第306話

〜〜 次の日 〜〜



〈…以上が今アメリカで起きた出来事を纏めた映像です、続いて…〉


「…マジか」


恵那峡SAのフードコート、そこで両脇と真正面に陣取っている肌がメチャクチャツヤツヤしている桜、夏美、レイちゃんと一緒に朝食を食べていた絶対三人に何かを吸われたであろうがそれが分からない、だが間違いなく全体的にゲッソリしている俺はそこにあったテレビを見つつそう呟く。


「コレが昨日渡辺さんが言っていた事か…そら、間違いなくは怒るわな…」


俺はそう言って自衛隊の人が持ってきてくれた朝食を食べる。

現在の状況として父さんは佐々木と一緒に今後の事を話しているし、一二三と叶と望月は名古屋で大須に行きたいだのひつまぶしや味噌カツを食べようかと話しているし、ミリアさんはもち丸達のブラッシングをしてあげている。だが、普通なら翔太が昨日言っていたようにマフィア達が資金源の一つを潰されて報復に来るのでさっさと岐阜から色々と安全な東京に移動する所だが…その必要が今朝なくなった。

何故なら現在アメリカでは今回関わっていた全てのマフィアが大統領命令で根こそぎ狩られ始め、更に怒り狂った市民とその騒動に乗じて勢力を広げようとしているギャングや他のマフィアなどの裏の組織とかからも徹底的に拘束&警察機構に連れて行かれている…とどのつまり表でも裏でも完全に根絶やしにされる側になり他国にも逃げる事はおろか連絡も取れない状況になったからだ。

何故そんな事になったのかと言えば…簡単に説明すればマフィア達が父さんに手を出したからだ。

現在アメリカでは狂犬病が国民病レベルで深刻な問題になっている。

理由として一部ダンジョンで狂犬病ウイルスがモンスターに感染、そしてそれが階層全体に広がってとんでもない事になったからだ。だが、1番厄介なのはそれが普通のダンジョンでありキチンとモンスターを間引かないとスタンピードを起こす、それはつまり狂犬病に感染したモンスターを定期的に狩らねばスタンピードが起こり、その起きた地域の殆どが狂犬病ウイルスによって地獄絵図になってしまうからだ。

だから今のアメリカはどうしても定期的に狂犬病患者を出してしまう状況だ…いや、正確にはだったと言えるな。


「まさかこんな所で父さんの製薬技術が生かされるとは予想外だわ」


「だね、ボクも予想外だよ。でも、お陰で今回は助かったね♪」


俺はそう呟くとお茶を飲み、桜は俺に笑顔を見せてくれる。

そう、実は一年くらい前に父さんがそんなアメリカに対して回復薬βをベースにして狂犬病の特効薬を作り出して、国際組織を通じて治験を要請していたのだ。

その際の治験は今年の7月までに4回に分けて実施され、その時に作った治験用の薬は約4000万個。

そして治験結果は治験に参加した人と感染したモンスター以外の動物が同じ薬で全員見事に完治するという感じに大成功を納め、無事日本で製造されてからアメリカを中心に薬を全世界に売り出す予定と製造ラインが作られていた。

そんな中でアメリカの中にある複数のマフィアなどが父さんに危害をくわえてしまったのだ…そりゃ、特効薬を流通させて国内のダンジョン市場の安定化及び活性化を狙っていた現アメリカ大統領は激怒した。もしこの件で日本との関係が悪くなればせっかく父さんが作った特効薬や回復薬α、モンスターの各種素材やMB〈O〉などが手に入りにくくなってしまう可能性がある。そう判断した現アメリカ大統領であるアーノルド大統領は緊急会見を開き、全世界に今回関わった全ての組織を名指ししてからアメリカの総力をあげて根絶やしにすると宣言。

その緊急会見を見た治験で狂犬病を完治できた人達だけではなくスタンピード対策をしていた軍人達や囚人達、これを機に日本と更に親密になってモンスターの素材を流通させようとしていた人達が束になって激怒し、軍や警察に混じって組織の人間を捕まえるという騒動がアメリカ全土で発生。

更にその組織達のせいで今まで稼ぎが悪かったギャングや他のマフィアも勢力権拡大や資金源を奪うなどの自分達の利益目的だが軍隊や警察組織とは利害関係は一致していると判断して一緒に組織を潰しているという表も裏も無い完全な根絶やし祭りが生まれてしまったのだ。


「…こりゃ、翔太の野郎は今頃頭を抱えてるだろうな…後ろ盾になっていたマフィア達は完全にアメリカという国そのものを怒らせたようなもんだし、骨も残らんだろう」


俺はそう言いつつ頭の中で昨日の翔太がびびっていた時の顔を思い出した。

確かに翔太の後ろ盾は強力だったかもしれない、だが今回は父さんの後ろ盾の方が強かった…たったそれだけの違いでアイツは最後の強みを失ったのだ。正直いい気味だと思う。


「渉くん、ちょいごめん。そろそろ例の時間が近いから急いで食べて?」


そんな事を考えていると渡辺さんがオフモードで話しかけてくる。


「あ、はい。今すぐに」


俺はそれを聞くと急いで朝食を食べていく、何せこの後佐々木の自宅の一室に現れた記録層に行く白いポータルの所に行く事になっている。

だから急いで朝食を食べていたのだが、その時に俺はまたヨーグルトが気管支に入ってしまい咽せてしまったのだった。

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