第190話

〜〜 東京タワー東京タワーメインデッキ 〜〜



「…あの…本当にお疲れ様、渉に夏美」


「あの女…やっぱイカれてたわ…」


「アタシ、渉以上のヤバいやつに初めて会ったよ…」


取り敢えずイベントは何とかこなした俺達は、予想外なこともありつつ何とか東京タワーのメインデッキに入った。そして俺と夏美は到着次第満身創痍で椅子に座りながらあのイカれ女について文句を言い、そんな姿を見た桜が声をかけてくる。


「大丈夫だ桜。誰もあのイカれ女の手綱をキチンと握っていなかったのが原因だしな」


俺はそう言って桜を見た。

まあ、簡潔に言えばあの女がまたやらかした。イベント終了後に整備員達の所にいきシートベルトの設置について実演していたら会場にもっていった機体のコックピットには無かった謎のレバーを発見した。俺はそれを試しに引いたら機体がいきなり中腰になったと思ったら脚部の足がいきなり縦に割れて四脚になったのだ。更に両腕の手首ら辺から射出して壁に打ち込むタイプに見えるワイヤーフックみたいな機構が出てきた。俺は急いで件の女性を見るとサムズアップしながら、


「知的好奇心が抑えられませんでしたのでやっちゃいました!できればその形態について色々とアドバイスをお願いします師匠!」


と言われたので機体から飛び降りて直ぐにアームロックをかけてしまった。

その後に急いで全機体の緊急メンテをしたら可変した機体と会場にいた1機を除く13機の内、3機も同じく可変機構を内臓している事が判明し更に追加でアームロックをしてしまったのは別に許される行為だと思う。

その後は夏美に機体データの整理をお願いしたら彼女は色々と夏美の作業に口出しをしまくったので整備班長からアイアンクローを受けたり、機体のモーター部分に火薬を用いた自爆機能が見つかったので「自爆機構はロマンです!」と笑顔で言った彼女に整備班長がアームロックをかけたり、「コレを使いましょう、きっとお客様も喜びますよ!」とか言って何処からか変なUSBメモリーを持ってきたので夏美に調べてもらったらとある操作をしたら機体のリミッターが外れるようになるプログラムだったので整備班長に四の字固めをかけられながら問い詰められたら「リミッター解除は男のロマンなんです、偉い人にはそれが分からないんですよ班長!」とか言って更に力を込められた四の字固めを受ける羽目になったりと大変だった。


「…取り敢えず、この件はもう片付いたし…もち丸達を呼ぶか、皆の配信開始までに作戦会議を終わらしたいしな…」


俺はそう言って椅子に座りながら足踏みをする、すると俺達が乗ってきたエレベーターの方に霞が現れ始め、拠点が展開された。


「やっと出番です…って、ダンナ?何でそんなに疲れているんですよ??」


「ふう、やっぱり狩りの時の装備を着ると気合いが入る…て、どうしたんだダンナ?」


「あらあら、ダンナさん。お疲れのようですがどうしたんですか?」


拠点が展開されるとすぐにもち丸達が出てきてくれたので直ぐに拠点が閉じる。

そして、それぞれの装備を着たもち丸達は俺の姿を見て心配そうに駆け寄ってきた。


「ああ、問題ないよ。少し疲れただけだからな」


「ならいいですよ。でも、狩りの前の体調管理はしっかりとしたほうが良いですよ?」


「わかってる。ありがとうもち丸」


俺はそう言って首にマフラーを巻いて目にゴーグルを装備し、木で出来たシャベルを背中に装備しているもち丸の頭を撫でた。


「全く、しっかりしてくれよダンナ?」


その光景を見て、江戸時代の火消しの様な服に木槌を装備したコク糖が腕を組みながら呆れていて、


「あらあら、ダンナさん。お疲れなら私がギュッと抱きしめてもいいですよ〜?」


割烹着姿で花柄のフライパンを装備したキナコが座っている俺の膝に登ってきて真正面から優しくハグをしてきた。


「…皆、ありがとう…大丈夫、俺はどんな状況でも狩りだけは手を抜かないし慢心もしない…そう心に誓ってるからな…」


「…フッ、いい顔してるなダンナ」


俺がそんな状況の中で真顔になりそう告げるとコク糖がニヤけながら上機嫌になった。

そんなやり取りをしていると、別行動をしていた叶達がこちらに合流した。


「ほい、コレ頼まれてたここの購買でうっているダンジョンの浅層の地図な」


そう言って叶はラミネート加工された地図を差し出してくる。


「ありがとう」


俺はそれを受け取ると早速地図を読み始めた。


「…一応、浅層は事前に集めた情報と間違いはなさそうだな夏美」


「ああ、間違いないね」


俺が地図を見ている隣で同じくミリアさんに地図を買ってきてもらったので俺と同じく地図を読んでいる夏美がそう言う。

どうやら事前に集めていた情報が無駄にならないことになりそうなので若干の嬉しさすら感じてくる。


「…叶、配信開始まで後何分だ?」


「ん?…後8分って所だな。確か配信時間は皆と相談したから全員同じはずだぜ?」


不意に俺が地図を見ながらそう叶に聞くと叶は自分のスマホをセットしたドローンを見てからそう言う。


「8分…十分だ。なら今日の作戦を今から言う、聞き逃すなよ?」


俺はそう言って地図を膝にいたキナコに渡してから一旦下に降りてもらいつつ、そのまま床に地図を広げてもらう。


「いいか、まずは…」


そして俺はそのまま地図を見ながら全員に作戦を伝える。

その後は無事に配信がスタートする前に作戦を伝え終わり、各自の配信が始まった。そして俺達は数分間話し合った後にダンジョンに入るために入り口まで歩いて向かう。

そして、ついに俺達〈狩友〉は東京タワーのダンジョンに挑むのだった。


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