第198話

〜〜 ??? 〜〜


「…ん…あれ?…何か『暗い』?」


無事に次の階層に行くポータルに到着した俺達〈狩友〉はポータルに人がいない事を確認してから乗り物ごとポータルから転移した…までは良かった。

しかし問題が発生してしまった。


「おかしいな…事前に手に入れた情報だと中層は砂漠地帯のはず…それに夜になるまで時間はまだあるから辺りが暗くなるはずは無い…」


俺はそう言いながら目を開けて周りを見ようと顔を上げた…が、直ぐに周囲の状況を見て驚愕した。

何故なら…


「…ど、『洞窟』!?」


そこは『光る青い粒子を含む霧が発生していた洞窟の中』だったからだ。そして何より重要な事はそこではなく、


「桜…叶に一二三!…嘘だろ、俺以外全員!」


俺以外の全員の意識がなく、それぞれの場所で倒れ込んでいた事だ。


(どうなっているんだ?この青い粒子が混じっている霧が原因か?…いや、そもそも霧の情報以前に洞窟なんて情報はネットには無かった…クソ!)


俺はそう思うと急いで荷台から降りて運転席にいた夏美をお姫様抱っこして荷台に乗せる、すると俺は未だ配信している4台のドローンが目に入る。

それを見た俺はある案が浮かんだ。


「…皆さん、緊急自体が発生しました。俺以外の全員が意識不明の状態です。ですので俺が運転してポータルまで行きますのでポータルが画面に映ったりしたら教えてくれませんか?」


俺がそう言うと、全てのドローンのコメントが肯定的なコメントで埋め尽くされた。

俺はそれを見てからまた頭を下げると運転席にいきエイセンのエンジンを起動する。


「絶対に助けるからな、それまで死ぬなよ皆!」


そして俺はエイセンを急発進させる、今俺の手に5人と2匹の命がかかっている…絶対に助けないといけないと考えながら俺はポータルを探すのだった。



〜〜 午後7時頃 〜〜



「…んお?…あれ、俺は何をして…


「動くな叶、あとしっかり息をしろ。しばらくしたら体の痺れがなくなると思うが、それ以外に身体に何か変なところがあったらすぐに言ってくれ、キチンと見るから」


…渉?」


あの後なんとかポータルを見つけた俺。そしてポータルで拠点を展開し、名無し達全員と協力して叶達を運んでから中庭に干し草と布で即席ベッドを作り看病を開始、そしてたった今叶が意識を取り戻した。


「…叶、無事で良かった」


「…一二三も同じ状況か…てか、渉以外全滅かよ…」


隣のベッドで横になりながら一応ネットで買っておいた登山用の酸素スプレー缶を友狐達に使ってもらいながら叶の無事を確認して安堵している一二三を見てからゆっくりと周りを見て状況を確認していく。


「あらあら桜ちゃんに夏美ちゃん、病み上がりだから無理はいけないわ」


「ありがとうキナコ、でもボクはもう大丈夫。ようやく体の痺れもなくなってきたからね」


「アタシも、まだ手の痺れが治らないけどさっきよりは楽になったね」


まず、一番最初に起きた桜は休憩して回復したキナコに支えられながら中庭のベンチに座っていて、


「…アァ…」


「たく、なにやってんだこのバカは…やっぱりオレがいないとダメダメだなコイツは…ソコガカワイインダケドナ…///」


簡易ベッドの上で未だ伸びているもち丸を見て頭を抱えつつ文句を言うコク糖と、


「キュ〜」


「クッ、せっかくのモフれるチャンスなのに痺れてモフれない…無念だわ…」


同じく簡易ベッドで寝ている名無しの子とミリアさんがいた。

つまり俺以外は全員倒れた状況を理解した叶は苦い顔をしていた。


「くそ、何がおきやがった…!」


叶がそう言って悔しそうにしていると俺はあるビンを叶の前に持ってくる。


「…それは?」 


叶はビンの中にある光る青い粒子を含む霧を見てそう呟いた。だから俺はハッキリと言う。


「…コレが、俺以外の全員が倒れた原因だ。この霧に含まれている青く光る粒子…こいつを少しでも吸うと1分以内に全身が麻痺するんだよ」


「…こいつが!?」


俺の言葉に目を見開いてビンを凝視する叶、俺はそんな叶を見つつ話を続けた。


「俺の拠点は拠点に回収した物を解析できる力もある。だから皆の容体が安定してから霧をビンに詰めて回収して解析した。だから詳しくこの粒子の事がわかったんだ」


俺はそう言ってビンを自分の目の前に持ってくる。


「この霧に含まれている光る粒子はだ。

この胞子は霧に含まれる水分と一緒に空中に舞い生き物の呼吸を利用して肺に侵入、その後胞子が肺から生物の神経に流れる電気を勝手にして流して体を麻痺させる。そして胞子を吸い込んでから約1分で全身が麻痺し、その後1時間以内に対処しないと肺にある全ての神経が増幅された電気に耐えられず神経が死ぬ。そうしたら生き物は酸素が吸えずに死ぬか痛みで死ぬしかない…その後は死んだ死体を栄養にして新しいキノコの苗床になる、超危険なキノコだな。

だが、幸いこのキノコの胞子は呼吸以外に体内に入るような事は無い、それに霧に含まれる水分が無いと呼吸の際に出る二酸化炭素と一緒に口から出る。そして二酸化炭素と一緒に出た胞子はそのまま死滅してしまうんだ。

だから霧がない場所に…俺の拠点やポータルの範囲内に入れば後は自然に呼吸をすれば助かる…んだがな…このダンジョンの中層が正にこのキノコの為にあるような地形なんだよな…」


俺はそう言って目を細めた。


「叶、落ち着いて聞けよ…









この中層の環境は、砂漠じゃない。だ」



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