第271話
あれから数回、あのヤドカリみたいなモンスターには遭遇したが全部轢かれるかエイセンの速度に追いつけずに追うのを諦めるかの二択で解決できた。そして現在、父さん達がいた地点から大体214km地点。
「…マジかよ」
そこから次の階層に行く為のポータルの姿見えてきた。
「おいおい。このダンジョン、帰還用ポータルが無いとか…殺意高すぎるだろ…」
俺は思わずそう呟きながらポータルに向かって運転する。多分このダンジョン、前回の特殊ダンジョンが手荷物を極限に減らしてからの衣食住を奪い、更には一年でたった数時間のみ禁層にいける鬼畜仕様だった事を考えると…このダンジョンは多分帰還用のポータルが無い、もしくは帰還用のポータルが少ない仕様なのだろう。まだ深層まで確認してないから確定ではないが、このダンジョン…歌舞伎のダンジョンと比べて間違いなくかなり殺意が高い、あのヤドカリ然りこの移動距離然り…本気で殺しに来ているとしか思えない。
「クソ、佐々木の奴は絶対にこのダンジョンの事をある程度知っているよな…」
俺はそう呟きながも無事にモンスターにも出くわさずに、ポータルの近くまでエイセンを走らせてから安全に止め、エンジンを切り運転席から降りてすぐに拠点を展開した。
「皆、父さん達を安全に中庭に運んでくれ。後、今日の朝飯は…ガッツリの気分だから鍋焼きうどんにするか。クエンさん、お手伝いをお願いしてもいいですか?」
「良いわよ。後具材に…
「もちろん、救助班全員分の大判サイズの油揚げがあります。父さん達にはある程度切って出しますが俺達は贅沢に切らずに一枚丸ごと使いましょう」
あらあら、最高ね!。なら私達が養殖したスッポンで作った特性の出汁も使いましょう、お父さん達もきっとすぐに元気になるわ」
展開してすぐに皆に指示を出しつつ、クエンさんに今回の報酬を含めた夕飯を作る為にお願いをした。
「あの…ダンナ。僕はずんだ餅が食べたい…
「作り置きがある、それでいいならそれも出すよ」
やった!ありがとうですよダンナ!!」
更にもち丸がずんだ餅をねだって来たので、学園祭の時に友狐達の賄いとして叶とミリアさんと一緒に作っておいたずんだ餅がまだある筈なのでそれを出すと言ったら、もち丸はメチャクチャ喜んでいた。
「はいはい、喜ぶのは分かるけど仕事が先よ、もち丸?」
「おっと、ゴメンですよ母ちゃん」
そんなもち丸を一言で正気に戻したクエンさんはもち丸と一緒に拠点から手作り担架を持ってきた複数の名無し達と一緒に父さん達を担架の上に乗せていく。
「まあ、俺も行きますか…正直疲れた…特性エナドリ飲んでなかったら途中で気絶していたかもな…」
俺はそれを見つつエイセンを拠点に回収し、俺も担架の後に続いて拠点の中に入ったのだった。
〜〜 6時 〜〜
「ングッ…チュルチュル…美味しい、ウチが食べてきたうどんの中でダントツで美味しい!」
「助かった。半日以上何も食べてなかったから限界が近かったんだ…うん、雑炊もつみれ汁も美味い!」
《はは。起きてすぐに神社に誰もいないから何があったかと思ったら、中々粋な事をしてくれるじゃないの…たまにゃガッツリとした朝食も悪くはないな》
「いや、2人とも起きたてなのにめっちゃ食うじゃん。料理を褒められて嬉しいけど一気に食うと胃がびっくりするから落ち着いて食ってくれよ。後、焔は握り飯と野菜スープ食い過ぎ。特に握り飯を何個食うんだよ…」
あの後中庭で友狐達が用意してくれた藁と布の簡易ベッドに父さん達を寝かせた後にコハクさんが他の名無し達に指示して各自お鍋とお出汁を準備、俺ともち丸とヒッスアミノさんは鍋に水を張り生のうどんを準備して茹で始めた。
その後に噂を聞きつけた他の友狐達も中庭にお鍋とお出汁を用意して集合し、何故かそのまま共通のお出しと土鍋で作る一品料理を自慢する会場になってしまった。
俺の鍋焼きうどんを始めつみれ汁、雑炊、焼きネギと里芋の煮物、枝豆と野菜たっぷりのスープ、お出汁で米を炊いて握り飯、茶和蒸しなど多種多様の料理が出来上がった。
その頃には父さん達も起きていたらしく、父さんの側には焔もいた為にそのまま全員で朝食を食べる事になった。
渡辺さんは腹が減っていたのか熱々の鍋焼きうどんを涙を流しながら食べ、父さんは上品に雑炊とつみれ汁と持ち込まれた漬物を食べている。
しかし焔は超スッポンの出汁で炊いた米の握り飯が気に入ったのかもう6個も食べてはスープを飲んでを繰り返している。
「…まあ、焔まできてくれたのはありがたい。この後は風呂に入って仮眠してから父さん達と今までの事を報告しあわないといけないし、その際に焔がいれば何かしらアドバイスをもらえるかもしれないしな」
「ダンナ、鍋焼きうどん4匹前追加。内2つはトッピングに刻み葱と天かすを別皿で欲しいって言っているですよ。あと、キナコの子供達が鍋焼きうどん4匹前トッピングに刻み葱と天かす山盛りに別皿でずんだ餅18個ですよ」
「いや、もち丸よ。ずんだ餅は別として皆の注文の仕方が普通にうどん屋の注文の仕方なのよ。…まあ、いいか。もち丸はトッピングとずんだ餅の準備、ヒッスアミノさんは鍋の具材の補充をお願いします」
「了解ですよ」
「はい、分かりました」
俺は焔の様子を見つつ、もち丸が聞いてきたオーダーに文句をいいながらも的確にもち丸とヒッスアミノさんに指示を出しながら友狐達から借りた土鍋に出汁を入れて準備をする。
そんなこんなで時間はすぎていったのだった。
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