第308話

「なるほど、コレが渉が言っていた宝箱が呼ぶ声ってやつか…確かに呼ばれた感じがして、それぞれ迷いなくバラバラに1つの箱の前に並んだな」


「うん、ウチも初めての感覚で困惑したけど…直感でこの箱の前に来ましたからね」


宝箱に呼ばれる感覚が始めての父さん達のセリフを聞きつつ俺はまず石像…いや、石像が持っている左足を見る。


「…うん、これ俺の左足だ。装備の靴も履いているし間違いないな」


少しの間、その足を見た俺はそして俺はその足が間違いなく俺が緋雷神龍のレールガンに吹き飛ばされた左足であるのが理解できた。


「自分の失った足を間近で見る…まあ、別の足が生えたからもういらない…いらないのか?…判断に困るな」


俺は正直あの足を拠点に回収するか悩んでいる、ぶっちゃけ回収しないと下手したら変な人に回収されて研究材料にされかねん。だが新しい左足が生えた今、今更あの足を回収しても使い道がない…


「まあ、後で回収して火葬なりで処理するか…」


俺はそう言って宝箱の方を一回見てから何かに気づいて周りを見る。


「そう言えば桜達が離れて見ている為のドローンは何処だ?」


俺はそう言ってドローンを探す、すると渡辺さんがこの質問に答えてくれた。


「ああ、それはダンジョンの仕様に引っかかっちゃって入って来れなかったんだね。確か使っていたのは自衛隊が使うの偵察用ドローン、遠隔操作のタイプだからコレばっかりはタイミングがずれたんだと思う、運が悪かったね桜ちゃん達は」


「…仕様?」


「うん、ドローンとかの機械類はダンジョンに入る際に入る人のすぐ近くにいないとダンジョンの入り口で弾かれてダンジョン内に入れない仕様なんだよね。でもダンジョン内で次の階層に行く際は普通にドローン単体でも次の階層に行けるから入り口だけの仕様みたい。後、ドローを使ってそういった事をする場合はバッテリーやドローンの遠隔操作などの問題があるから滅多にそれをやる人はいないけれどね?」


俺の疑問に素直に渡辺さんはそう答えてくれた。

俺はそれを聞いて納得したので取り敢えず目の前の宝箱を開ける為に今度は父さんに話しかける。


「取り敢えず今は宝箱の方が先だな。父さん、俺は最後でいいから先に宝箱を開けて。次は渡辺さんね」


「あ、ああ…わかった」


「りょ、了解」


俺がそう言って父さん達を急かすとまず先に父さんが宝箱を開ける。そして例の光の玉が父さんの上腕二頭筋辺りから体にに吸い込まれ、そして父さんは宝箱の中身を見た、


「ほう、これは…」


父さんは中身を見てそう呟くと両腕を宝箱の中に突っ込み、中の物を取り出した。その直後に箱は砕けて壊れるが父さんは構わずその絵を俺達に見せてくる。


「…綺麗な額縁に入った『石を割る人の絵』…ですか?」


「ああ、石を割る農夫の格好をした人達の絵だな…ん?木の額縁に金属プレートが付いているな、プレートに掘ってある字はポーランド語か?…うん、一応読める。だが…誰だ?持ち主の名前か?」


その絵は額縁に入った白人の若い男性が書かれている肖像画だった…のだが、父さんがギュスターヴ・クールベと言う名前を言ったのを聞いた俺は今とてつもない嫌な予感を感じていた…が、『努力』のスキルを使っても何も思い出せない、だから外に出て確認するしか方法がない。


「雄二さんは絵だけですね…なら次はウチです」


そんな中、渡辺さんがそう言うと勢いよく箱を開ける。例の光は渡辺さんの太ももに入り、それを見た渡辺さんは次に箱の中身を見て目を丸くする。


「…冗談でしょ?」


そう言って渡辺さんは両手を中身を取り出す、取り出したのは右腕には赤色のポーションが一つ。もう一つは…


『『『キュ〜』』』


「ニホンカワウソ…4匹いますね」


以前一二三が宝箱から取り出したニホンカワウソ、それが今回4匹も入った竹の籠を重そうに震えながら左手に持っていたのだ。


「…おっふ」


俺はそれを見て思わず吹いてしまう、まさか更にニホンカワウソが見つかるとは…あ、前に桜がニホンオオカミを追加で手に入れたから前例はあるのか…いや絶滅した動物が更に見つかったのは普通に重大案件か。普通に感覚が麻痺してた。


「渡辺さん、生きている生物は渉の拠点に回収できないから一旦私が預かる、渡してカモン」


「あ、はい。どうぞ」


そんな中一二三が渡辺さんの元に駆け寄るとそう声をかけてニホンカワウソ達を預かり、


「あの…雄二さん。その絵は今すぐに渉に回収してもらって厳重管理してもらった方がいいですよ… ギュスターヴ・クールベ、その名前が俺が知っている人の名前ならとんっでもない絵ですよそれ」


「…本当かい?」


「はい、間違いなく渉が持つ2番目ゴッホの向日葵と同等レベルの品物っす」


そして、一緒に近づいてきたであろう叶は父さんの持つ手を震える指でさしながら俺に回収するようにアドバイスをしていた。

…というか、あの絵はそんなにヤバい絵なのかよ。本当に何だあの絵は?


「渉、すまんが預かっていてくれ。私は渡辺さんと一緒に一歩下がって見たほうがいいと叶くん達に言われてね?それに従いたいんだ」


「今までのお前の宝箱の中身のヤバさは俺達の比じゃないからな、絶対今回もヤバい筈だし雄二さん達と一緒に下がっている方が安全に守れる、酷いことを言っているのは承知だが安全の為だ」


俺が絵について真剣に考え始めた…のだがその途中で叶がそう言ってくる。

確かにその提案は間違っていない、ゴッホの向日葵に始まり4つのシルバーリングとニホンオオカミの番1組、そして赤色のポーション2本に獣人4人ときている。次がどんなトンデモが出てきても可笑しくはない、なら父さん達を少し下がらせるのは正解だ。何か問題があってからじゃ遅いからな。


「確かに叶の言い分はヒデェ…でも筋は通ってる。だから何かあったら父さん達を頼む」


「了解、いつでも琥珀を使える様に構えておくよ。後、遅いかもだけどお前の宝箱だけでもビデオ撮影しておくわ」


俺は叶にそうお願いすると叶は自分の人体総変異装置である短刀を右手に、左手にスマホを持ちながら返事をして、父さんと一緒に少し離れた位置に移動してスマホをこちらに向ける。それを見た一二三もまた籠を持ちつつも渡辺さんと一緒に叶達の方に歩いて向かい、合流してから全員がこちらを向く。

俺はそれを見てから自分の宝箱の前に移動して、蓋に手をかける。


「鬼が出るか蛇が出るか…頼むから許容範囲内の奴で頼む」


俺はそう言って蓋を開けた。


「はい!?」


しかし、蓋を開けたにも関わらず虹色に光る球体や赤く光る三角錐も出てこない。それどころか開けた瞬間にいきなり赤い液体が触手のように三本伸びたかと思うと蓋を持っていた俺を押して宝箱から離れさせながらそれぞれ違うものに絡みつく。

一本目は石像が持っていた俺の左足。

二本目は血まみれになったから脱いだ俺の私服。

三本目は緋雷神龍の狩りの最中に吹き飛ばして分離させた左手。

それぞれがしっかりと絡みつくと同時にそれが一気に引っ張られて宝箱の中に質量をガン無視して入り、勝手に蓋が閉じる。


「…え?」


俺は一瞬の出来事だったので反応できずにその場で立ち止まり変な声を出すと、閉じた宝箱がガタガタと震えだし、そしていきなり蓋が開いたと同時に中から何かが出てきた。


「…」


それは身長が180cmくらい、赤色の長髪ロングで一部が編み込みになっており毛先が白い。

可愛い系の顔に垂れ目で服装はは髪と同じ赤いワンピースを着ているが靴などは履いていない。そしてワンピース越しでも分かるくらいに出ているところは出ていて引っ込んでいる所は引っ込んでいる…いや、胸だけは豊満の言葉が1番似合うと思う。

そんな彼女の垂れ目がゆっくりと開くと同時に俺の目の前にが出現、いきなり喉にそれが刺さると俺の体に溶けて消えた。


「…」


俺はあまりに変な事がおきすぎて処理落ち気味になるが宝箱の中から出てきた女性は周りを見てから俺を見ると同時に笑顔になりながら俺の前に歩いてくる。

そして俺の前まで歩いてきて両手を俺に伸ばし、開口一番…












「渉、今お姉ちゃんが死の世界から気合いで生き返ったよ。だからいっぱい甘えてもいいよ、それともまた戦う?」


超弩級の爆弾を落としてきやがった。

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