第261話

「お前さん、さっきから子連れの親どころかその子供まで魅了しているのに気づいているか?普通に生物兵器の領域なのよ」


「それは否定しない。我ながらヤバい姿だしな…」


俺が周りからメチャクチャ見られている叶にそう言うと、叶は苦笑いをしながら肯定した。

正直言って今の叶はマジで美人かつスタイルがいい、元々が男って時点でアレだがそれでも帳消しに出来るくらいに美人だ。何せさっきから近くにいるだけで少年やそのお父さんの視線を独り占めできるレベルである。マジで生物兵器だと思う。

そんな時だ…


「…ん?…スマン叶、ちょい行ってくる」


「んお?」


不意にとあるお客さんが目に入ったからだ。

俺はすぐに叶から離れ、子連れ夫婦のお客さんの座っている席に移動して母親の近くに置いてあるベビーカーの中にいる赤ん坊の見る。


「…すみませんお客様、替えの紙おむつをお持ちでいますか?」


「…え?」


俺が赤ちゃんを見てから近くにいた母親にそう言うとそのテーブルにいた父親と8歳位の娘さんも母親と一緒に驚いた顔をした。そんな家族をみつつ俺はキナコを呼ぶ。


「はいはーい。ダンナさんどうしまし…って、あらあらオシメの交換ね?」


「ああ、ぐずり始めたのを見てもしやって思ったんだ」


「うそ、七海!?」


俺が近くにきたキナコにそう話すと母親はようやく赤ちゃんの様子に気がついたようだ。

俺の『鷹の目』が変化して手に入れたスキル『観察眼』は鷹の目のデメリットであった背後を取られやくすなるという弱点を無くした物だ、だから気軽に使えるしこうやって気になった存在を凝視すればすぐにわかるようになった。だからこの赤ちゃんの泣きそうな顔に気づいたので近づいたら案の定だったわけだ。


「お客様、もう一度お聞きしますが替えの紙おむつをお持ちでしょうか?」


「は、はい。持っていますが…」


俺が母親にそう言うと母親はベビーカーに取り付けてあるカバンを見た。おそらくアソコに一式が揃っているのだろう…ならば都合がいい。


「お客様、すみませんが大切なお子さんを少しお預かりをしてもよろしいでしょうか?責任を持ってオシメの交換をさせてもらいます」


「え?…いいんですか?」


「あらあら、任せて。私こう見えて8匹の子をもつお父さんなのよ。子育てには自信があるわ♪」


「「「任せて、任せて!」」」


俺の提案に母親は少し困惑するがキナコが自信満々に胸をはっているとキナコの子供達も近くに来たようでキナコの周りで笑顔でそう言っている。

そんな様子をみた母親は「なら…」と言っていたが娘さんの方がソワソワしている…なるほど、理解した。


「お嬢さん、もし宜しければこの友狐の子供達と遊んでくれませんか?」


「え、本当!?」


俺は娘さんの方を見てそう言うと、娘さんは目を輝かせて前のめりになる。やはりキナコの子供達を見て触りたい、遊びたいと思っていたらしい。


「あらあら、それは私も助かるわ♪皆、あのお嬢さんが一緒に遊びたいって言ってるわよ?」


「「「やった、あそぼ、あそぼ!!」」」


キナコもまた子供達を構ってもらえるのが嬉しいのか子供達にそう言う、子供達も遊んでくれるのが嬉しいのかもう娘さんの、足元まで行って遊ぼうと誘っている。


「すみません、もし宜しければもう一杯ドリンクをサービスしますのでココで休憩していきませんか?その間はお子様達は我々と友狐一同が責任を持ってお世話させてもらいますので…」


「お父さん、お母さん。行ってきてもいい!?」


俺は子供達のご両親にそう提案をすると娘さんもまた食い気味に両親にお願いしている。

そんな娘さんを見た両親は折れて娘さんにOKを出し、娘さんは喜んで椅子から降りてベビーカーを押すキナコの後を子供達と一緒に歩いてついて行った。

俺はその後、ご両親の注文を聞いた後に中庭に作った臨時のキッチンにいるメンバーに注文を通した後に叶のところに戻る。


「スマン叶、今用事が終わった」


「お前、そういう気遣いが理性を破壊するって事に気づいた方がいいぞ?…見てみろよ、さっきから別のクラスから来た男女ペアのお客さん。

さっきのやり取りを見て以降、俺じゃなくお前を凝視しまくってんぞ?内面よしの見た目清楚系+低身長美人とか簡単に理性を破壊する兵器だからな」


俺が戻ると同時に叶にそう言われてしまう。

確かにそんな女の子が現実にいたら目で追ってしまうのは当たり前だし、現に俺を見る視線が増えた気が…


「…まあ、あのまま嫌な気持ちにしてしまう事も、周りの迷惑になってしまう事もどちらも見過ごせない事だったしな…なるべく視線は気にしない様にしよう」


「あら、別に大丈夫じゃない?私以上に目立っているわけじゃないんだし?」


俺が向けられる視線を諦めていると、ガチャガチャと音をたてながら薙刀のレプリカを片手にもち、周りに目を輝かせた青年をたくさん引き連れた男性が話しかけてきた。


「うっす、ミリアさん。相変わらず三国志に出てきそうな鎧が似合いすぎているな、夏侯惇かな?」


「あら、昔パパがコスプレで買った物を着ているだけよ。でも褒め言葉は素直に嬉しいわ、ありがとう」


それは、体長2メートルで筋肉質になり無精髭に顔が古傷だらけの堀が深く圧が凄い巨漢の男性になって、三国志に出てくる武将のコスプレをしたミリアさんだった。

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