第196話

夏美が投げたのは以前俺が作った閃光玉だ。だからあの光がどれだけヤバいかは俺が1番知っている。だから夏美達をかばいながら眩しくなるまで匿っていると、耳に聞こえていたモンスターがいた方向から音が聞こえなくなって直ぐにエイセンがブレーキをかけ始めたのに気がついた。


「皆、トドメをお願い!」


そして、完全にエイセンが止まると運転席側にいた夏海がそう叫ぶ。


「…夏美、使い方が危なすぎるから後で反省会な!」


「お、ボーナスタイム発生した!」



それを聞いた俺と一二三は直ぐにそれぞれ守ったり盾にしていた人物から体を離して荷台から飛び降りる。

そして俺は忍者刀を抜刀してから超音波モードを起動、そのまま倒れて口から泡をだしているモンスター達に向かい突撃した。


「だが、狩りにおいては卑怯は上等!人は知恵で戦う生き物だから…な!」


俺はそう言いながら次々と倒れているモンスターの首を切断してその命を刈り取っていく。


「Let's首折りFever!」


そして一二三は次々とモンスターの首を平均190°くらい回してから背中に顔面をくっつけるようにへし折りながらモンスターを処理していく。

しかし…


『ヒッ…ヒヒン』


後方にいた指揮官らしき4体の馬頭のうち2体がそれぞれ自分の獲物を杖にして立ち上がり始める。

だが、もう遅い。


「遅い、服に汚れが付く前に『お掃除』しなきゃ」


後から追ってきたミリアさんが竹箒で一体のモンスターを殴って弾き飛ばし、もう一匹は両手で手元の部分を『上下に分離』させて、


「ゴミは処分ね」


『ガ…ガ…』


竹箒に仕込んでいた透明度が高い黒い水晶みたいな物でできた刀らしき物で馬頭を唐竹割りして縦に二分割した。


『グ…ア…』


しかし、弾き飛ばしたモンスターはまだ生きていたらしくそのままフラフラと立ち上がり、逃げるためでだろうかゆっくりと後ろを向いて歩き出そうとしていた…が、それは叶わなかった。


「はい、ドーン!」


『ブモ!?』ボキボキ…


夏美が後ろをモンスターの背骨辺りに蹴りを一撃入れたからだ。そして蹴られた背骨が音をたてて砕け、前のめりに倒れ込む。


「ゴメン、せめてアタシの武器の性能チェックの為にその身で受け止めてね?」


そのまま夏美は背中に右足で一発のストンピングをした、すると…


ズドンッ


『ガァァァ…』


いきなりモンスターが下に沈むように食い込み、地面が少し砕ける。

その後は右足の一部が横にズレて『アルミ菅のような何か』が飛び出てくる。


「…ミリアさんの仕込み刀が入った竹箒はいいとして…夏美の義足に仕込んだ武器の『レッグキック』はやり過ぎたかな?」


「武器を作る際にロマンは大事。でも今はモンスターに止めを刺すのが優先だよ渉?」


俺は足にまた同じ缶のような物を缶が出てきた場所に入れてズレた部分を元に戻している夏美を見ながらそう呟くと、近くまで来ていた一二三にそう言われてしまった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『ク…ォ…』


「最後の一匹の処理完了。渉、回収よろ」


「ほいほい」


俺は最後のヴェロルの首をへし折ってから俺に回収を頼む一二三の声を聞いてからそのヴェロルを拠点に回収する。

そして周りを見て回収し忘れがないか確認し始めた。


「…うし、回収し忘れはないな…てか、コイツら絶対に浅層にいたらダメな分類だろ…ただでさえヴェロルだけでもキツイ人にはキツイのにそれを騎馬代わりに攻めてくる馬頭とか前代未聞だろ…」


「多分、昔渉にお土産にした稲妻兎みたいにこの浅層で出てくる希少なモンスターだと思う、でも希少なモンスターでもハズレなタイプのモンスターだね」


俺は周囲を警戒して安全を確認してから襲ってきたモンスターについて愚痴を言うと近くで馬頭達が持っていた武器類を見ていた一二三がそう言ってくれた。

確かに、昔一二三からお土産としてもらった稲妻兎は深層で出る希少なモンスター…つまり激レアなモンスターだ。

つまりこのモンスターの集団がこの浅層の激レアモンスターと考えるなら手に入れた地図にも載っていないのも理解できるし浅層なのに中層レベル位に強かったのも理解できる。特にヴェロルの機動性と馬頭の統率力が合わさるだけでこれ程厄介になるなんて予想外だった。


「…次のダンジョンの攻略の際ははエイセンは使うのは一旦止めて、耐久性と戦闘面に優位に行動できる点を考えた奴を作る必要があるかもな…でも、その点を重視すると機動性と操作性が犠牲になるからな…悩み所だな」


「まさかの新しい乗り物を作ろうとしてて草。

でも、取り敢えず今はこの武器の山を武器は回収するべきだと思う。見た感じこの武器の山の全ては主に鉄でできているみたいだから溶かせばインゴットにして装備やらの補修に使えると思うな」


俺が顎に手をあてながら考え込んでいると一二三が馬頭の武器を雑に積んで山にしている所から金棒を引っこ抜いて俺に見せてくる。

なるほど、確かに一二三の言っている事は一理ある。

あの山の武器達この場に捨てていくには勿体無い位に鉄製の武器がある。あの武器達を溶かせば武器や防具、エイセンの補修に使えるのは間違いないだろう。


「ナイスアイディアだ一二三。早速回収するわ」


「うん、なら私は先にエイセンに戻るね。叶達が気になるし」


俺が一二三の案に賛成すると一二三は無表情になりながら止まっていりエイセンに向かって走り出した。


「ああ、叶は気つけに腹パン一発入れて起こせばいいが夏美は優しくしてやれよ」


「✌︎(˙-˙)✌︎」


俺が武器を回収しながらそう言うと、一二三は振り向いて無表情のダブルピースをしてからまた走り出した。

因みに今エイセンの荷台は…


「キュー…」


「よしよし、頑張りましたね」モフモフ


閃光玉の光を少し受けてしまったのか可愛い声をだしながら気絶している名無しの友狐にそれをモフりながら優しい声をかけているミリアさん。


「…」


「渉…積極的過ぎだよ…まだボク達は…」


「なあ、もち丸。アタシは叶はともかく桜は一発殴れば治ると思うんだが?」


「待つですよ夏美のアネゴ!桜のアネゴはダウン中なのに追撃は流石にやり過ぎですよ!?」


そして、友狐に顔面を完全に塞がれて息ができずに酸欠で倒れた叶に何故か顔が赤くなって倒れた桜。

そんな桜を見て目にハイライトがなくなっている夏美、そんな夏美を全力で止めにはいっているもち丸がいた。

うん、実にカオスである。

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元の現代に近い世界に何故か転生しましたがこの世界にはロマンが足りません 〜狩りゲーがなくダンジョンがある世界にて〜 @katuonotatakpe

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