第183話

〜〜 東京タワー特設会場内 更衣室 〜〜



俺達に東京タワーを仕切る人から直接電話が来て連絡を受けてから渡辺さんに要件をぶん投げて三週間後、無事に俺達が入る瞬間をイベントにする事が決定した。

その為特設会場を作ったりと色々とあったらしいのだが…その点は割愛させてもらう。

んで、今はその会場の中にある俺達〈狩友〉専用として用意されていた更衣室にて今回の装備を付けていた。


「…てかよ、渉は何でダンジョン毎に毎回装備を変えるんだ?気に入った奴をそのまま使い続けるとかしないの?」


隣のロッカーで着替えつつそう言いながらカダム装備に刀2本を装備し終わってからそう聞いてくる。


「まあ、気に入った装備は確かにある。だが、俺の最終目的は狩りゲーを完成させる事だから、今のうちに沢山の武器や防具のデータが欲しいって理由があるからな。仕方がないのさ」


俺はそう言って今回の装備を装備しつつそう答えた。

俺の夢の最終目的は『一つの狩りゲーを作る事』だ。だから今のうちから様々な装備のデータを手に入れておくのはかなり重要だったりする。

俺はそう考えながら最後に歌舞伎座のダンジョンから手に入れた狐の口面を装備してロッカーを閉めた。


「うし、装備完了っと」


「…へえ、今回は和風テイストな感じか…いいじゃん」


ロッカーを閉めた為に俺の全身が見えたので、叶がそう言いながら褒めてくれる。


「ありがと、頑張って作った甲斐があるってもんだよ」


今回の装備は前に宝箱から狐の口面が出てきてから是非作って見たいと思いながら今回まで手を出さなかった装備である『Monster Hand Live』から『イナドラン装備』である。

この装備は『影狐 イナモ』と名付けられた黒と銀色が特徴の巨大な二股の巨大な狐のモンスターの腰装備と脚装備と頭装備、『砂漠蛙 サンドラン』と名付けられた砂漠に生息する悪食で有名な巨大な蛙の胴装備と腕装備で構成されているいわゆるキメラ装備ってやつだ。

服装的にはまず袴風のズボンに黒のブーツ、俺の8パックの腹筋がはっきり分かるくらいにピッタリと張り付いている灰色のインナーにロングコートのように長い丈が特徴のパーカーを羽織っていて、最後に狐の口面を付けているのだ。

本来イナモ装備一式はいかにも忍者っぽい装備であり、サンドラン装備一式もガスマスクみたいな仮面を付けた汚染区域に入るような装備になるのだが今回はそれを混ぜて装備している。

理由としてこの装備達はこうする事でゲーム内でかなりスキル面で優遇されているから人気があり、狐の口面も本来ならこんな牙を剥き出しにしているデザインではない普通の口面なのだが…ぶっちゃけるとそこまで変わらないし、寧ろ好戦的に見えてカッコよくなるから作ったのが理由だ。


「…あ、シンボルマークが入った腕章と武器を付け忘れてた。危ない危ない」


「いや、忘れるなよ。特に武器」


俺は装備のし忘れを思い出したので急いでまたロッカーを開けて装備をし直す。

そんな俺を見て叶が呆れた声を出したが俺は気にせず急いでロッカーから腕章と前に作った忍者刀型高周波ブレードの鈴虫を取り出して急いで装備し直す。


「…よし、今度こそ大丈夫。もう忘れ物はない」


「あれ、そう言えば機械鳥は?確か俺達の分も作ったとか言っていたよな?」


「…すまん、皆の前で言うつもりだったんだが、実はな…」


俺はそう言いながらロッカーの扉を閉めた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「なるほど、私達のドローンと機械鳥では稼働時のバッテリーの消費量と充電速度の差が大きく違うからダンジョンの攻略に支障が出る、だから現段階では普段使いせずに禁層の攻略の時だけ使うやり方が一番効率がいいと渉は判断したんだね?」


「本気に俺の実力不足のせいで迷惑をかけてすまん一二三。どう足掻いてもその辺は現段階ではどうしようもないんだよ…やはり新しいモンスターの素材とか知らない鉱石とか薬草やらを集めて腕を磨くしかないな…」


俺と叶は話し合ってからロッカーがある部屋から出て、〈狩友〉様控室と書かれた部屋に入った。そこにはすでに女性陣が全員着替えていて勢揃いしていたので、俺はさっき叶に話した内容を今度は女性陣に話した。

実は量産型の機械鳥は確かに夏美の手が加えられた為に稼働時間が伸びたし動きもスムーズになった。

しかし、現段階ではどう足掻いてもバッテリーが平均10時間しか保たない事が判明したのだ。配信用のドローンはメーカーによって若干の違いはあるものの、大体バッテリーは17時間は持つ、この7時間の差は余りにも大きいのだ。更に充電時間も配信用ドローンの方は大体5時間位でフル充電できるのに対して機械鳥はフル充電に8時間もかかる。

だから俺はダンジョンの攻略に支障が出ると判断した、故に俺は現段階では禁層を攻略する際のみに使うのが1番効率がいい使い方であると考えたのだ。


「…わかったよ渉。君がそう判断したなら僕は何も文句はない、でも君の技術力は本当にすごいから別に謝らなくても大丈夫だよ。その点は今後改良していけばいいんだしさ」


「…すまん、そう言ってもらえたら助かる」


桜が俺の言葉に優しい声でそう言ってくれたので俺は直ぐにお礼を言う。


「はいはい、渉。濡れたタオルと飲み物をどうぞ、コレでも飲んで落ち着いて」


「…ありがとう、ミリアさん」


そしてメイド服を着たミリアさんが俺に濡れたタオルとペットボトルのお茶をお盆に乗せて俺の前に持ってきてくれた…のだが…


「…一ついいか、なぜコレをチョイスした?」


「面白そうだったから」


俺はお盆の上にある二つを見てからミリアさんにジト目をしながら聞いたら、ミリアさんは少し震えながら楽しそうにそう答えた。

そしてまた、俺はお盆の上をみる。そこには濡れている俺が描かれたタオル(日本支部殲滅部隊正式武装を着てポーズをとっている姿)と俺がプリントされているラベルが付いているウーロン茶(渡り鳥の正装+人体総変異 タイプ《魂骨炎狐龍》の姿で忍者刀を構えている姿)

が置いてあった。

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