第307話

〜〜 佐々木家跡地 〜〜



俺と父さんにとって因縁の場所になったこの場所、地下の施設が爆発して地面に亀裂や穴などが所々にあり基礎工事をしなおしても絶対に住めない場所とかしてしまった佐々木の屋敷。しかしその一角だけまるでくり抜いた様に屋根は無いがそれ以外は無傷の部屋が存在していた。

現在俺はその部屋にて…


「『…俺はいつ発電機になったんだろうか…』」


私服姿で双魔変異装置無しの人体総変異をしてから白い石板に赤い雷を吸収させている。


「仕方がないぞ渉、この土地はこの場所を含めた一部以外は土地自体をコンクリとかで固めないと人が入ったら大変危険らしいしな。だから何も対策していない現状だと発電機とかもこの部屋に運べない、だからこうするしかないんだとよ」


「よ、流石は人間発電機。今日も赤い雷が眩しいね」


「『…一二三はしばらく昆虫食オンリーな』」


「ヒドッ!?私は昆虫食だけは食べられないよ、せめて調理前のモンスターで勘弁して!」


そんな俺の近くには替えの着替えを持った叶に一二三、父さんと渡辺さんがいて俺の事を見ている。

なぜこのような感じになっているのかと言えば現在この場所が地下の施設の爆発のせいで地面が非常に危ない状況になっていて、特にこの屋敷内の土地はこの場所と駐車場などの一部以外は殆ど立ち入り禁止の場所になっているからだ。

だから非常時に地面を琥珀で固められる叶と身体能力に優れ、いざって時には避難誘導などの救護活動ができると判断された一二三、それと今回ダンジョンに入っていた俺と父さんと渡辺さん以外は外の駐車場でこちらの様子をドローンで見ている形になっている。

因みにこの部屋は実は佐々木の父親の部屋だったりする。発見当時はダンジョンの石板ギリギリに植物状態の父親が布団で寝ていて自衛隊員達は心底驚いたそうだ。


「『…ん?…お、ようやく光り始めたな。そろそろ行けるかな?』」


そんな事を考えていると白色の石板が光り始め、足元からいつもの浮遊感が徐々に感じ始めてくる…というか、この特殊ダンジョンも歌舞伎座の時の記録層みたいにエネルギーが無くて転移できない状態だったから…もしかしたら他の特殊ダンジョンもこんな感じなのかもしれない。


「『もう発電機役はゴメンだぞ…』」


俺がそう呟くと同時に一気に浮遊感が強まり、そして俺の意識は暗転した。




〜〜 ???ダンジョン 記録層 〜〜



「ウップ…ウブァ!?」


俺は意識がハッキリとしてきたと同時に倒れ、吐血する…はい、いつもの副作用です。

だって今回の場合双魔変異装置を使わない初期型の人体総変異で充電していたからこうなるのは当たり前だ、理由として双魔変異装置を使った人体総変異改だと確かに効果時間が一時間もあるし副作用も小さい、だが1時間以内に充電ができなかった場合再使用には一日かかる。つまり失敗したらそれで一日が終わる。

だが、初期型なら効果時間が5分なのだが再使用が15分になる。つまり細かく調整できる点でこちらを使ったのだ…とどのつまり俺のはんだんによる自業自得である。


「うわぁ…この副作用を見慣れてきた俺にドン引き」


「何言ってるの叶?早く渉に新しい着替えと濡れタオルを渡して、私は回復薬を打つから」


そんな状態の俺を見て叶は何故か遠い目をしているが、そんな叶を一二三が呆れながら指示をしながら俺に回復薬βを使ってくれた。


「…助かった、ありがとう」


「うん、なら早く新しい変身の装置の改良をして再使用できる時間を短縮できるように努力すべきだね。やっぱり5分で回復薬を一本消費はコストが高すぎるし使い勝手最悪」


「だな…ほい、替えの服とタオル。あと水と袋な」


俺は薬が効いてきたのを実感するとゆっくりと立ち上がり、2人にお礼を言いながら着替えなどを受け取ってまずは濡れタオルで顔などをふき始める。なお、


「あ…ありがとうございます、雄二さん…まだこの感覚に慣れてなくて…///」


「いえ、女性を安心させる事は男として当然ですからね。コレくらいならいつでも大丈夫ですよ」


その時に視界の端で何故か父さんは渡辺さんに抱きつかれて甘酸っぱい雰囲気を展開していた。推測だが渡辺さんが未だダンジョンの転移に慣れておらず父さんに抱きついた…感じだと思うのだが…見てて口の中が砂糖のように甘くなるのを感じた。口の中は吐血したから血の味しか感じないはずなのに実に不思議である。

だから俺は渡された水の入ったペットボトルと黒色のビニール袋を使い口を中をスッキリさせ、今着ている上着を脱ぎながら周りを見て今何処にいるのかを判断する事にした。


「…あらら、今回はこんな感じか」


俺はそう言って新しい上着を着る、現在俺達がいるのは大聖堂らしき巨大な建物の中で、現在俺が座っているのはその建物の大理石の様な綺麗な石の床の上だ。

そして周りの壁には絵画が綺麗な額縁で飾られていて、その中の絵は間違いなく今回のダンジョンの出来事が描かれている。そんな絵が何十枚もあるがパッと見た感じ深層での夢の中の絵はない、ただエイセンに乗りながら寝ている絵だけだ。恐らくそこまではダンジョンでも表現できなかったのだろう。

次に大聖堂の中心、そこには緋雷神龍の死体が立ったままの状態で鎮座しており、その近くには『見覚えある靴を履いた左足』を持った女の人を模した石像。そしてその石像の前には3つの宝箱らしき木でできた箱が置かれていた。


《… ……… …》


その木箱を見た瞬間に俺の脳内にまた例の宝箱が呼ぶ声が聞こえてきて、俺と父さんと渡辺さんはその声に導かれる様に動きだす。そしてそれぞれバラバラに1つの木箱の前に立ったのだった。

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