぎる!?」
俺は謎のやりとりをしている2人を見て頭に片手を当てて悩み出す。
(いや、取り敢えず整理しよう。今この女性は何で言った?俺の血がついた服と俺の左足、そして前の体の一部を使って体を作っただと?…理解が追いつかないぞ…)
俺は本気で悩みつつも未だ握手している2人を見ていた。しかしそこに叶達が近づいてくる。
「おーい、渉。誰だそのべっぴんさん?」
「宝箱から人が…新しい獣人でしょうかね?」
「…」
叶と渡辺さんはそう言って話しながら歩いてくるが一二三だけは女性をガン見しながら歩いてくる。
「…へぇ、幼いけれど飢えた龍の匂い…お父さん、私の後ろに」
「叶、この子達をお願い」
すると女性は父さんにそう言って手を引っ張り、俺の隣に移動させる。そして一二三もまたスマホで撮影中の叶にニホンカワウソを強引に渡してから一歩前にでる。
「…生まれて15年は経過しているね、でも幼い。だからこそ無知で無謀、同種にあった事が余り無いからこその会えた時の興奮と昂り…闘争本能がいい感じに刺激されている…いいよ、おいで。格上として龍の流儀を教えてあげる」
「…ガァァアッ!」
女性が一二三を見てそう言った瞬間に両腕が腰の位置まで下がり、その手には龍人化した一二三の両手の拳が握られていた。
「「「!?」」」
「うん、やっぱりまだ若い。力の使い方がなっていないし本来の龍の力も使えていないから両腕から微弱な電気を流されるだけで全身が固まる事になっちゃう…でもそれでいい、私も最初はそうだった。だから今からでも自分の龍の力の本質を感じて特訓すれば…ん?…うげ、この子の魂に銀ピカ流星バカが混じってる…最悪。しかもあの負けず嫌いのバカのせいでこの子の闘争本能を更に刺激させられている…だから全身が固められてもこんなに殺意が剥き出しなのか…なら、あのバカもろとも魂で分からせるしかないね」
女性は龍人化した一二三に対して優しく接するが何かに気づいたらしく苦い顔をしてから一二三を真上に放り投げる。
「私が貴方にキッカケをあげる。本当の龍の力の引き出し方って奴をね」
そう言うと女性の髪が徐々に伸びていき、頭から見たことある角と尻尾が生え、手や足はは赤い鱗と甲殻に覆われ、そして伸びた髪が重量に逆らいながら真上にのびて一塊になると見覚えある龍の頭になった。
「緋…雷神龍!?」
「死なないように加減はする、だから今は死と生の狭間で自分の中に眠る本来の龍の力の一端を全力で掴め。後、その子の中にいる流星バカは今は黙ってその子が強くなるのを見ていろ。それともまた電磁砲を喰らって空から落とされた後に砂鉄で全身を関節ごとに細かく切り刻まれたいの?」
俺は女性の全身と髪でできた緋雷神龍の頭を見て思わず絶句する。
だが、真上に放り投げられた一二三はそのまま落下して髪の毛でできた龍の口が開くとその中に落ちるように入り、女性は右腕を前に伸ばす
「『雷鳴の繭』」
女性はそう呟いてから右腕で指を鳴らすと同時に髪の毛でできた龍の口の中から大量の電気と光が漏れ出る。
それが数十秒続いた後に塊になっていた髪の毛は地面におりて、そのまま下の長さに戻ると同時に女性も元の姿に戻る。
そして髪の毛でできた龍の頭が降りた床には頭がアフロになり全身黒焦げになった一二三が大の字で倒れていた。
「…手加減アリと私のギャグ補正がなかったら死んでた…でも、そうか。コレが私の中に燻っていた力か…面白い!」
「うんうん、いい感じに掴めたみたいだね。やっぱり龍の力の自覚には死にかけになるのが1番手っ取り早いよね。私も電子砲を初めて使えた時は若い頃にあの忌々しい龍すら食べる大木の琥珀に囚われた時だったもんね。腹が減っていて死にかけたけれどその時に直感で口に砂鉄を集めてからノリで電子砲を撃って、盾にした琥珀に囚われた黒色のトカゲの腕ごと大木に穴を貫通させて怯ませてから赤い雷を落として大木を縦に割って勝ちを手にしたのはいい思い出だよ♪」
どうやら一二三は意識はハッキリとあるらしく黒焦げになりながらもどこかスッキリした顔で何かを確信していて、女性はそれを見て頷きながら何かを確信していた。
そんな女性に俺は近づき、声をかける。
「…もしかしてだけど…緋雷神龍…いや、姉さん?」
俺がそう聞くとその女性は未だ立っている緋雷神龍の前まで歩き、その後にこちらへ振り向いた。
「流石に私も死んでから少しだけ残った意識と気合いでどうにかしようとして、まさかこうなるとは予想外だったけれど…寧ろ結果オーライだね」
「それじゃあ…やっぱり貴方は…」
俺の言葉に笑顔で俺を見る女性。
「うん、私は元々後ろの緋雷神龍だった存在。渉のお姉ちゃんになる為に気合いを入れてもがいてたら偶然君の宝箱から人間として生まれたんだ。
因みに私は貴方の左足から遺伝子を、服から血液を貰い左腕から肉体を一から作られたみたいだから渉とは間違いなく血が繋がっているし遺伝子も同じだよ。しかも年齢は遺伝子の元である渉と同い年だ、つまり名実共に私はあなたのお姉ちゃんになったからそこら辺よろしくね♪」
そう言うと俺に向かって走り出し抱きつく女性…いや、姉さん。
(いや、まさかあの場で否定するのは何となく変だと感じたからノリとその時のテンションで姉さんと言ったのがここにきて回収されるとは…!?)
俺は身長差でもろ息苦しい事になってはいるがそんな時でも今回のこの展開についてそう思ってしまう。まさかあの時のやり取りがフラグになって回収されるなんて予想できるはずがない、そもそも宝箱から出てくる事自体信じられない事だ。
「…あ。そう言えば私、名前が無い。苗字は佐藤で確定だけれどコレでは人になったのに私個人の事を表したりできないからダメだ…父さん、名前を頂戴」
「任せろ娘よ、渉がまだ性別がはっきりしない時に風香と考えた名前が幾つかある。ダンジョンから出たらリストにまとめる、その中から好きな名前を選ぶといい」
「おっふ、完全に父さんが家族認定したよ…もう色々とダメだなコレ。完全に俺の姉になっちゃったよこの龍…いやこの人」
俺はそう言って何とか上を見る。そこには満面の笑顔でこちらを見ている姉さん(本物)しか見えないのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます