第185話

〜〜 しばらくして 〜〜



「あら、この紅茶…香りが薄いわ。やっぱりペットボトルの奴だと限界があるわね…ティーパックの方を飲みたいからお湯を沸かしてもらってもいいかしら?」


「いや、この状況でそれを言うかね?」


現在ミリアさんは椅子に座っていて、その周囲を俺達が囲むようにして包囲しながら無言の圧をかけまくっていた。

だが、当の本人は部屋に置いてあった市販品の紅茶(ペットボトルタイプ)を一口飲んでから香りが気に入らなかったらしく、お湯を要求する位に落ち着いている。

そんな彼女の言葉に俺がツッコミを入れると、ミリアさんはため息を一つはいてからまた渋々紅茶を飲みだした。


「…というかミリア、貴方がErrorスキルを持っている事をアタシは知らな…



「だってそんな事を聞かれていないから当たり前じゃない?」



…そうだった、ミリアは面白い事を優先するタイプの人間だった…」


どうやら一緒に暮らしている夏美ですら知らなかった事だったらしく、夏美はミリアさんにそこを聞こうとしたが…その言葉の途中でドヤ顔をしながらそう言い放つミリアさんを見てその場で頭に両手を当てながら下を向いて悩みだす夏美。

確かにミリアさんは今日までの付き合いで面白い事を優先するタイプの人であるのは理解してはいたが…まさか聞かれるまでこんなヤバいスキルを隠していたとは…


「それにさっきも言ったけど私のErrorスキルは別にそこまで強くないし発動する際のルールが多すぎて条件を満たせるのが渉が作ってくれたこのアタッシュケースみたいなヤツか釣りに使うのルアーを入れるプラスチックのケース位しかなかったもの。

しかも中に入れた物はスキルに対応している物を体に触れている状態にしないと自由に取り出せないし、入れられる物も片手に持てるものしか入らないし他にも色々制限などがあるから扱いづらいのよね」


紅茶を飲み終わったミリアさんは渋い顔そう言って飲み終わったペットボトルに蓋をした。

恐らくミリアさんのスキルは優香さんみたいな力が強くて所有者を苦しめるタイプのスキルじゃなく、俺みたいな発動するのに細かいルールがあるから使いずらいタイプなのだろう。コレは俺の予測だから詳しくは調べないと分からないがおそらく俺のスキルよりも細かくルールが設定されている代わりに運搬や収納に特化しているんだと思う。


「…あの、少し提案があるのだけど…言っていいかしら?」


「あ、ああ。別にいいけど…何?」


俺がそう考えているとミリアさんがある一点に視線を向けながら不意にそう言ってくる。そんな彼女の言葉に俺は少し驚きながら答えた。


「時間的にもう直ぐスタッフさんに呼ばれると思うの。だから詳しくは今夜に話す事でこの場は納得してもらえないかしら?」


そうミリアさんが言うと視線をつけていた場所に向かって指を指す。その場の全員がその方へ顔を向けると、そこにはデジタル時計があった。


「…確かに、問い詰めるには時間が足らないね…うん。確かにイベントに来ている人達を待たせるわけにはいけないし、何よりダンジョンに入る時間が遅くなればその分ダンジョン攻略が遅れてしまうね…渉、ボクはそうしたらいいと思う。キチンと夜に話を聞いた方が時間も取れるし何よりダンジョン内なら誰にも邪魔されないしさ」


そして、時間を見た桜が俺に向かってそう言ってくる。

確かに確認した時間では問い詰める時間がないのも事実だ、桜の案が1番最適解であると断言できる。


「ああ、確かにミリアさんと桜の言う通りだな…俺は賛成だ、ダンジョン内で聞く方が良さそうだ」


「ありがとう、渉…皆はそれでいいよね?」


俺はミリアさんと桜の案に賛成すると桜はお礼を言ってから今度は全員に質問をする、そして全員がその場で頷いて賛成の意を現したのを確認すると桜が一歩前にでた。


「なら決定だね。ミリアさん、この場は一旦お開きにするけど、今日の夜に必ず皆の前で包み隠さずに全てを話してね」


「ええ、約束するわ」


桜がそう言いながら手を差し出すとミリアさんはその手をとり立ち上がる。

しかし、未だ俺の心の中はモヤモヤが残っている。


「…すまない皆、トイレに行っていいか?」


「おう、なるべく早くこいよ?」


「了解」


全員がミリアさんと桜を見ている中で俺が皆に

そう聞くと叶が代わりに答えてくれた。

だから俺は急いで部屋からでてトイレに…ではなく、着替えをしていたローカーがある部屋に入った。

そしてアイテムポーチからスマホを取り出す。


「…ミリアさんはスキルの条件の件は嘘はつかないと思う、しかし俺ですらErrorスキルの事はまだ完全には把握しきれていない…」


そう言いながら俺はスマホのロックを解除して操作を始める。


「それにミリアさん自体が気づいていないスキルの条件などがあった場合はスキルが使えなくなる…それは間違いなく死亡案件だ…だから、俺並にスキルに詳しい『あの人』に連絡をして一緒に見てもらうのが1番なんだが…見てもらえるかな?」


俺はそう言うととある人物に電話をかけ始めた。


「…あ、もしもし。お久しぶり…いや、嬉しいのはわかってます…それで、実は…」


そして、俺は電話越しに会話を続ける。仲間の為に今できうる全ての最善を尽くす…それがリーダーって物だからな。

だが、絶対に後で何か要求されるだろコレ…



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