第286話

〜〜 ??? 禁層 side 佐藤 渉 〜〜



「…渡辺さん、それで大丈夫なんですね」


「はい。確実性を考えて定期的に同じことを言いますがコレで確実にギルドは動きます」


「わかった、なら行くか」


渡辺さんの救助依頼を言い終わってから大丈夫なのか確認すると、渡辺さんが大丈夫と言ったので俺はエイセンを走らせ塔の中に入っていく。


「なるほど、干支を模したモンスター12体との連戦が引っかかっていたが…これから納得だ」


俺は塔の中に入ってから上を見上げるとそう呟く。

中は緩やかな坂が螺旋階段のように上に続いているおり、事前情報だと干支を模した12体モンスターと1体ずつ連戦する。つまり階層は13階に分けられていて、ある程度登ればモンスターと戦う階層に着くのだろう。

だが、一番有難いのは上に行く方法が螺旋階段ではなく螺旋階段のように上に続いている緩やかな坂だ。階段ならエイセンは使えないから降りて登る以外選択肢は無くなるが、段差のない坂なら問題なく登れる。


「父さん達、ガスマスクの準備をして。干支を模した12体なら最初は鼠を模したモンスター…やっぱり嫌な予感がする」


「了解だ」


「分かりました!」


「ダンナが僕の為に特注で作ってくれたマスクの出番ですよ!」


俺は気合いを入れ直し、荷台にいる父さん達に前回のダンジョンでの失敗を元にギルドの直営店から買ったガスマスク、そしてもち丸にはそのガスマスクを元に俺が作り直した友狐用のガスマスクを着けるように言ってから坂を上り始める。


「…さて、いつでも取り出せるように準備をしますかね」


俺は登りながら後ろの席に置いてあるアタッシュケースをサイドミラー越しに見る。その後上を見て恐らく戦う場所であろう大広間みたいな場所を見た。

鼠を模したモンスター…考えるだけで病原菌をばら撒くタイプのモンスターの可能性が高い。気を引き締める必要がある…俺は坂を登り切るまでそう思っていたんだ。



〜〜 禁層 子の階層 〜〜



「…嘘だろ?」


俺は確かに坂を登り切った。しかし登り切った先で信じられない物を見た。

そこは一面真っ平の階で地面には大きく〈子〉と書かれている為ここで子を模したモンスターと戦うのは間違いなさそうだ。だが、しかし目の前にあるのは…


「巨大な黒いネズミ…だが、コレは…」


「…


「…ですよ」


一匹の熊みたいに大きくガリガリに痩せた黒いネズミが、まるで竹のように縦に2分割された死体が転がっていたのだ。


「…回収するか。何かに使えそうだしな」


俺はそう言って2分割された死体にエイセンを近づけてから運転席を降り、死体に触る。すると死体は消え、同時にスマホから通知がなった為に取り出して確認する。


『餓鬼鼠 病原菌等の可能性無し』


「…取り越し苦労だったか。でも異常事態だな」


俺はそう言って運転席に座り直すと父さん達の方を向く。


「皆、多分だけど…俺達以外に誰かがこの禁層を攻略している」


俺がそう言うと全員は驚愕した顔になり、特に父さんは前のめりになり俺に詰め寄ってきた。


「それは…もしかして俺達より先にこのダンジョンに入った人がいるって事か!?」


「分からない、だけとさっきのモンスターは唐竹割りのように2分割されていた、しかも綺麗にだ。間違いなくで切り裂いた傷だった…手練れだね」


俺はそう言ってエイセンを次の階に行くべく走らせ始める。間違いなくアレがこの階で戦う13体の禁層のモンスターであり干支の子を模したモンスターだ、だからこそ禁層のモンスターであるそう簡単にあんなやられ方をするとは…一体、この禁層で何が起きているのか分からない。だが、進むしか俺達にはできなかった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『子の階』 餓鬼鼠 


唐竹割りで2分割になり死亡、拠点に回収。



『丑の階』 双暴牛 


頭が二つある像サイズの赤い牛のようなモンスター。全身傷だらけで死亡、拠点に回収。



『寅の階』 真水虎


臓器以外が全て真水でできている虎のようなモンスター。心臓が潰されていて周りの真水を維持できずに虎の姿の水たまりができており、その水たまりの中に剥き出しの内臓が浮かんでいたのいて間違いなく死亡、触りたく無いが何とか拠点に回収。



『卯の階』 山兎


階の9割を埋め尽くすほどに巨大な肉体を持った兎みたいなモンスター。頭を潰されて死亡、邪魔だったのですぐに拠点に回収。



『辰の皆』 不明


モンスターの姿は無し。だが部屋の中央に謎の跡があり、まるでがした。



『巳の階』 ナナマタオロチ


7つの頭を持った大蛇のようなモンスター。全ての頭が黒焦げになり、心臓辺りに向こう側まで見える穴があったので間違いなく死亡、拠点に回収。



『午の階』 わけわからん変態


馬の頭をしているのに体は中年のメタボ体系の人のような姿だが何故か服装が裸エプロンだったモンスター、酒瓶と春画らしき絵を持ちながら泡を吹いて黒焦げに。一応脈などを測ったが動いていないのを確認したので死亡判定、コレは回収するのが嫌だったのでそのまま放置。



『未の階』 神風羊


自爆する普通の羊の姿のモンスター…らしいのだが既に自爆済みで間違いなく死亡、かろうじて残っていた頭を拠点に回収。



『申の階』 仮面猿


まさかのミリアさんの人体総変異元のモンスター。だがコイツは四肢がもぎ取られた上に腹に穴が開けられていて完全に死亡、是非研修したかったのでキチンと千切れた四肢(右手のみ見つからず、恐らく元から無いのだと判断)も含めて拠点に回収。



『酉の階』 不明


争った後と血痕、それに大量に抜けた羽があるだけだった。羽はある程度回収したので現在どんなモンスターなのか解析中。



『戌の階』 地獄番犬&双頭大蛇融混犬


まんまケルベロスとオルトロス、文献やネットの検索などで見たまんまのモンスター。しかし2体とも身体中穴だらけで死亡、拠点に回収するが回収し終わった地面も穴だらけだったのでこの二匹の上から何かで穴だらけにしたと判断した。



『亥の階』 白ノ森神


メチャクチャに食い荒らされており、かろうじて白い毛の猪みたいなモンスターであるとしか判断できなかった、もちろん死亡。拠点に回収する際に触るがまだ体温が暖かく血も生々しいので恐らくコレをした犯人は上の階…つまり陰陽化け猫の所にいると判断し、気合いを入れ直して回収後は一気に坂を登った。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る