第257話

双翼日輪章、コイツは俺が前にいた世界の日本と今の世界の日本でダンジョン有無以外に絶対に違う点であり、この勲章の別名は『重婚許可証』。

この世界の日本でも前の世界と同じく一夫一妻が法律で決められている…のだが、この勲章を手に入れた人には特例の法案が適応される。

この勲章を持つ人が適応される特例の法案は噛み砕いて以下の通りだ。


1、日本国内にある全ての医療機関での治療代を全額国が負担する。


2、国内の公共交通機関を利用した際に発生した運賃は国が全額負担する。


3、希望するなら一回だけ国内の好きな土地を国が用意して住宅を建てられる権利を得る。


4、勲章を持つのが女性の場合は国内で生活する際にかかる税金の大半を免除される。


5、勲章を持つのが男性の場合は双方の同意の上なら三人までの女性と結婚できる。



となっている。


「元々、日本の歴史上でこの勲章を手に入れられた人はごく僅か。何故なら勲章をもらう為には天皇陛下と総理大臣の同意と国に継続的な利益を得る何かを発見する必要があるからね」


「…あ、東京タワーの廃鉱山!」


未だ背中に桜が抱きついているが、俺は夏美の言葉を聞いて今回見つけた中層の廃鉱山を思い出した。

天皇陛下と総理大臣の同意は別に俺には関係なく単なる運だろうとは思うが、継続的な利益となると危険な鉱石を除きながらレアアースや貴重な鉱石、日常で使う鉄や銅などの普通に取れる鉱石もランダムだが無限に手に入り、ダンジョンだからドリルなどの機械は使えないがピッケルでなら採掘は出来るし、海外や国内など様々な鉱山や鉱脈があるダンジョンはモンスターのせいで採掘はできないのだが、東京タワーの中層はあの初見殺しのキノコの胞子が原因でモンスターが沸いた瞬間に死んでしまう特殊な環境だ。だからその胞子にさえ気をつければ安全かつ継続的に採掘できる。

だからこの勲章がもらえる条件に当てはまったのだろう…本当にすごい偶然だ。


「うん、アタシも桜に教えてもらうまで知らなかった。だから桜がいた時点でこの気持ちは諦めようとしたんだけど…もうそんな気遣いもいらない。だからアタシも自分に正直になるね」


「…はい?」


夏美の言葉に何が意味を感じた俺は反応するが、夏美は言いきった途端に俺の体に正面から抱きついた。


「夏美、夏美さん!?」


俺はまさか女性2人に前後から抱きつかれるとは思ってもいなかったのでメチャクチャ動揺する、だが次の瞬間…


「渉…










好き、幼稚園の時から大好きだよ」


まさかの人生で三度目の告白を受けてしまった。


「…は?」


流石に理解ができなくなった俺は思わずそんな声を出すが、夏美は更に俺に言ってくる。


「幼稚園の時に助けられて好きになって、小学校のいじめを解決してくれた時に更に好きになったの。

だけど、先に桜が告白していたからアタシは身を引くつもりだった…だけどね、重婚が許可されたのならもうその必要も無いから…そうだよね、レイちゃん?」


「…レイちゃん?」


夏美の話に目を回していると、不意にレイちゃんの名前が出てきたのでビックリしたが、後ろで抱きついていた桜が不意に俺に自分のスマホを見せてきた。そこには何とレイちゃんがビデオ通話で映ていて、メチャクチャいい笑顔をしていた。


〈はい、私が正妻であるのならば別に重婚はきにしません。元々五人の母がいた時点でハーレムは気にしませんが、国の王族としては絶対に正妻でなければ他の獣人達に示しがつきません。ですので私は正妻って事でいいですか?〉


「…いいよ、アタシは2番でも3番でも気にしない。渉に愛してもらえるなら///」


「ふふ、やっと渉の包囲網が完成したんだ。そこに正妻だのなんだのなんて関係ないね。必要なのはボク達皆が平等に愛してもらう事さ」


「コイツら…いつの間にか手を組んでやがった!?」


妙に連携が取れている三人を見て首謀者が誰かは分からないが俺は三人がいつの間にか手を組んで俺を手に入れる連合になっていた事に驚きつつもどうしたらいいか分からずにそのまま体が固まってしまう。


〈この国が条件付きでしたが三人まで重婚が認められていて助かりました。お陰で女性同士で色々と争わなくて助かりましたよ〉


「うん、確かに不毛な争いをしている間に第三者が現れないとも限らないしね。アタシも無事に渉に思いを告げられたし…皆とギスギスした関係は嫌だしね」


「ふふ、渉が言ったんだよ?

『俺が好きなら全力で俺の心を狩ってみろ、お前が全力で来るならば俺も全力で対処する。そしてお前がもし俺の心を狩れたなら俺の一生はお前の物だ』

ってさ。だからせっかくだし皆でパーティを組んじゃった♪」


そんな俺にさらに抱きつく2人に画面越しに自分のErrorスキルを発動したのかレイちゃんの首には金具付きのチョーカーがいつのまにか装備されているし、俺の首元から鎖が出てきて俺の頬をツンツンと優しく頭をこづいてくる。


「どうして…」


そんな状況に俺は震えながら…


「どうしてこうなったー!?!?」


月に向かって叫ぶしか無かった。



~~side 無 ~~


古びた狩人の拠点の建物の中、ソファーの後ろにある石像が七色に光りだした…が、


グサッ


《コイツァ驚いた…俺はただウォシュレットが癖になったからまたトイレを借りに来ただけなのに、まさかこんな所に出くわすとは…》


いきなりトイレの扉が開くと同時に石像に刀が二本刺さる、そしてトイレから出てきたのは背中にあるはずの二本の刀が無い友狐の守護神、焔。


《にしても、まさか渉の魂とは別にのには気づかなかったな…てか、魂っていうよりはこりゃに近い…だから気づけなかったのか》


そう焔は言うと未だ光る石像に近づき、刺さった刀を抜いて背中に納刀する。


《それにコイツはまだ力が弱いから何なのかもハッキリとは分からないな…後渉が数回スキルを成長させれば多分意思疎通は出来る…渉には教えないでおくか。いらん気を回させる訳にはいかないし、俺が安全を確認してからの方が手間も省ける》


そして石像に刺さった傷が完全に治り、光が収まると今度はソファーの近くの机の上に1冊の本が音を立てて置かれた。

焔はため息をつきながらも机の上に置かれた本を手に取り、タイトルを見る。


《『妖滅伝』…か、随分和風な名前の本だ…ナ!?》


タイトルを読み上げた焔だが、不意に渉がモンスターの素材を置いている場所から何かの気配を感じ、急いで机に本を置くと片腕で刀を掴みながらその場所に行き、片腕でシャッターを持ち上げて中身を確認する。


《おいおい、マジかよアイツ…こんなの誰が予想つくんだよ…》


そして部屋の中身を見た焔はそう言うと、部屋の中に入ったのだった。

かくして、渉の3回目のダンジョン制覇は無事に終わった。

しかし、渉は知らない。渉に向けられた悪意がある惨劇を引き起こす事になるのを。



~~~~~~



第三章 完







NEXT  悪意と私欲の惨劇×立ち向かう親子=ああ、我が片割れよ。我は座して汝を待つ


















佐藤渉/男



ジョブ



『匠』



『狩人』



スキル



『解体の極み』


『採取&採掘名人』


『地図』


『観察眼』


『努力』


『モテ体質(動物)』


『(湖岸の古びた狩人の拠点)』

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