第191話
〜〜 東京タワーメインデッキ内ダンジョン 浅層 〜〜
「…やっぱり、当たって欲しくはなかったが…当たっちまったか…」
「うん…というか想定より多いね。アタシが想像していた人数の3割り増しくらい」
俺は『鷹の目』、夏美は双眼鏡を覗きながらそう話し合う。
「うわ…マジで居る…そこまでして目立ちたいのかね?」
「配信者、配信者、装備が貧弱で一眼レフ持ってるから多分密着取材狙いの記者、配信者、浅層にしては防具はガチ過ぎるけど武器は見当たらないからお宝が目的の奴、配信者、装備がほぼ水着みたいな痴女…おそらく色仕掛けするタイプのヤバい奴、配信者…」
そして俺達と同じ風景を双眼鏡で見ていた叶は呆れていて同じく双眼鏡で見ていた一二三は今見ている光景にいる人物の装備やドローンの有無で大体の予測をつけ始め、そんな俺達の周囲を桜とミリアさんともち丸達が警戒しながら聞き耳を立てていて、そんな姿を状況だ。
何故こんな事をしているのかというと話は数十分前に遡る。
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「まず、今回は前回みたく1番近い帰還用ポータルで乗り物を拠点から出すのは一旦保留としたい。そしてもち丸、皆に用意した物を配ってくれ」
「了解ですよ!」
俺はキナコに広げてもらった地図にあるダンジョンに入って1番最初に到着できる帰還用ポータルの場所を指差しながらそう言うと、もち丸に用意しておいた双眼鏡を全員に配るように指示する。
「渉、それってどういう…
「はい、どうぞですよアネゴ」
…ありがとうもち丸ちゃん。
それで、改めて聞くけどそれってどういう事?何か理由があるの?」
もち丸から双眼鏡を受け取りつつ俺に質問してくる桜、そして全員に双眼鏡が行き渡るのを確信してから俺は話を続けた。
「ああ、実際に目にしたわけでも無いし確信もない。だが今の俺にはある事が気になって仕方がないんだよ」
俺はそう言って真剣な眼差しで地図を見る。
「前回はサプライズでパーティを組んだ訳だし俺のスキルの件はその時までバレてはいなかったからそこまで注目されてはいなかった…だが、今回の場合は俺のスキルはバレているし何より事前に入るダンジョンを告知している。
何よりこの一年で浅草のダンジョンみたいにマナーが悪い奴が増えてきたのを俺は知ってるんだよ。
だから…」
そして俺は一息入れてからハッキリと聞こえるように言う。
「だから、事前に迷惑系の配信者や俺達に密着取材しようとしている配信者や記者…最悪の場合、戦わずについてくるだけが目的…つまり、ゲームで例えるならキャリー行為をしてもらうのが目的の人物がいる可能性があるのさ」
「…なるほど、確かにその可能性はあるね」
俺が自分の考えを口にすると夏美は真剣な顔になりながら一緒に地図を見る。
日本のダンジョンは盛り上がっているのは事実だが、その分マナーの悪い奴やルールを無視する奴もいるのは事実だ。だからこそ今回のダンジョン攻略は事前に発表した分、そう言った人達が食いつくのは目に見えていた。
「俺の拠点はダンジョン内ではポータルか帰還用ポータルの効果範囲内でしか展開できない、そしてもち丸達みたいな友狐達以外が拠点内にいる場合は拠点を閉じる事ができないのは前回のダンジョン配信やダンジョンに潜ることを告知した番組でバレているからな。
前にも言ったが俺の拠点には俺の技術の全てがある、だからそう言った人達を俺の拠点には入れたく無いんだ。
俺の作った物や収集している素材を盗む、勝手に拠点の設備を荒らす、友狐達に迷惑をかける、出ていく代わりに無茶な要求をしてくる…例を考えただけでも頭に血が上ってくる事しかないからな…」
俺はそう言って目を細めながら静かに怒りを燃やし始める。
「さらに許せないのはさっき言ったキャリー行為…つまり、俺達にや身の安全や身の回りの世話をさせつつダンジョンを制覇して宝や名声を得る為に行動するかもしれない人がいた場合だ。
俺は別にキャリー行為を否定するわけでは無い、今は弱い人が強い人に守られつつ少しずつ強くなるから俺は許せる。
だが、ただ利益だけを手に入れるだけに他人に寄生してキャリー行為をするのだけは許せないんだ。
そんなことが罷り通ってしまえば本当に人として成長できなくなってしまう、もし寄生される側が全滅した場合寄生していた人はもう死ぬしか無いんだ…そんなくだらない理由で命を落とす事は絶対にあってはいけないんだよ」
俺はそう言って顔を上げる。
「だから、もしかしたら俺たちがダンジョンに入る前に入ってきた人がポータルで待ち構えているかもしれないんだよ、だから確証はないが今回に限り浅層の帰還用ポータルに入る前に偵察をしてから入る事にしたいんだ。
コレは俺の完全な私情だから別にそれをしなくていいと言うのであれば今回も1番近いポータルでエイセンを出す。
だから、皆に聞きたい。偵察をしてもいいと思う人は挙手をしてくれ」
俺がそう言うと全員が手を上げた。つまり満場一致で俺のお願いは聞き入られた事になった。
「ありがとう、皆…よし。もち丸達、安全なポータルが見つかるまでの間の足は任せたぞ!」
俺がそう言うともち丸達は笑顔になり返事をしてくれる。そんな光景を見た全員は首を傾げるのだった。
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まあ、こんな感じの会話があった為に俺達は今ダンジョンに入って直ぐのポータルから1.5km離れた場所から帰還用ポータルの場所を偵察していたわけである。
「…人数もそうだが、記者みたいな人がいるならこのポータルはだめだな。移動した方がいいぜ渉?」
そんな中で叶が双眼鏡を目から離して俺にそう言ってくる。
「だな…もち丸、次の場所は大体1時間弱で到着予定だが行けるな?」
俺がそう聞くともち丸は懐からお札を一枚取り出して笑顔になる。
「もちのロンですよ、このくらいへでもないですよ!
…と、いうわけで『変身』!」
そしてもち丸はそういうと自分のおでこにお札をあてる。するともち丸…いや、もち丸達全員がいきなり煙で姿が見えなくなってしまったのだった。
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