第195話

この世界は現在拳銃よりも弓やスリングショットの方がの需要が高い。何故ならダンジョンでは銃は愚かクロスボウは動かないし火薬すら使えない状況なのだ、だから弓やスリングショットなどの原始的で機械類を使わない遠距離武器の需要が高いのだ。

だが、この世界の日本でも銃刀法はしっかりあるためある程度の武器などはダンジョン内、もしくはスタンピード発生時や授業などによる訓練などの一部除きしっかりと取り締まられていたりするし一部の危険な武器や道具は製作や所持に免許がいる。

そんな中俺が作ったクロスボウはというと…勝手に制作したり所持したりする事はガッツリ違法だったりする。

理由は単純で簡単に言えば本来ダンジョンでは販売されているクロスボウは使えないから別に規制を緩くする必要がない、そしてこの武器は簡単に人を殺められる可能性がある為この武器は拳銃並に危険であると判断された為であり、制作と所持にはかなりの時間をかけて幾つかの資格を入手した後に国の厳しい監視の元でしか使用できない一品なのだ。

しかし、そんなに厳しい条件とかがあるにも関わらず今回何故俺がこの武器を作ったか?…それにはキチンとした理由がある。

実は…


「叶、コイツに関しては別に警察とかには捕まらないから安心しな。

なぜならこの武器は『自衛隊の新しい装備の試作品』なんだ、だから今回は性能チェックを兼ねて使用しているんだよ。今回のダンジョン攻略の際に何処まで通用するのか判断して、正式に自衛隊のダンジョン内専用装備としての量産型を作る為にな」


俺はそう言いながらもう一騎のヴェロルの眉間にまた矢を打ち込んだ。

そう、今回は自衛隊と国防省からの要望でより安全にモンスターを間引く為に遠距離で連射できる武器の開発を依頼されたのだ。

その依頼を聞いた俺は夏美の主武器の件もあり心良く了承、『Gourmet・Hunter・World』からこの武器を選んで製作した訳である。

故に今回は自衛隊と国防省から国と警察機関に事前に連絡を入れて許可が出ている為に俺のこの行為は違法どころか寧ろ国防の為の行為として使用している扱いになっているのである。

つまり、今回だけは試作品の性能テストという建前で合法的にクロスボウを使えるのだ…まあ、特別扱いは今回だけだから今後も使用するには複数の資格とか許可が必要になるのは変わらないがな…


「ていうか今は俺に気にする余裕無いだろ?そろそろ叶の短弓の射程範囲内に入るぜ?」


「…後でミリアさん共々詳しく聞くからな!」


俺はまたボルトを引いて弦を張りながら叶に向かってそう言う。叶はその言葉を聞くと未だ現在な27騎のほうを見てから苦い顔をしつつ短弓を構えてそう吐き捨てた。

その後は俺と叶で7騎くらいは減らし、更に一二三のスリングショットの射程範囲内に入ったのでさらに追加で4騎を倒したのだが、残り16騎が徐々にエイセンに迫ってきていた。


「渉、後方にいる指示役っぽい個体は狙えるか?俺はまだ狙えない距離なんだ」


「…無理だな、アイツら完全に射程を把握してやがる。あんなに頭がいいのが浅層に出てくるのは完全に人を殺しにきているとしか言えないな」


俺は十二発目を打ってから下に付いている矢筒を外して、もち丸から替えの矢筒と交換してもらいながら叶と会話する。

確かにたった今一騎を倒したので残り15騎になったが、内4騎は仲間内の中で1番射程距離が長い俺のクロスボウですら当たらない可能性のほうが高い距離を維持しつつ、11騎の仲間に大声で指示を飛ばしている。おそらくアレが言っていた4騎の司令役なのだろう、明らかに他の個体とは知能レベルが違う。


「くそ、どうする…


「皆、目を閉じて!」


…え、どしたのなつ」


俺が今後の攻撃をどうするか決めかねていると不意に運転しているはずの夏美がそう叫んだ、そして直ぐに俺の顔の横を通り過ぎるように『丸い何か』が見え…って!?


「アレはやばい!全員目を守れ!!」


「え!?ちょっ!?!?」


「イダダダ!僕はボールじゃ無いですっブォ!?」


俺は丸い何かを理解すると直ぐにクロスボウを足元に置いて近くにいたもち丸の頭をアイアンクローでつかみ、更に桜の頭に優しく触れるように手を回した後に一緒に俺の胸に抱き抱えるようにして守る。


「『近くにいた…お前が悪い』と言う訳で名場面リスペクトガード」


「緊急事態と判断、全身を使いフェイスガードになる事で叶様と自分を同時に守る事を実行します」


「フガァ!?」


俺の叫び声を聞いたのか一二三は何処かで聞いた事のあるセリフを言いながら叶の影に隠れ、名もない友狐は某エイリアンのアレのように顔面に張り付いて叶を守りつつ球体の反対方向をむいた。

俺も目を瞑る前にミリアさんと夏美を見たが、ミリアさんは投げナイフを構えながら夏美の方を見ていて、夏美は左手の人差し指にプラスチックのリングをつけながら前方を向いていた。

そして、俺が目を瞑ってスグに…


カッ


『『『ギャアアアァアアアァ!!!』』』


かなり眩しい光が周りを包み、大量の悲鳴と同時に様々な方向から何かが倒れていく音が聞こえてきたのだった。

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