第262話
「いや、普通に様になってんだよな…以外に貫禄も出ているし」
「「「あら、ありがとう」」」
「いや、いきなり増えるなよ。普通に周りの子供もビックリしてるぞ?」
「あら失敬」
ほほほっと笑いながら増えたミリアさんが1人に戻り、何事もないよう振る舞おうとしたミリアさんと周りで混乱している子供を見て、俺は頭に手を当てて悩み出す。
ミリアさんは前回のダンジョン制覇でジョブに『ダンサー』、スキルに『分身』を手に入れた。
『分身』に関しては桜が持っているから省くが、ジョブの『ダンサー』は踊りが上手くなるだけのジョブ、つまりあまり使い所がないジョブだ。
故にさっきミリアさんが3人に増えたのは幻ではなく普通に『分身』のスキルを使って分身しただけ、つまりいつものおふざけだ…いや普通に当たりのスキルなのに使い方が無駄しかないんだよね…
「ミ〜リ〜ア〜?あれ程子供達の前で変なことをするなって言わなかった?」ギュラギュラギュラ…
「うむ、ミリアは常識知らず」
「鏡見てみろ、お前らが1番変だわ」
そこに小麦色の肌に八重歯が特徴的な青年になって学ランを着た夏美と白髪の王子様系美少年になっている前回のお宝であるカワウソの着ぐるみパジャマを着た一二三がきたが、俺は2人をみて思わずツッコミを入れてしまう。
まず前回の宝箱から夏美はジョブが『整備士』、スキルに『狙い撃ち』が追加された。双方とも説明済みの為特に言う事はなく、一二三もスキルに『強肝臓』の一つが追加された。『強肝臓』はいわば肝臓の機能が人の5倍になるスキル、つまり一二三は二日酔いなどには一切無縁の人生を手に入れた事になる。
そんな2人だが現在非常に理解できない姿になっている。
まず夏美はいつもの義足ではなく足に見た事ない…例えるなら戦車の砲塔無しを小型化したような物を装備して履帯で走って来たし、一二三は一二三でその謎の物に取り付けられた荷台に正座をして座っていたのだ。普通に理解できない、なんだこの義足?武装?みたいな物は、作った覚えは無いはずだが…
「…あ、この義足が変なんだね。安心して、これ狂子ちゃんと自衛隊から頼まれた軍用義足の試作品の試験運用中だからアタシの同意の上だよ?」
「またあのバカ弟子が暴走したのか…ハァ…」
俺は夏美の言葉に思わずため息をついてしまう。
話を聞くにどうやら自衛隊は救助活動を目的とした履帯や多脚の義足を開発しようとしていて、いつもMBを改造しまくっていて電動のエイセンを独自に製作した狂子にお試しで履帯型の製作を依頼、狂子も張り切って試作品を作った後にこの迷宮祭の時に是非試作品を使って欲しいと夏美に依頼した。更に自衛隊からもお願いされた夏美だが本人は戦車大好きな性格だったから快く依頼を了承、今さっき狂子が夏美が今着けている試作品を渡しに来て装備して試運転していたらしい。後、一二三は偶然その場を目撃したから取り敢えず荷台に正座して遊園地のアトラクション感覚で乗り心地を体感していたそうだ。
「因みに狂子ちゃんはもういないよ。
『今、別の教室でロボット研究会なる団体が自分達の技術を公開しているんです。例え知っていた知識でも人によっては見え方が違うなんてざらですからいいインスピレーションになるんですよね。だから私は今すぐにそこに行きます、では!』
とか言って空中に浮いて飛んでっちゃった」
「…取り敢えず鳥伝さんに警告しておくか。あのバカは絶対に今日か明日には何かしらやらかすぞ…絶対に」
俺は夏美とそう会話した後に、ポケットからスマホを取り出して急いで鳥伝さんに電話をする。
「…あれ、渉はどうしたの?何かあった??」
「お、桜。実はな…」
そんな俺を見て完全にホストの服装をした桜が近づいてきて叶と会話を始める姿を見つつ、俺は電話に出た鳥伝さんに事の経緯を説明し始めながら叶達2人の事を考えていた。
叶は今回の宝箱でスキル『研ぎ上手』と『足払い名人』を手に入れた。
『研ぎ上手』は刃物を研ぐ際に素早く丁寧に研げるようになるスキルで、『足払い名人』は足払いが上手くなるスキル。
桜はジョブの『料理人』を手に入れた。
故に全メンバーが一回づつダンジョンを制覇したから分かった事だが、まず1回目の人は間違いなくジョブとスキルが両方1つ増えて、2回目以降はランダムで増える仕様らしい。本当にダンジョンとは不思議な所である。
「…と、言うわけですのであのバカが変な事をしないか警戒した方がいいですよ?」
〈あの機械狂いが…ありがとうございます渉さん。後はこちらで対処しますのでご安心ください〉
「助かります。では」
俺はそんな事を考えつつ鳥伝さんに伝える事を伝えて電話を切る。すると俺に近づいてくる人影が見えた。
「あの、渉くん。君のお父さんって言っている人と渡辺さんって人が君を呼んで欲しいって」
「え、渡辺さんに父さんが?…ありがとう藻武蛇世くん」
それは性別が逆転する光を浴びたにも関わらず全く容姿が変わらなかった藻武蛇世くんだった。
…てか、父さんと渡辺さんが呼んでいるって一体…?
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