第300話

〜〜 佐々木邸 地下 〜〜



「…渉!?」


「だっダンナ!?」


「渉さん!?」


気がつくと俺に何かが入ってくる感覚があり、聞き覚えがある声が聞こえてくる。


「…ああ、戻ってきたのか」


し俺はそう言うと強烈な空腹に襲われ始める。俺は急いで目を開けて声の聞こえた方を見た。


「…父さん、食べ物…預けていた大豆バーを頂戴?」


「分かった、分かったから絶対に動くな!」


俺は口面の口を開きつつ父さんに預けておいた食べ物を要求する俺、この空腹は少しカロリーのある食べ物を食べれば治るからいいのだが何故か父さんがメチャクチャ焦っていて、多分俺に使ったであろう回復薬βの注射器をしまいつつ涙目でアイテムポーチの中を探っている。


「ダンナ…足が、左足が!」


そんな中、もち丸が泣きながら俺の左足の太ももにのしかかる。因みにその左足は太ももから先が無い、レールガンに撃たれて吹き飛んだ後に傷口は回復したが生えていない状態のままになっている。


「気にすんなもち丸、必要だった怪我だ。それに片足なら赤色のポーションを飲めばまた生える、最悪義足をつければ解決するよ」


「ダンナ…」


「だから気にするな、俺はお前が言い付け通りに父さん達を守ってくれた事の方が嬉しいんだ。ありがとう、もち丸」


俺はそう言って未だ涙を流すもち丸の頭を撫でる。すると父さんが預けていた大豆バーを俺に差し出してきた。


「無茶しすぎだ…本当に…!」


「…ごめん」


俺はそう言って涙目で震えている父さんから大豆バーを受け取り食べ始める。その際に周りを見たが…


「ングッ…木の枠がはめられているが…古い独房かここ?」


「ですよ、でも真上に青空が見えるですよ?」


今いるのは古い独房のような場所だった。ただ上を見れば丸くくり抜かれたような大きく綺麗な穴があり、そこから青空が見える。


「おそらく、落とされた場所が地下…つまり独房の中に落とされたのでしょう。そして…


「ご明察、ダンジョンが消えてその際に穴が空いたのさ。おかげで閉じ込めていた場所が空から丸見えだぜ…久しぶりのお日様の光だ」


…!?」


渡辺さんが何かを話そうとした…が、それは向かいの独房にいた何者かによってさいぎられた。俺達は全員でそちらを見ると、そこに居たのは信じられない人物であった。










「佐々木…翔太!?」


「よう、雄二。…久しぶり、最後に会ったのはの時だったな。

そしてスマン。俺がの暴走を止められなかったばっかりに迷惑をかけたな…」


そこにいたのは俺達をダンジョンに落とし、スタンピードを意図的に発生させた人物として考えていた佐々木 翔太だった。ただ、髪は染めているのか金髪であるが無尽蔵に長髪になっているし、何より全身ボロボロの状態で腕や足もガリガリになっていた。


「…どう言う事だ?双子って何の事だ??」


「…ああ、説明するよ。俺の家…というか俺の家系の異常さをな…」


父さんは柵越しに向こう側の翔太と話し始めると翔太は全てを話出す。


「簡単に言えば雄二、俺は小学校の低学年までは間違いなくお前に会っていた…だが、俺はその年齢の時にある一族の掟に従い…そして弟に負けて名前と戸籍を奪われたのさ」


「…何?」


そう言って彼は独房の柵を触る。


「佐々木家は双子が生まれた際は優秀な方だけを大事に育て、もう片方の出来損ないを大事に育てた方に降りかかるありとあらゆる厄と罪を代わりに背負わされる贄として地下に飼い殺しにする掟があるのさ。

お陰で弟の為したくもないのに金髪にさせられたし、気分転換とかで家族なのにそりゃヒデェ目にもあった。何よりイカれてるのはアイツら俺を臓器を自分達のスペアにして闇医者に俺だけ麻酔なしで親父には膵臓、弟には肝臓を強制的に交換しやがったよ…ま、金玉の方は昔アイツが面白がって潰したから後の祭りだったがな。種無しのアイツの悔しがる顔は傑作だったぜ?」


クククっと笑う翔太は更に話し始める。

佐々木家の掟、それは『常に優秀であれ』だ。

佐々木家は代々この土地を守ってきた地主の家系、故に優秀である事が求められた。

だが、まずは子供の教育方針は自由奔放な生活をさせて地元に独占欲と執着心を持たせて、その後に帝王学などを叩き込む。

だが、佐々木家は生まれた子供が双子だった場合は優秀な方をキチンと育てて、もう片方は地下で飼い殺しにしつつキチンと育てている方の厄災を代わりに全て引き受けさせる人柱にするのだ。その幽閉場所こそがこの独房らしい。


「んで、俺と弟は双子で生まれた。だから親父は優秀さを見極める為に一応戸籍上は息子は1人、佐々木 翔太だけになっているのさ。親父はその辺は繋がりでうまくやる方だったからな。

そして優秀さの決め手となったのはスキルの所持数、俺は一つだけに対して弟は3つ…その点で俺は弟に劣っていると判断されてこのザマって訳さ…」


「ちょっとまて、その話が本当なら私が今まで色々な事をしてきた翔太は…」


父さんが何かに気づいた顔をするが牢屋の佐々木は真っ直ぐ父さんを見るだけだ。


「ああ、ソイツは俺の弟だ。後今の俺は佐々木と読んでくれ。戸籍も名前もアイツに取られたからな…」


佐々木がそう言うのと同時にいきなり独房全体が揺れたはじめ、その揺れが収まってから佐々木は真剣な眼差しを俺達全体に向ける。


「すまん、話は後だ。俺を解放してくれ、親父達め…想定外の事が起きたからを起爆しやがった。今すぐに地上に出ないと崩落に巻き込まれてるぞ!」


「いや、さっきから何を言ってるんだよ!?地下の施設って何だ!?!?」


突然の展開に目を丸くして佐々木に説明を求める俺と全力で柵を殴り壊し始める父さん。そんな俺達を見て佐々木が叫んだ。


「この建物の地下にはな…















世界有数のマフィア達が出資して完成した違法薬物や人身売買、臓器売買やモグリの病院や銃器工房などが集まった巨大な複合ブラックマーケットが屋敷と老人ホームの間を地下鉄のように結ぶ形で展開してるんだよ!

親父と弟はそこの責任者で、恐らくそれが発見されるのを恐れて起爆して隠蔽しようとしているんだ!!」

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