第255話

「…いや、いやいやいやちょい待ち、なら何で俺がそのシモンって獣人の生まれ変わりとかって話になるんだよ。色々と繋がらない点が多すぎるんだが?」


俺は何か世界の心理的な事に頭を突っ込んだ気がするが、取り敢えず今は頭の片隅に置いておく事にして、取り敢えず今1番謎がある生まれ変わりについて聞き出す事にした。


「…ぷぅ、まだ認めてくれないんですか?」


「いや、可愛く頬を膨らませてそう言われても…でもあれば別だけどさ…」


俺の言葉に、頬を膨らませて可愛く不機嫌になるレイちゃんに俺はそう言う。

そもそも、俺は確かに前に居た世界からこの世界のこの体に魂を入れられたと言う貴重すぎる体験を身をもって味わっているから生まれ変わりも別に不思議ではないとは正直思う所だ。

しかし、流石に生まれ変わる前に婚約した王女様から「貴方は私の婚約者の生まれ変わりです!」とか言われて素直に「はい、そうですね」とはならないし俺自身納得もいかない。具体的な証拠でもない限りは認める訳にはいかない、それで変に桜を刺激したらもしかしたら俺と桜は迷宮学園を自主退学する羽目になる出来事が起きる可能性がある…故に今は証拠がない限りは認められない。例えヘタレや外道と言われようが絶対にだ。


「正直、その口面を正式に装備している時点で貴方はシモン様の生まれ変わりなのは間違いないのですが…あ」


そんな事を考えていると俺とレイちゃんの近くでブツブツと何か言っていたアンリエッタさんが何かを思いついたのかレイちゃんの近くまで行く。


「姫様、少しお耳を…」


「?」


そして、レイちゃんの頭の狐耳に顔を近づけて何かをボソボソと言うと、レイちゃんの尻尾が一気に真上に伸びる。


「…確かに、それは証拠になりますね。流石はアンリエッタです!」


「主君の役に立てて、光栄の極みです。姫様」


その後にレイちゃんが喜びの声と共にアンリエッタさんにお礼を言うと、自分の右手に着けている手袋を外しながらまた俺の方を向いた。


「渉さん、具体的な証拠があれば良いんですよね?」


「…え、あるの?」


「はい、今から証拠を出しますね♪」


レイちゃん俺に向かってそう言い、俺は証拠があるのに驚いているとレイちゃんは笑顔で証拠を出すと言い、徐ろに自分の首元に手袋を外した右手で触る…次の瞬間、


ジャララララララ…


「熱!?」


「「「!?」」」


「ふふ、コレは決定的な証拠ですね♪」


何と俺の首元がまた熱くなったと思ったらそこから『鎖』が出てきてレイちゃんの方に向かって伸び、レイちゃんの首にはいつの間にか金具付きの赤いチョーカーが装備されていてその金具に鎖が固定された。

その光景を見た獣人以外の全員は驚き、特に桜と夏美は俺に近づこうとしたが父さんに止められていた。


「…は?…首元から鎖が出てきた??」


「…『』」


俺は自分の首元の熱かった所から金属製であろう黒い鎖が出てきたので触ってみるが、ガッツリ体内から出てきているのか皮膚が引っ張られる感覚に痛みを感じていた。

するとレイちゃんが喋り出した。


「王家の一族は獣人である為スキルは一つしか持っていません…が、それは表向きの話です。

実は王家には生まれた子供がスキル持ちの場合のみを一緒に持って生まれてきます、つまり私やシロエとクロエは獣人だけどスキルを二つ持っているんです。

それがこの鎖と金具付きチョーカー、私…いや私達アイルランド獣帝国初代皇帝から一族が着々と受け継いできたErrorスキル『必ず繋がる私と貴方』です」


「Error…スキル!?」


その言葉にシロエちゃんもクロエちゃんも首に手をあてる、すると2人ともレイちゃんと同じ金具付きのチョーカーがいつの間にか巻かれていた、俺はそれを見てからレイちゃんを驚愕の眼差しで見てしまう。まさかレイちゃん達がErrorスキルを持っているとは思わなかったが…今はそれどころでは無い。


「Errorスキルって自分の子供に遺伝するのか!?」


「あら、Errorスキルを知っているんですね…まあいいです、質問に答えるならそれはYESですね。

両親のどちらかがErrorスキル持ちの場合、確実に難産にはなりますが間違いなくErrorスキルは他のスキルとは別で必ず受け継がれます、ですが生まれた子にスキルがない場合はErrorスキルも受け継がれません。だから私達王家は一夫多妻制で子供を沢山つくり、このスキルを王家の一族の証として代々受け継いでいたんです」


レイちゃんは驚愕している俺に淡々と話を続けてきた。


「そしてこのスキル、『必ず繋がる私と貴方』はスキル所持している人物にとっての運命の相手…つまり婚約者の首元からその人の『魂』に鎖を打ち込むスキルなんです。このスキルは基本1人の人物にしか使えません、能力は発動すれば鎖を打ち込んだ婚約者の居場所を確実に探せたり、鎖を引っ張って自分の元に引き寄せるスキルなのですが…もう一つ使い方があります。それが鎖を打ち込んだ相手が死んだ場合、私は他に新しい人に鎖を打ち込む事はできませんが代わりにその人の魂に鎖を残し、必ず私が生きている間に生まれ変り、打ち込んだ鎖の力でまた巡り合って首のチョーカーの金具に鎖が繋がるという能力があるんです」


「過去歴代皇帝の中ではこのスキルのお陰で死んだ婚約者に巡り合い、歳の差がありましたが無事に結婚された話はよく聞きます。ですから私達獣人は死んだら生まれ変われる事を確信しているんですよ、何せ王家のErrorスキルのお陰で実際に証明されましたからね、一般常識なんです」


「…うっそーん」


俺はこれ以上ない位の証拠の前にその言葉しか出なかった。


「!?」


だが、そんな俺だが急に首の鎖が引っ張られてなす術なくレイちゃんの胸に飛び込んでしまう。


「だから…貴方は私の愛している婚約者のシモン兄さんの生まれ変わりなんです。

だからこそ、私は今日初めて会ったばかりの貴方にこう言わせて下さい」


彼女はそう言って俺の耳に顔を近づける。

そして…









「例え生まれ変わりのせいで記憶がない貴方でも、私はシモン兄さんの生まれ変わりである貴方を愛し、心から求めています。だから私と結婚してください、勿論すぐにはお返事は返してもらえなくて大丈夫ですしコレからあなたの事を教えてくだされば嬉しいのですが…貴方と私は魂に打ち込まれた鎖で繋がれた運命の相手同士な事は忘れないで下さいね♪」


そう甘い声で耳元で囁かれ、俺は遂に頭の処理が追いつけなくなって意識が吹き飛んで気絶してしまった。

こうして俺達〈狩友〉の3回目のダンジョン制覇は成功したがそれ以上の混乱を撒き散らした後に俺の気絶で幕を閉じた。

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