第270話
〜〜 side 佐藤 渉 〜〜
俺はあの後にヒッスアミノさんとクエンさんの提案で彼ら夫婦を中心に数匹の救助班を連れて行く事になり、時間が無かった俺はそれをすぐに了承して中層に来た。
中層ははっきり言えば不毛の大地、厚い雲に覆われ草木は枯れて岩などが沢山転がっていた…だからこそ分かる。目立つのだ、そんな場所だからこそ父さんの名刺の白色が。
俺はそのまま距離は不揃いだが間違いなく続いている名刺の道をエイセンで全速力で駆け抜けた。
そして間一髪、父さんがヤドカリみたいなモンスターに襲われている所を発見したので花散を適当なモンスターに投げてから持ってきていた拡声器を使いモンスターの注目を集めてつつモンスターと父さんの間に滑り込ませる事に成功、そのまま父さんと父さんが守っていた渡辺さんを助ける為にもち丸と一緒に花散を投げた後に武器を手に取り、モンスターの群れに突撃する。
「高周波ブレードなら岩みたいな殻でも豆腐だな!」
『ギャブ!?』
忍者刀型高周波ブレードである鈴虫でヤドカリが守る為に引きこもった殻ごと唐竹割りで縦に半分にし、振り下ろした後に左手で腰装備にマウントしていた花散を掴むと近づいてきたモンスターの足元に投げて牽制、モンスターが怯んだ隙に近づいて両目の間に鈴虫を突き立ててから下に振り下ろして切り、モンスターを倒す。
「もう、父ちゃんに母ちゃんが見てるから余計に緊張するですよ」
『ギギギ!?』
もち丸はもち丸でモンスターの殻に花散を投げてから殻に入ったヒビの隙間に自分の刀を刺し、流血させてなるべく自分がモンスターに狙われるようにして俺がモンスターを狩りやすい状況を作ってくれている。
「…だけど、いかんせんモンスターの数が多いな」
だが、どれだけ狩ってもモンスターの数が一向に減らない。減った側から次々とモンスターの援軍が来てしまう。更には…
『『『ギギギギギ!!!』』』
「…共食い…死ねば仲間とて餌になるのか」
その援軍は基本、俺達には来ない。
俺達が狩ったモンスターの死体に殺到して捕食して、食べる物が無くなったら俺達に向かってくるという行動を繰り返している。
つまりコイツらは敵を倒すよりも捕食が最優先、仲間意識はあれど死ねば元仲間はただの餌…なるほど、コレは使えるな。
そんな事を向かってきたモンスターを横一閃で上下2分割にしながら考えていた、そんな時だ。
「うおぉら!!」
『ギビブ!?』
「危な!?、流石に冷や汗が出たですよ…」
父さんが鎮魂の外骨格を装備した父さんが殻にヒビが大量に入ったモンスターに対してハンマーパンチを繰り出して中身ごと叩き潰し、その時に飛び散った破片がもち丸の方に飛ぶがもち丸は全力で横っ飛びで回避し、そして父さんが倒したモンスターに他のモンスターが我先にと殺到した為父さんは俺の近くまで避難した。
「渉、無事か?」
「さっきまで重症だった人間が言うセリフじゃないなっと!」
そして、俺の隣にいたモンスターにパンチを入れのけぞらせながら父さんは俺にそう言い、俺はのけぞったモンスターを下から斜めに切り捨てつつそう返事を返す。
それと同時に俺と父さんはバックステップでエイセンまで下がり、周りを見る。
「くそ、私は普通の服で今はボロボロ…一撃でも攻撃をくらったり捕まえられたら間違いなく死ぬな」
「なら、エイセンの荷台に登って後方援護でもする?」
「無理だ。気絶した渡辺さんが後ろにいるし、何より息子が命をかけて戦っているんだ。父親として共に戦わねば私は私を許さない」
父さんが珍しく弱音を口にしたので、後方支援に徹するかを聞いたら即答で否定された。流石は父さんだ。
「なら父さん、モンスターを切るから切った先から殴って遠くに飛ばしてくれ。あいつら捕食が最優先みたいだから多分飛ばした部位を追う筈だ」
「…なるほど、その隙に逃げる訳か!」
「Yes、幸い奴らの足はエイセンより遥かに遅い。全速力をだせば振り切れる…よ!」
『ギョ!?』
父さんに作戦を伝える最中にモンスターが接近したのでまた唐竹割りで2分割にすると、父さんが一気に2分割したモンスターに接近して別々の方向に全力で殴り、遠くへ飛ばした。
『『『ギギ!』』』
すると空中に浮かぶ死んだ仲間を見たモンスターは全速力で空中にあるそれを追いかけて行き、一時の隙ができる。
「もち丸、来い!」
「ですよ!!」
俺はその隙を見逃さずにもち丸を呼び、父さんともち丸が荷台に乗り次第運転席に乗り、父さんが荷台に渡辺さんと救助班全員がいるのを俺に叫んで報告してくれたので俺は急いでエイセンを起動。一気に加速させ、何匹がモンスターを轢いたがそのまま速度を上げてその場から離れた。
「うっし、追いつけていないな」
俺はサイドミラー越しに後ろを確認するが、轢いて潰れたモンスターに他のモンスターが群がっている為にこちらにくる個体は少なく、また彼らは殻が重いのか移動速度も遅い為にそのままどんどん距離を離し、最後には見えなくなった。
「…あ、ダンナ。ダンナのお父ちゃん気絶しているですよ?」
「息子を守る為に心身ともに限界だった筈…同じ父親として本当に凄い人だと心から思うよ」
「ふふ、いい父親を持ったわね。渉ちゃん?」
そんな時に後ろの荷台からもち丸一家からそう声をかけられた。
「まあな…取り敢えず、今はポータルを探そう。話さなきゃダメな話も沢山あるからな…」
俺は取り敢えず返事を返してからそう言うと、『観察眼』を使ってポータルを探す。取り敢えず、父さん達の話を聞かないと何が起きたか分からない。急いで安全を確保しないと…
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