第260話
〜〜 side 佐藤 渉 〜〜
「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」
俺は現在、性別を東京タワーの深層で手に入れた水晶で逆転しつつ桜に用意してもらった18世紀の貴族の男性が着てそうな黒色をベースとした服に黒縁伊達メガネを装備した、つまり性別が逆転しているのに男装をして接客している変な状況だ。
現在俺達メンバーが全員在学している迷宮学園は文化祭である迷宮祭の真っ最中であり、今回俺達1年A組は夏美が所属する情報科の生徒が集められている1年E組と合同で喫茶店をやる事になった。
理由として俺達〈狩友〉のメンバーが有名になっているから例年以上に来客が多くなると予想をつけた生徒会と教師達が緊急会議をして、1年E組と合同で出し物をする事で来客の回転率を上げる事が決定、そんなこんなでお互いのクラスとの相談の結果がこの常識はずれの極みみたいな喫茶店、『性別逆転&友狐触れ合い喫茶店〈TS & F〉』という訳である。
因みにこうなった原因は叶と俺、ついでに焔だ。
最初は叶がふざけてコスプレ喫茶とか言い出して、男子は賛成したが桜と一二三とミリアさん以外の女子は「イラやしい目でみられるのが嫌」とか言って反対したのだが…俺がふと『性逆水晶』の事を口にしてしまい、こうなった。
性逆水晶とは俺たちが東京タワーの深層で性別が逆転した原因であり、俺達が国にサンプルを提出してから自衛隊の調査結果と俺達〈狩友〉の配信を元に徹底的に調べた結果、新種の鉱石として正式に発表されたトンデモ水晶だ。
コイツは鉱石全体から光なら何でも内部に吸収する特性があり、ある程度吸収するとそれ以上は吸収しなくなるがそんな状態で一定以上のエネルギーを与えると内部に溜め込んだ光を一気に放出。
その際に水晶内から出てくる光は無害だが、内部にある特殊な原子も光を放出する際に一気に増殖して光と共に放出され、その光が生物に当たればその生物の性別を逆転させて服を着ていた場合も硬い装備以外は体に合う様に変化させる、つまりノーリスクで性別を自由に変えられる不思議な水晶なのだ。
そしてその光と共に出てくる原子は一度性別を逆転した生物に追加で浴びせても意味はなく、外気に触れれば徐々に死滅して減っていく為光を浴びてから最短で4時間で性別は元に戻る。
だがこの原子、光を浴びた生物の性的興味…つまりスケベな奴ほど原子との適合率が上がり原子の減る速度を遅くする特徴もある、更にはある程度の体積を維持しているならどんな形に加工しても性別の逆転は可能である。
そんな水晶の話をしてしまったからこそ女子はそれを使ってやるならOKと許可が出てしまい、言い出しっぺの叶と余計な事を言った俺は押し切られる形でそれに賛同するしかなくなり、結局クラス全体が性別を逆転させた上でコスプレする喫茶店をやる羽目になったのだ。
だから俺はこう思った、
「なら、申し訳ないが友狐達を巻き込んで自分に向けられるヘイトを少しでも散らす事にしよう」
と。
そう思った俺はその場で拠点を展開、いきなり俺の後ろに『鳥居』が出てきた事に驚く皆を気にせずその鳥居の中に展開されている拠点の場所から1番近くにいた名無しの子に焔とヒッスアミノさんを呼んできてもらえるようにお願いしてから、拠点側と教室側で鳥居を挟みつつ焔達と相談し、「子供や若い奴らが様々な人間達との交流をできるいい機会だ」とヒッスアミノさんが焔を説得して焔も了承。
その後は学園の先生達と話し合いをして一年A組に拠点を展開して喫茶店をやる事と友狐達側からの料理を提供する事が決定した。
因みに鳥居は前に焔が言っていた門のような物で、俺や仲間に悪意などがある奴と友狐に悪意がある奴は拠点には入れず、また拠点内でも悪い事をすれば瞬時に身ぐるみを悪いことをしたその場に殆ど残して下着姿で拠点外に排出する機能が追加された。
ついでに魚などの養殖場と『とある設備』が建物内に追加された。
養殖場ではイワナやニジマス、海老や鰻…後何故か超スッポンが養殖されている。
何故モンスターである筈の超スッポンがいるのかというと多分俺のせいだ。なんか偶然トイレを借りにきた焔がモンスターの素材を保管している場所から何かの気配を感じて調べた結果、素材として置いてあった超スッポンの骨が無くなっていて、代わりに超スッポンの子供が50匹ほどが床を這っていたそうだ。
そして、その超スッポンは完全にダンジョン産の物とは違う。まず幼体から成体になるまでに二週間、そこから交配して産卵までに6日、卵は一回の交配で大体20〜40個前後の卵を産み、卵は3日で孵化するという感じでじゃんじゃん養殖されている。味は多分餌として友狐の野菜を食べているからか養殖の方が遥かに美味しく、養殖の超スッポンは敵意も攻撃性も皆無。愛嬌とナマケモノ並の穏やかさと性格をしていて危険性も皆無ときた。正に食用となる為に生まれた品種改良された鶏の様になった超スッポン、現在は貴重な動物性タンパク質として食卓に並んでいるらしい…
「高級食材のはずなんだけれどな…」
「どしたん渉?」
俺がお客様を席に誘導してその場を離れてから苦笑いをすると、不意に話しかけてくる人物が1人。
「いや、今更ながら自分の力がトンデモだって思っただけだよ全自動青少年性癖破壊兵器さん」
「だれが生物兵器だ?この男女関係なく理性を破壊する無自覚ブレイカーが」
それは胸元を大胆に開けて谷間を見せつけてくる白色のワンピース風のチャイナドレスを着て白い百合の髪留めを付けたスタイルが化け物の金髪美人、叶だ。因みにチャイナドレスは一二三の持ち込みだそうだ。
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