第194話
俺達は無事に安全なポータルを発見、そして遂にエイセンを拠点から出す事ができて本格的にダンジョン攻略が始まった…のだが…
「…めちゃくちゃ気に入られたな、叶…」
「ああ…モフモフで気持ちいいから特に気にしないが、本当にこのまま連れて来て良かったのかな…」
荷台に一緒に乗っている俺と叶がそんな会話をして、更に一緒に乗っている桜と一二三も俺と一緒に叶の頭を見続けた。
何故なら…
「…視界良好、警戒任務を続行」
肩車の状態で叶の頭に引っ付いている茶色の地毛に両手と両足、後左耳と背中に歯車の模様が白い毛になっている綺麗な名無しの友狐がいたからだ。
「あの、そろそろ離れてもらっても…
「否定、キナコ様達が戦線離脱されたので周囲を警戒する役が必要と判断、故に先に必要な睡眠時間は確保できましたので此処で警戒任務を継続するのが最適と判断して行動しています」
…あ、はい」
それに先程から叶とかが頭から離そうとしてもこんな感じの事を言って離れようとしないし、叶に話しかけられた時限定で尻尾まで振って会話する始末だ。
「叶、正直に言ってくれ。その子…結構邪魔じゃない?」
俺がそう叶に聞くと、叶は苦笑いを浮かべる。
「はは、確かに気持ちいいが少し重いんだよね…けど、『何故か嫌じゃ無いんだよな』。不思議な事に」
「同意、私も何故かこの方と一緒にいるのが最適と本能で判断いたしました。
後、私はタマモですので重いと言う言葉は禁句ですよ。お仕置きが必要と判断、即時実行します」
そう2人が言ってきたと同時に叶のおでこを肉球で叩き始める名無しの友狐、俺はその様子を見た俺は直ぐに隣で両脇に筒のような物を装備していて、アタッシュケースを座布団のように下にひいて座っているもち丸を見る。
「もち丸、コレって…」
「恐らく…ダンナが考えている事はあっているですよ。
僕もあんな感じだったですし…」
俺がそうもち丸と話していた…その時だ。
「…!」
例の友狐が急にオデコを叩くのをやめたと思ったら今度は耳を左右に動かし始める、そして一回叶の肩から降り始め、
「コレ、借ります」
「え?」
叶の分の双眼鏡を手に取ってからまた叶の肩に戻って、今度は双眼鏡で周囲を見始めた。
その後しばらく後ろの方を見てから…
「緊急報告、今運転して下さっている夏美様を時計の文字盤で12時とし、時計回りで4時、5時、6時、7時方向から敵が接近中。確認した所、馬のような顔が特徴的な人型モンスターが恐竜型のモンスターに『騎乗』してこちらに向かって来ています。数は全部で25…いや、後方に司令役と思しき個体を確認、全部で29騎です。
目視できる距離まで大体1分弱程度…皆さん、お早めに戦闘準備を」
サラッと爆弾発言をしてくれた。
「「「「!?」」」」
かなりヤバい事をサラッと言ってくれた事により俺達全員に緊張が走り、全員慌ただしく戦闘準備に入る。
「もち丸!」
「ほいダンナ、すぐに撃てるように装填済みですよ!」
俺がもち丸に声をかけるともち丸は聞いてから直ぐに動いたのか、下にしていたアタッシュケースから降りて蓋を開けて中にあった武器を俺に渡してくる。
俺がそれを受け取ると同時に後方から地響きのような音が聞こえ始め、急いで俺は『鷹の目』を使いその音の方を見て、俺は絶句した。
「…マジかよ、それアリなんだ…」
俺がそう言うと同時に他の面々もモンスターの姿が見えて来たのか、同じく絶句している。
そう…
ドドドドドドドド…
『ヒヒーン!』
『ギャウ!』
「騎乗するために革製の装備をつけたヴェロルに乗った槍とか装備している馬頭とか…確かに馬の顔が特徴だけど予想しにくいって!」
騎乗しやすくする為に手綱付きの革鎧を装備しているヴェロル。
そしてその背にまるでアフリカ辺りにいそうな半裸で腰蓑、牙などの骨でできた装飾品を装備した泥などで幾何学的な模様を全身に描いている馬頭が木と石でできた槍やら棍棒とか持ちながらこちらに向かって突撃してきているのだから。
「チィ!すまんが射程は俺の方があるから先に迎撃させてもらうぞ叶!」
「おう!…てか、お前遠距離武器を用意してい…た…」
俺は後手に回ってしまった事に舌打ちをしながらも叶より前に出て用意した武器を構える。
しかし、叶は俺が用意した物を見て何故か言葉のキレが無くなっていたようにも聞こえるが今はそんな事は気にしない。
ただでさえ29騎、つまり58体のモンスターが一度機に襲ってきたのだ。今何騎か減らさないと後々大変な事になるのは目に見えている、だから反応する些細な時間も今は惜しい。
「悪いが話は後でするよ…うし、射程範囲内」
俺は武器を構えつつそう言う。そして射程範囲に入った一騎の足になっているヴェロルの眉間に狙いを定めて『引き金を引く』。
ダンッ
『ギャ!?』
そして放たれた短く加工された『矢』がヴェロルの眉間に見事に当たり、騎馬になっているヴェロルが体勢を崩した。俺はそれを自分の目で確認してからボルトアクション式のライフルのように収納して隠していたボルトを出して引き、弓の弦を張る。それと同時に次の矢が下から出てきて装填された状態になる。
「ふぅ…ボルトアクション式で特殊な矢筒をマガジンのように下につければ最大で十二本の矢を素早く打てるようになる『クロスボウ』…『ロビン・試作型』…マジで作っておいて正解だったな」
「いや、日本では取り締まりが厳しくて危険な武器を軽々如く作るやな!しかもロマン仕様に魔改造してるし!?」
俺がまた一息いれてクロスボウを構え、サイトを覗きながらそう呟くと隣にいた叶に頭を叩かれてしまった。
今は遠慮して欲しいところである。
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